日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2第6回 多様な働き方を実現するには?2024年度に向けてのメッセージコラム
公開日:2024年5月8日
目次
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海外事例に“も”学ぶ
- 日本と異なるところ
- 日本と同様なところ
2023年度の振り返り
2023年度は、5月8日に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、大きな変化のあった年となりました。地域のお祭りやイベントも4年ぶりの開催となったところも少なくなかったようです。
【図表1】の通り「テレワーク」は働き方の選択肢の一つとして、すっかり日常生活の一部になった方もいらっしゃれば、いったん定着したテレワークを廃止する動きもみられ、【図表2】の通り厚生労働省から「原則として使用者が一方的にテレワークを廃止し、出社させることはできません」といった内容を含む文書が出されました。テレワーク川柳2023の会長賞は、「テレワーク やめたわが社に さようなら (山宗雲水)」。テレワークを止めたら社員が辞めてしまったということも希ではなかったようです。
その一方で、コロナ禍においても出勤前提の働き方が継続されていた企業や組織において、やっと環境が整った、事業の拡大で職場が手狭になったのでテレワークで人手を増やした、残業時間を減らすために業務をデジタル化したことで可能になった等、様々な理由からテレワークを活用するようにシフトしたところもありました。
原点にたちかえってみると、テレワークは、「tele=離れた所」と「work=働く」を合わせた造語になりますので、自動運転の車を離れた所で監視することや、遠隔農業、遠隔医療なども含め、幅広く捉えることができます。遠隔農業については、第24回テレワーク推進賞の会長賞を受賞されたNTTアグリテクノロジーさんの例をぜひご覧ください。スマートグラスを装着し作物の生育状況を遠隔地にいる指導者と共有することで、的確なアドバイスが受けられます。これにより収穫のタイミングを逃すことなく、初心者が付加価値の高い作物を生産することができます。実際にこちらで生産されたトマトをいただきましたが、甘みと瑞々しさが絶妙なブランドトマトのように美味しかったです。
2023年度は、2020年度から感染症対策としてのテレワークではなく、多種多様な理由でテレワークを行うようになった変化の年ということができます。
変化によって生じたテレワーク「あるある」
ハイブリッドワーク、まだらテレワーク、フレキシブルワークなど、様々な名称や解釈がありますが、全員が出社でもなく全員がテレワークでもなく、日によって、時間によって出勤している方も、自宅の方も、旅先の方も同じ会議に参加できるようになりました。クライアントへの提案も、「お伺いします」と事前に申し上げないと、訪問したものの在宅勤務だった、ということもままあることです。出勤していてもWEB会議が多いため、社内の個室ブースが増やされたり、会議室の設備がWEB会議に適した形に変更されたりしています。
本コラムでも二極化現象や、テレワークを活用して人材を確保した事例をご紹介してきましたが、いずれにしてもテレワークで働き方の選択肢が増えたことは間違いありません。そのため、打ち合わせをする際、コロナ前は全員対面、コロナ中は全員オンライン、現在は一部は対面で一部はオンラインで参加、という形が多くなっています。「〇月〇日〇時から第〇会議室で打合せをします、オンラインの方はこちらhttp://******」という案内が必要で、会議設定はむしろひと手間増えた?と感じるところもありますが、往復の時間を考慮するとオンラインなら参加できる場合もあり、効率的なスケジューリングが可能になったといえます。もちろん、オンラインで参加しているメンバーと、会議室のメンバーの温度差について全く支障がないわけではありませんが、高画質カメラや感度の高いマイク等、ある程度はツールで解決できますので、ぜひ展示会等で体験していただければと思います。
海外事例にも学ぶ
2023年度に日本のGDPを追い越されてしまったドイツについては、テレワークを活用して人材を確保した事例でもご紹介させていただきました。一人当たりGDPが高い国を見てみると、【図表3】の通りヨーロッパの国々が多いことが解ります。こういった国々の働き方はどうなっているのかを知ろうと、セミナーを視聴し書籍を購入して調べ、【図表4】の通りまとめてみました。
日本と異なるところ
デジタル化
日本とは異なる点として、まず解ったことは、デジタル化が進んでいるという点です。民間企業のみでなく、行政も進んでいるので、北欧では「市役所や区役所に行くのは一生に1回」、「ポストを見るのは2か月に1回」という方も珍しくないようです。オンライン申請で移住したその日に日本でいうマイナンバーカード(のようなもの)まで揃ったという例も。そもそも、オンラインバンキングには1960年代から取り組まれていたようですので、一朝一夕に進んだというのではなく、数十年前から先を行かれていたようです。
仕事の面での女性の活躍
