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日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2 第1回 アフターコロナのテレワークを考えるコラム

公開日:2023年7月6日

日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2

目次

新型コロナウィルス感染症が感染症法5類へ移行したことの影響

2023年5月8日より、新型コロナウィルス感染症は感染症法(※1)上の位置付けが5類になりました。テレワークの実施率は、これまで、緊急事態宣言の発令や感染者数の増減によって推移してきましたが、ここ最近は減少傾向にあることがうかがえます。【図表1】

一方、テレワークを継続したいという意向は86.9%【図表2】という結果も出ており、就業者の意識と実態との乖離が出てきています。単純に1日の通勤時間が往復2時間だとすると、週4日通うと1日分の労働時間に相当します。これに加えて満員電車のストレスがかかりますので、テレワークを継続したいという意向が高いことはもっともであるといえます。休暇に換算すると、年間40日のお休みが消滅するくらいのボリュームです。

【図表1】テレワーク実施率(全国平均)の推移

(出典)2022年8月30日発表:パーソル総合研究所「第七回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する調査」
テレワーク実施率(全国平均)の推移

【図表2】テレワークの継続意向等(テレワーカー)

国土交通省令和4年度 テレワーク人口実態調査
テレワークの継続意向等(テレワーカー)

テレワーク継続のメリット

そもそもテレワークは、「場所や時間にとらわれない働き方」です。自宅にいながら遠隔で農場を監視し、必要に応じて水や農薬の散布を行うことや、自宅近くのカーシェアを活用して、直接クライアント先や現場に赴き、会社を経由することなく業務を行うスタイルもテレワークといえます。

人材確保(株式会社イマクリエの事例)

【図表3】のように、日本全国に留まらず海外の人材も有効に活用して業績をあげている事例もあります。株式会社イマクリエ広報担当の小林朋子さん。アメリカ合衆国 サウスカロライナ州在住で、先日WEB会議を行いましたが、言われなければわからないくらい遜色のない動画や音声品質で、メールでの会議設定も含め大変スムーズでした。時差があるとはいえ翌営業日にはお返事をいただけますので、国内同様緊急対応以外は問題ないといえます。小林さんとしても、これまでの経験などを活かして仕事ができ、イマクリエ社としても場所や時間にとらわれないことで優秀な人材を確保しています。

【図表3】場所にとらわれない人材活用事例

場所にとらわれない人材活用事例

残業時間削減と業務効率化(八尾トーヨー住器株式会社の事例)

【図表4】八尾トーヨー住器株式会社では、現場から会社に戻って作業を行うことを廃止することで、残業時間の削減につながるのみでなく、業務の効率化にもつながったそうです。一般的にテレワークの導入が難しいと言われている建設業界での取り組みですが、元をたどると紙からの脱却という基本的な取り組みが起点となっています。デジタル化によりここでしかできない仕事がいつでもどこでもできる仕事に変わったのです。

金子社長いわく、組織の根幹は『人』。お客様が人である限り、組織の根幹は『人』にある。デジタル(テレワーク)は、あくまでもツールです。ツールを上手く活用し、できた時間で『人』を育成する。この観点から、お試しワーケーションやサテライトオフィスを設けたそうです。WEB会議の導入、サテライトオフィスの活用、現地への直行・直帰による移動時間の削減で残業が60%以上減少しました。これは、移動時間そのものだけでなく、移動の合間の隙間時間を有効に活用できることにも起因します。また、出産や介護などのライフイベントによる離職はゼロになったとのこと。介護離職者は年間10万人と言われていますし、筆者自身の経験としても病院の待ち時間に仕事ができるのは大きなメリットです。このような取り組みの中、新卒の新入社員の採用数も増えたそうですから、会社経営への影響は非常に大きい、といえます。

【図表4】建設業:大阪府 八尾トーヨー住器

建設業:大阪府 八尾トーヨー住器

「時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」について考える

さて、ここで、テレワークの定義について再考してみたいと思います。

以前までは、第1回コラムで書かせていただいた通り、自宅で行う在宅勤務、移動の合間や移動中に車や電車・飛行機の中などで行うモバイルワーク、サテライトオフィスで行うサテライトワーク、これにワーケーションが加わり定義が広まった、としていました。英語で書くと”You can work anywhere and anytime you want.“となります。しかし、この在宅勤務やモバイルワーク、サテライトワークという定義は現在の「時間や場所にとらわれない働き方」を網羅できているのでしょうか?自宅にいながら水や農薬の散布を行うことや、自宅近くのカーシェアの活用はどれに当てはまるのでしょうか?

