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第2回 ワーケーションの効果とは?企業の導入事例や自治体の取組み、導入のポイントをご紹介[2023.9.29]
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コラム|日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2
第2回 ワーケーションの効果とは?企業の導入事例や自治体の取組み、導入のポイントをご紹介[2023.9.29]

日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2

ワーケーションとは

ワーケーションとは、workとvacationを組みあせた言葉であることは、もはやご説明するまでもないと思います。ワーケーションは世界中で使われている言葉で、WorkationともWorkcationとも記載されるようです。Yahoo.comで検索すると5万件以上の記事があり、ワーケーションを実施するとよりクリエイティブな仕事ができるようになった、退職意向が減少した、仕事の満足度が高まったなどと書かれています。

日本では、2020年7月27日に当時の菅官房長官が“観光や働き方の新たな形として休暇を楽しみながらテレワークで働く「ワーケーション」の普及に取り組む”と発表。弊協会に「ワーケーションって何?」という問い合わせが寄せられました。2019年にワーケーション自治体協議会も発足していましたが、まだメジャーとはいえず、コロナ禍の中での「ワーケーション」はインパクトのあるものだったようです。
日本テレワーク協会では、2019年から「ワーク・エイション」という呼び方をしており、【図表1】の通りworkとvacationのみでなく、workとeducation、innovation、communication、collaborationなど「様々な可能性のある働き方」として定義しています。
2021年度になると、内閣府が「働き方を変えると、生き方が変わる。地方創生テレワーク」を推奨し、地方で仕事をしながら休暇も楽しむワーケーションが定着していきました。各地でWi-Fiを完備したコワーキングスペースが作られ、ワーケーション誘致のための様々な補助なども準備されています。

昨今はラーケーションといって、子供さんは勉強をして親御さんは仕事をする過ごし方も出てきているようです。愛知県では10月から「ラーケーションの日」というのを設け、愛知県全体のワーク・ライフ・バランスの充実を目指すことが発表されています。(※1)愛知県のラーケーションは保護者の休暇に合わせて、平日に郊外での自主学習ができますので、仕事のみでなく学習も場所や時間にとらわれずに実施できることになります。このような取り組みが、ゴールデンウィークやお盆・年末年始の渋滞緩和にも繋がるくらい普及していくことに期待します。
また、今年3月にはテレワーク・ワーケーション官民推進協議会が設置され、政府主導でテレワーク・ワーケーションの一層の普及・定着が推進されています。これからますますワーケーションを活用する時代になっていくといえます。

【図表1】ワーケーションとは

もともとは、Work+Vacation。弊協会では、ワーク・エイション(Work+education、innovation、communication、collaboration「様々な可能性のある働き方」)。今では、単なる働き方の一つ。

企業のワーケーション活用

ワーケーションには時間や場所にとらわれない働き方の一つとして、個人が行き先を選んで出かけ業務を行う場合と、企業が研修の一環などで場所や日時を指定して実施する場合があります。

前者は、勤務先の了承が必要な場合もありますが、自分の行きたいところやイベント、旅行などの都合に合わせて場所を選ぶことができます。弊協会が4月に実施したアンケートでは【図表2】の通り、ワーケーションへの関心は高く、社員のモチベーションアップを図りたいという意図が伺えます。テレワーク同様、場所や時間にとらわれない働き方を実現することでモチベーションがアップし、効率が上がることに疑いはありません。「効率を1ミリも落とさずに、いかにワーケーションを楽しむか」をモットーとして日本中を旅している方や、「夏は北海道、冬は沖縄」と季節に合わせて夫婦で移動しながら業務にあたっている方もいます。

【図表2】ワーケーションへの関心(日本テレワーク協会 2023年4月調査)

事業所での関心とワーケーションの導入目的

後者の例としては、北海道で若手社員研修を実施したり、千葉で新入社員研修をしたり、定例でワーケーション合宿を行う例があげられます。【図表3】は、弊協会のワーケーション合宿の様子です。日頃の業務では緊急なことは取り組んでいても重要であっても緊急ではないことに取り組むことが難しいため、組織の方向性を決めるような重要なテーマについての合宿を年に2回実施しています。一定の時間を確保して、顔を見てディスカッションをする“集まる意味”があるからです。

なぜ経営者がワーケーションをすすめるのか、についてはワーケーションが就業者にとって良い効果があることに他なりません。2020年7月には、ワーケーションは従業員の生産性と心身の健康の向上に寄与する|プレスリリース|JAL企業サイト別ウィンドウで開きますが発表されており、心身ともに健康になり、仕事のパフォーマンスも上がることが定量的に示されています。テレワークの取り組み同様、ワーケーションに取り組んで業績が落ちたという事例は出ていませんし、企業規模に関わらず、経営者自らがワーケーションを実体験して効果を確認し企業全体に取り込んだ例も少なくありません。

【図表3】弊協会のワーケーションの様子

みんなで合宿、沖縄でブレジャー(遊ぶ)、沖縄でブレジャー(仕事する)、秋田でブレジャー(遊ぶ)

しのぎを削る自治体の動き

前述した2021年からの地方創生テレワーク促進の効果は大きく、現在はワーケーションをトリガーに関係人口構築から移住に繋げるための施策を全国各地の自治体が展開しています。ワーケーションへ助成をしている地域は数え切れず、情報をまとめたサイトもできていますので、“ワーケーション 補助”等で検索してみてください。