次に女性が仕事の面で活躍している点が明らかです。そのため、男性の育児休職率も高く、ノルウェーでは76%という驚異的な数字もでており、家事は夫婦で分担してやるもの、という意識が一般的なようです。また、休暇が長い点も大きく異なります。筆者は、富良野でワーケーション中にドミトリーで北欧のご一家と一緒になったことがありますが、日本に4週間滞在していると聞き驚いたものです。また、北欧では、季節の良い夏の間に長期休暇を取るそうで、7月はお店が開いていない、ということもままあるとのこと。旅行に行く際も注意が必要です。
仕事の進め方
仕事の進め方においては、信頼関係に基づき基本的にマネジメントをしない、失敗を許容しプロセスを評価する、上司にNOと言える等、組織がフラットだからこそできることが実践されており興味深いです。基本的に仕事の進め方としてはジョブ型が基本であり、業務内容が形式知化されていて、採用の段階からその仕事をするために入社するため、アンマッチも少ないといえます。
テレワークの活用は行政にも浸透しており、職場がフリーアドレスになっているものの出勤が少なく3割程度しか使われていないため、税金の無駄使いを指摘された例もあるとのこと。「市役所や区役所に行くのは一生に1回」ですから、日本のように数多くの窓口が設けられていないということは容易に想像できます。
日本と同様なところ
一方で日本と同様なところに目を向けると、若手のメンタルケアに留意する必要性や、仕事のしすぎを防ぐための対策、燃え尽き症候群なども発生しています。そのための対策の一つにもなる勤務時間の管理については、各国でクラウド型のサービスやアプリケーションが提供されており、中には国から提供され一定時間ごとに体操を促されるものもあるようです。本コラムでもテレワークサポーターをご紹介してきましたが、テレワークサポーターのように働く側が安心して勤務でき、管理者が現状をしっかり確認できるツールは、世界中で必要とされ活用されていることが解ります。
2024年度に向けてのメッセージ
2023年は、出生数が8年連続で減少し過去最少となりました。日本の人口は毎年一つの県が無くなっていっているくらいの勢いで減少しています。数十年後には人口減少で生活がままならなくなるという説もあります。また、これを回避するためには、第4回 多様な働き方の活用に記載しました通り、AIやRobotの活用が不可欠です。これからは、配膳ロボットが食事を運んでくれることに留まらず、デジタルヒューマンが自分に代わって仕事をしてくれる世界になっていかざるを得ないともいえます。
前述の通り、現在は、オンラインとリアルの混在(ハイブリッドワーク)があたりまえになっています。各自の都合と仕事の効率を考えて、いつどこで働くか決められる時代です。【図表5】のハイブリッドカーのように、ガソリンが得意な上り坂はガソリンで、下り坂は電気で、ガソリンが無くなったら電気で動けばよいのです。「状況に合わせて柔軟に対応することで、燃費というコストパフォーマンスを上げることができています。働き方も同様です。既存の働き方にこだわる必要はありません。
また、日本でも既に副業をしている人が4割に達しているというデータもありますから、いつどこで何をして収入を得るのか、原点から考えなおしてみると、何かすごく革新的なことに挑戦できるかもしれません。
一人一人がそれぞれの強みを活かして最も効率的な働き方を実現することにより、生産性も幸福度もまだまだ向上していく余地があります。自分の得意な仕事をすることが生産性に直結することは言うまでもありません。だからこそ、自分の得意を活かしてください。自分の好きなもの、興味のあるものが解りにくいといった場合は、苦手なものを排除して残ったもので考えてみても構いません。みんなが同じものが好き、同じことが得意、ということは無いですから、組織としての多様性を活かし、最適解を探す活動を継続していただく必要があります。北欧では、業務上のミッションが明確になっているが故にその仕事に向いているかどうかを真摯に問われるようです。自分自身はどこに向かっていくのか、ガソリンなのか電気なのか、そう遠くない将来に向かって大阪万博の空飛ぶクルマのような変革を起こすためにはどういった準備が必要なのか、この機会にちょっと立ち止まって、働き方を振り返るとともに、未来に向けてご自分の声を聞いてみてはいかがでしょうか。
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コラム一覧
日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2
日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.1
筆者紹介
村田 瑞枝(むらた みずえ) 一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長
1991年日本電信電話株式会社入社。人事部人材開発室を経て、マルチメディアビジネス開発部に所属。以降、25年間WEB戦略策定及び実施サポート、システム構築、デジタルマーケティングなどインターネット関連業務に携わる。中小企業診断士。1級ファイナンシャルプランニング技能士。ファイナンシャルプランナー(CFP)、WEB解析士、ロングステイアドバイザー。2020年4月より現職。
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