視点を変えると、「時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」は、時間や場所にとらわれずに、「様々な場所で、様々な形で働いてもらう」ともいえます。

勤務者の視点:時間や場所からの解放による就労機会の拡大

八尾トーヨー住器株式会社の事例ではテレワークの活用によりライフイベントによる離職がゼロになったそうですが、出産・育児や介護などのライフイベントも、時間や場所から解放されることによって仕事をしながら乗り切ることができるといえます。より発展的に考えると、これまで場所や時間にとらわれることで働けなかった方も就業できるという期待が持てます。

第6回コラムにも記載していますが、これからは就業が変革していき、不得意なことを克服するのではなく得意なことをやる業務分担になっていきます。これを実現するにはまず、何をしてもらうかを形式知化することが必要です。「いつどこに何時間いた」だけでは仕事にならず、「いつまでに何をした」「何をしてどんな成果があがったか」が仕事になるのです。就業形態も、正社員や非正社員、被雇用者といった枠ではなく、本業があって副業があるのでもなく、自分が得意な複数の仕事(複業)をする時代になるといえます。

勤務管理者の視点:仕事に対してのアウトプットを求める

マネジャーはもちろん、雇用者、経営者サイドから考えると、時間や場所にとらわれない分アウトプットを求める形になります。何をしてもらえばよいか、いつまでにどんな成果を出してもらいたいか、です。自分の所掌の範囲の業務の全容が把握できていれば、何をしてもらうか、どのような成果で判断できるか、は明白です。これまでは非正規雇用の方に出勤して実施してもらっていた業務を遠く離れた業務委託先に依頼することも、そう高いハードルではありません。

一方、中小企業の経営者の方の中には、社内で行われている業務が解らない、部分的にブラックボックスになっているといった例もめずらしくありません。この場合、業務内容を洗い出すことから始める必要があります。

テレワークを導入する際のフローと同じです。1on1でヒアリングをするとともに、観察して業務内容を把握し、場所や時間にとらわれない仕事が何なのか、どの位あるのかを見極める必要があります。業務委託型で発注すると、発注先の選択肢が広がります。業務を遂行していただく方は、会社から1時間圏内である必要も毎日通勤する必要も、毎日朝の9時から夕方5時まで働いてもらう必要もありません。この方法で、離れたところに住んでいる優秀な人材を確保できたという例も増えています。働き方、見方を変えると働いてもらう方法の選択肢が広がっているのです。

少し話がそれますが、社内で行われている業務を把握することで業務の見直しもできます。慣習的にやってきたが実は不要な作業が発覚したという例もあります。全社的な業務の効率化につながりますので、テレワークに関わらずとも2~3年に1回は業務の見直しを実施していただければ幸いです。

まとめ

このような背景を踏まえ、日本テレワーク協会では、「真に時間と場所にとらわれない暮らしと仕事のスタイルが日本を変える」と題して、これからのテレワークの在り方を議論し始めました。

これまでの在宅勤務やモバイルワーク、サテライトワークといった呼び方は、働く場所にこだわっていました。時間にとらわれないという意味では、会議の場をチャットにしたことで、発言しやすくなったという事例も出ています。いつでも情報を確認し書き込みができ、ログが残るので議論を引用しやすいというのが理由のようです。

世界的にみると、日本の労働生産性はOECD加盟38カ国中23位(※2)日本の労働力人口の減少は、少子化の影響で止められないことは明らかです。その一方で、ジェンダーギャップ(※3)は146か国中116位、テレワークの利用状況も米国やドイツ、中国の半分以下【図表5】と、かなり伸びしろがあることがわかります。これからのテレワークはこのような伸びしろを活かして、もっともっといろいろな働き方ができるための一助となる必要があります。「真に時間と場所にとらわれない暮らしと仕事のスタイル」を目指して、これからの6回のコラムの中で、参考となる事例やテレワークに関連するツールや使い方をご紹介して参ります。

【図表5】テレワークの利用状況(国別)

テレワークの利用状況(国別)

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コラム一覧

日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2

日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.1

筆者紹介

一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長 村田瑞枝

村田 瑞枝(むらた みずえ)一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長

1991年日本電信電話株式会社入社。人事部人材開発室を経て、マルチメディアビジネス開発部に所属。以降、25年間WEB戦略策定及び実施サポート、システム構築、デジタルマーケティングなどインターネット関連業務に携わる。中小企業診断士。1級ファイナンシャルプランニング技能士。ファイナンシャルプランナー(CFP)、WEB解析士、ロングステイアドバイザー。2020年4月より現職。

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