例えば、昨年度弊協会のテレワーク推進賞を受賞した富良野市では、2021年度から4泊以上の滞在について宿泊費を助成しています。例えば今年11月に一人で5泊する場合、宿泊費の2分の1を上限として最大25,000円が支給されます。レンタカー代金も1日2,500円が支給されます。雪道に慣れている方でしたらこれからの季節でもセットでご活用いただけます(※2)
同じく昨年度の受賞自治体である糸魚川市では、交通費を1世帯上限2万円まで補助する親子ワーケーションや、実際に糸魚川市が経験した大火や雪崩、噴火などの経験を踏まえた防災ワーケーションのプログラムを展開しています。親子ワーケーションに参加すると、お子さんは市内の小学校で授業を受けることができ、その間親御さんはリモートワークができます。さらに年3回、1学期・2学期・3学期ごとに一週間ずつ同じ小学校に通えますので、お子さんは一度会ってそれきりではなく、またお友達に会うことができるのです。(※3)

これらに限らず、自治体の助成や補助はいずれも、予算の上限や受け入れの条件があるため、事前にホームページ等でしっかり確認することをお勧めします。

とにかく、ワーケーションに行ってみよう

個人で行う場合

個人で行うワーケーションの場合は、行きたいところややりたいことを起点に探すことになります。ラーケーションや親子ワーケーションのように、親よりも子供さんのために実施、というケースも増えています。北海道厚沢部町のように保育園留学のために人が集まっている地域もあります。何を実現するために、いつ、誰とどこに行き、どのようにすごすかが重要です。また、弊協会のアンケートでは、【図表4】の通り、ワーケーションは1週間以上の期間で行いたいという結果も出ています。交通費、宿泊費、その他の滞在費を計算して、助成や補助で賄えるものは是非ご活用ください。

【図表4】ワーケーションの期間(日本テレワーク協会 2023年4月調査)

1週間以上の滞在できる環境が求められる

また、予定しているイベントへの参加や出張の前後にワーケーションを行うのもお勧めです。出張の前後でしたらBusinessとLeisureを合わせて“ブレジャー”といいます。昨今は交通機関がかなり混雑してきていますし、金曜日の夕方の新幹線よりも一日おいて土曜日の夕方や日曜日の日中の方が空いています。特に飛行機は値段が安くなるケースも多くみられます。弾丸出張や弾丸ツアーでなく、出張を延泊して休暇とつなげて遊んだり、ゆったり滞在して、そのまま現地でテレワークを行うこともお勧めです。

企業や組織の単位で行う場合

企業や組織の単位でワーケーションを行う場合は、そこで何をするかを計画して準備するのはもちろんですが、ワーケーション自体の準備が必要です。いわゆる“幹事“が重要です。まとまった人数で行くため、旅費、到着までの時間、宿泊費、会議室やコワーキングスペースの利用料などを比較検討する必要があります。
持っていくものは、パソコンはもちろんですが、筆記用具やプロジェクター、スクリーンも事前にチェックが必要となります。弊協会の合宿の際は、付箋紙を持っていくのを失念し、急遽現地で購入しました。プロジェクターやスクリーンは現地で借りると高額な場合もありますので要注意です。
ディスカッションの内容が漏れないか、専用の会議室があるか、WEB会議がつなげるか、といった点もチェックポイントです。合宿中に外せないWEB会議が入ったので、1時間だけ抜けてWEB会議をしたいといった要望もままありますので、個別のWEB会議ができるかどうかも予め確認しておきましょう。
また、ワーケーション制度の導入を検討している企業経営者(代表取締役社長等)もしくは、役職が執行役員以上の方のみを対象とした、これまでにないプログラムも出てきました。企業経営者だけが集まるワーケーション、どのような体験をされ、どのように成果がでるか楽しみです。(※4)

導入する際の課題解決のポイント

もちろん、労務管理上の問題やセキュリティを懸念して、ワーケーションに積極的でない企業や管理職の方もおられます。弊協会が2023年4月に実施したアンケートで、ワーケーションを導入する際の課題は【図表5】の通りでした。個人でも企業・組織単位でも、交通費などのコスト負担の軽減には前述の助成や補助をできる限り活用してみて下さい。ワーケーション先での状況把握については通常のテレワーク同様、ツールの活用やコミュニケーションをとっていただくことで回避しましょう。
例えば、テレワークサポーターを導入していれば、円滑な労務管理はもちろん、コワーキングスペースでの覗き込みも防止でき安心です。社員間の不平等性については、ワーケーションに限らず、テレワークの全般的な課題です。実際にお話を伺うと、業種や職種によって不平等であるという事実よりも、不平等感が課題になっているケースが多くみられます。不平等感は1on1などのコミュニケーションをしっかりとり、経営サイドが傾聴することで解決した例が多くみられますので、不平等感を減らすための取り組みをお願いします。中長期的には、人材の適材適所の配置を目指し、役割分担や業務内容の変更も含めて試行錯誤を繰り返すことが肝要です。

【図表5】ワーケーション導入検討への課題(日本テレワーク協会 2023年4月調査)

交通費などのコスト負担、社員間の平等性、ワーケーション先の情報把握、その他

いずれにしても、ワーケーションを実際に体験された方からは、否定的なコメントをいただいたことはありません。特にテレワークの環境が整っていれば、就業場所が自宅からコワーキングスペースや宿泊先になるだけといえます。案ずるより産むが易し、まずは一度、やってみましょう。きっとワーケーションの楽しさを見つけていただけると思います。

筆者紹介

一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長 村田瑞枝

村田 瑞枝(むらた みずえ)

一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長

1991年日本電信電話株式会社入社。人事部人材開発室を経て、マルチメディアビジネス開発部に所属。以降、25年間WEB戦略策定及び実施サポート、システム構築、デジタルマーケティングなどインターネット関連業務に携わる。中小企業診断士。1級ファイナンシャルプランニング技能士。ファイナンシャルプランナー(CFP)、WEB解析士、ロングステイアドバイザー。2020年4月より現職。

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