日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2 第5回 徹底的なコミュニケーションコラム
公開日:2024年3月19日
目次
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テレワークやコミュニケーションツールに関する年代ギャップ
- 年代によるテレワークに関する意識の相違
- 年代によるコミュニケーション手段の違い
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テレワークでの社内コミュニケーション
- 若手の声
- マネージャーの声
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コミュニケーションの工夫による活性化事例
- 株式会社エグゼクティブ
- 株式会社白山
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コミュニケーション次第で課題は解決できる
- 解決のポイント「見える化」
- 解決のポイント「評価・育成」
テレワークやコミュニケーションツールに関する年代ギャップ
年代によるテレワークに関する意識の相違
【図表1】テレワークの利用状況(日本・年代別)
当然ながらという結果ではありますが、テレワークに関する意識の相違は、【図表1】の通り、若い方ほど利用意向が高く、年を経るごとに「必要としていない」という回答が増加しています。この傾向は2020年の緊急事態宣言時から変わっていません。
新卒採用において、「テレワークができるところに就職したい」という傾向はもちろん、オンライン授業を併用して学んできた世代はオンラインのよいところやオフラインでなければならないところを体感しているといえます。2020年からオンライン授業が主流になったことを踏まえると、既に入社3年目という方もおいでで、4月には4期目が入社されます。
年代によるコミュニケーション手段の違い
【図表2】主なコミュニケーション手段の利用時間
総務省 令和5年度データ集から数字を抜粋し、筆者がグラフ化
コミュニケーションの手段についても年代ギャップは大きく、【図表2】の通り、若い世代はソーシャルメディアが中心で、年代が高くなるとメールが拮抗してきます。
平日と休日を比較すると、40代以上においては平日はメール活用が主流ですが、20代、30代は平日でもソーシャルメディアの利用が多く、社内SNSやチャット等を業務でも活用していることがわかります。その一方、50代、60代は休日の連絡もメール、友人と食事や旅行に行くのもメールで連絡、というのも珍しくないようです。
テレワークでの社内コミュニケーション
テレワークでのコミュニケーションの注意点については、テレワークで気を付ける事(コミュニケーション編)に記載していますので、ぜひご覧ください。
日本テレワーク協会では、新入社員向けの“テレワークでの働き方”研修やマネージャー向けの“テレワークでのマネジメント”といった研修を行っています。一方的にポイントをお伝えするのではなく、グループワークを取り入れ、意見交換をして発表していただくことも多くあります。
若手の声
研修の中で若手のみなさんからは、【図表3】のように、様々な意見が出てきます。チャットに慣れているが故に、学生の延長で書いてしまって、正しい敬語になっているかチェックするのに時間がかかってしまうというのは良く出るご意見です。また、マネージャーに声をかけるというのは、想定以上にハードルが高いようで、スケジューラーを見て空いている時間を狙って連絡したり、ある程度の時間をかけて準備してから声をかける、といった意見も少なくありません。
【図表3】若手の声
マネージャーの声
一方、マネージャーのみなさん向けの研修を行うと、「部下からであれば、いつでも電話してきてもらって構わない」という意見に終始します。会議中や手が離せない時はそもそも電話に出ないので、遠慮なくかけてほしいようです。
特に重要な案件や緊急な案件ほど電話で聞きたい、という意向が高く、気持ちは解らなくもありません。しかしながら、電話そのものが日常的に使われなくなってきているので、上司や先輩に電話するのはかなりの勇気がいるようです。筆者もプライベートで、「今から電話していい?」というLINEが来ることがままありますので、電話を架けるハードルはやはり高いと感じています。
このような状況を踏まえると、部下には社内であれば敬語などはそう気にせずに、なんでも連絡をしてくるように伝えていただくことが重要であるといえます。前述のコラムにも上司や先輩への連絡はすべて「迷ったらGO」と記載しています。伝えるかどうか迷うことはすべて報告、いつでも連絡、遠慮なく相談してもらうよう、伝え続けることが必要です。
また、マネージャーの方への研修で、コミュニケーションで工夫している点などをお聞きすると、【図表4】の通り模範解答よりも優れた答えをいただき、普段から様々なご苦労や気遣いをされていることが解ります。マネージャーも“人”ですので、あとは、ふとした瞬間や急いでいるときでも、心がけを忘れないようにしていただく、時々考える時間をもっていただくことが、継続の秘訣であるといえます。
【図表4】マネージャーのコミュニケーションの工夫実践例
コミュニケーションの工夫による活性化事例
株式会社エグゼクティブ
東京都にある株式会社エグゼクティブ(※1)は営業アウトソーシングを行っている会社です。2013年から準備を進め、2020年より永続的な完全テレワークを実施しました。
会社にあったパソコンや机をすべて処分し、コミュニケーションのためのスペースにレイアウトを変更することで、自宅を仕事の場所、会社はコミュニケーションの場所と定義されました。“見えない、聞こえない、チームで動きにくい”という状態が前提となっていますので、見える化することを念頭に様々な工夫を行っています。
