コラム｜初級編（発注業務編） 最終話　必要な財庫、不要な罪庫
～なくせない誤差をどう業務に組み込んでいくか～［2021.09.16］

「お疲れ様でーす」

「おー、おつかれー…そうだ、いろはさん、いつまでバイトに来れるんだっけー？」

「えーっと、今月末までです。そろそろ受験勉強頑張らないとー」

「そっかー…いろいろ助けてもらってるから、いなくなると正直きついけど、進路は大事やからねー…頑張りやー！」

「はい！…あ、店長、そういえば最近バックヤードがビールでいっぱいですけど…どうしたんですか？」

「あー、ほら、もうすっかり暑くなってきたし、ビールが売れる時期やからいつもより多めに発注しといてん」

「へー…今年はいつもより売れそうなんですかー？」

「そういうわけやないけど、お酒やからすぐに賞味期限がきれることもないし、いつかは売れるから廃棄にもならんし。売り損なっちゃう心配も、発注の手間も減るから、一石二鳥ちゃう？」

「…そうですかー…あ、もうこんな時間だ！そろそろ失礼しますねー」

「おー！気を付けて帰りやー」

「店長…なんかまたバックヤードの商品増えてませんか…？商品が山積みで、崩れたりしたら危ないんじゃ…」

「そやねん…新商品の清涼飲料水が予想以上に売れてるから、あわてて発注したんやけど、ビールがあることすっかり忘れてて…とりあえず場所がないから積んだけど、確かに危ないからすぐになんとかするわー…しかし、やっぱり新商品の販売数を予測するのは難しいよなー…」

「確かにそうですねー。似た商品があれば、ある程度予測することはできるかもしれませんけど、今回の新商品はあまり似た感じの商品がないですからねー。だから予測に頼って発注するのには、限界があるのかもしれませんね…」

「ん？どういうこと？」

「えっと、つまり新商品とか予測が難しい商品は、予測が外れることを想定して品切れしないよう多めに発注しておいて、逆にいつも通り売れるビールとかは予測が当たりやすいから、余分に発注しなければいいんじゃないですかねー？わかんないですけど」

「…なるほど」

「新商品を品切れさせなければ売り損なうこともないですし、人気の新商品が買えたらお客さんもうれしいですよねー。それに余分な在庫が減ればバックヤードも広くなって安全だし、新しいビールが飲めたほうがお客さんもハッピーじゃないですかねー。まさに、一石四鳥？（笑）」

「うっ…確かにそうかも…発注の手間を考えて、サボろうとしてごめんなさい…以後気を付けます…」

「いろはさんも、今日でバイトおわりかー…進路希望は決まってるん？」

「はい。ただ、地元には希望する学科のある大学がないので、今の家を出て下宿することになると思いますー。だから、アルバイトはするつもりですけど、このスーパーでは働けないですねー」

「そっかー…それは残念だ…まー、こっちに戻ってきたらまた顔出してやー！」

「はい！わかんないですけど！」

「いや、そこはわかっとこうよ…（汗）」

「では、またー！」