その一つとしてチャットツール内に全社のリソースを集約し、昼間1回、全員でコミュニケーションをとるようにしているそうです。毎朝の「おはようチャンネル」では、社長が会社の歴史やクイズなどを動画で発信し、社員との相互コミュニケーションを創出。オープンな場での質疑応答が促進でき、早期課題解決やナレッジの蓄積につなげられたとのことです。
これらの工夫により、現在は社員の約50%が東京都以外に在住しており、生産性の指標となる職能ランクが63%の社員において向上、コストは2020年と比較し74%削減、売り上げが3年前の2憶4千万円から2憶9千万円にアップし、過去最高売り上げ、最高利益を達成したとのこと。社長のお人柄はもちろんですが、毎朝コミュニケーションの機会を継続して創出されているところに頭が下がります。
株式会社白山
石川県にある株式会社白山(※2)の米川社長は【図表5】の通り、「必死のコミュニケーション」という言葉を使って、「社内であっても必死のコミュニケーション(時間、エネルギー)なしに信頼関係は築けない」「コミュニケーションのコツは全力で聴くこと。その時の相手の気持ちになり切ること」と言われています。
また、テレワークの実施にあたっては、以前の2倍のコミュニケーション量を心掛けたそうです。株式会社白山は製造業ですので、すべての部署でテレワークが日常的にできるわけではありません。生産システムを動かしたり品質を確認する部門でのテレワーク実施率は6%~20%にとどまっています。
一方、そういった部門でもデジタル化は進んでおり、生産システムの稼働状況を遠隔から見られるようになっており、どこにいても稼働状況を確認でききるようになっています【図表6】。
離れたところ(tele)で仕事をする(work)テレワークという意味で、これもテレワークの一つであるといえます。特に製造業の方は、ものづくり補助金 成果事例 ~石川県の取り組み自慢~|石川県中小企業団体中央会 (icnet.or.jp)に同社の情報がまとまった動画がありますので、ぜひご覧いただき、参考になさってください。
【図表5】株式会社白山 米川社長のポリシー
【図表6】株式会社白山 IoTによる“設備稼働の遠隔見える化”
コミュニケーション次第で課題は解決できる
解決のポイント「見える化」
先進的な2社の事例で共通することは、「見える化」しているところ、といえます。業務の状態が見えないで、言葉だけで補おうとすると、リアルと比較して無理があるのは明らかです。
株式会社エグゼクティブでは、“おでこ出社”というのを行っており、仕事を始めたらおでこから上だけを表示してWEB会議システムに接続します。また、仕事の課題や進捗をチャットツールに書き込み、ノウハウや知見を共有することにも取り組んでいます。
株式会社白山は「設備稼働の遠隔見える化」によって、自社のラインの状態をリアルタイムに把握することができるようになっています。現場にいてもすべてのラインで何が起こっているのかを把握するのは至難の業ですが、こちらを使えばどこがボトルネックになっているのか一目瞭然です。
テレワークでは、「見えない、聞こえない、触れない、匂わない」ことが前提ですから、何かでそれを補う必要があります。両社はツールやしくみを上手く使って、その点を克服し、それだけに留まらずに改善につなげた例といえます。
ツールを活用しよう
テレワークをするにあたって、ただ、コミュニケーションをとろうと努力するよりも、まずはテレワークサポーターなどのツールを活用して、業務の状態を見える化しておくと、より円滑にコミュニケーションをとることができます。見てくれている、見てもらっている、という安心感はもちろん、どのくらい残業が発生しているのかなど数字で把握できます。
「コミュニケーションのコツは全力で聴くこと(米川社長談)」ですが、話を聴くのみでなく今の現状を数字で把握しておくことで、より迅速に適確に課題を解決することにつながります。育成や評価にもつなげやすいので、お試しからでも、是非活用してみてください。
解決のポイント「評価・育成」
今回ご紹介した両社の共通点は、評価・育成といった側面にも見られます。
株式会社エグゼクティブでは、1on1で、引退後を含む理想的な将来像に対して自分はどうありたいかを社長と一緒に考えるそうです。10年後になりたい自分から逆算して、今の自分に何が足りないかを考え、そのギャップを埋めるために何をどこまでするか、目の前の仕事に落としていくと伺いました。必ずしも10年後に同社に在籍していなくてもいい、一人一人の未来に向かって仕事をしてもらえれば、とのことで、その考え方にまず脱帽です。
米川社長は、「社内にぼくの他にも社長と副社長がいる」と自慢げです。兼業・副業を解禁したところ、2人の社員が共同で起業して、システム設計や中古パソコンやエレキギターの修理販売を手掛ける会社を設立したのです。「社員に社長がいるなんて、すごいだろう!」と嬉しそうにおっしゃっていました。社長がこんなに喜んでくれるなら、社員は本業も副業もがんばろうと思うに違いないと確信した次第です。徹底的なコミュニケーションは、しっかり、間違いなく、業績にもつながるということが確認できます。
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コラム一覧
日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2
日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.1
筆者紹介
村田 瑞枝(むらた みずえ)一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長
1991年日本電信電話株式会社入社。人事部人材開発室を経て、マルチメディアビジネス開発部に所属。以降、25年間WEB戦略策定及び実施サポート、システム構築、デジタルマーケティングなどインターネット関連業務に携わる。中小企業診断士。1級ファイナンシャルプランニング技能士。ファイナンシャルプランナー(CFP)、WEB解析士、ロングステイアドバイザー。2020年4月より現職。
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