初級編(番外編) 需給 × 家族 ~需給を身近な例で考えてみよう!~コラム
公開日:2023年2月28日
在庫削減や適正化など、多くの企業にとって重要な経営課題である需要予測・需給計画。
需給計画においては、コツやポイントを知らないままでいると、余計な作業負担や在庫過多といった問題に直面してしまいます。
そこで本コラムでは、はじめて需給担当者になった方やこれから需給について学びたい方向けに、需要予測・需給計画の基本を分かりやすく解説します。
番外編では、より身近な日常を舞台に、発注や需給に関するポイントを考えます。
需給 × 家族
ミッション1:激安商品に惑わされるな!
―とある週末、最近お気に入りのディスカウントショップから帰ってきた、いろはさんと家族の会話
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いろは「はー、今日もたくさん買ったねー!これだけ買うと、なんだかスカッとするよね!」
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いろはパパ「気持ちは分からなくもないけど・・・しかし、いくら安いといっても、毎回毎回、買いすぎやろ・・・」
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いろはママ「だって、これだけ入ってたったの980円よ!多いと分かってるけど、なんだかテンション上がってきちゃって、ついつい買っちゃうんだよねー・・・ね?いろは」
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いろは「そうそう、大量に入ってしかも安い!・・・でも、なんでこんなに安いんだろうねー?」
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いろはママ「それは・・・きっと関西だからよ!」
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いろはパパ「またそんな適当なこと言って・・・そんなわけないやん・・・それは、大量に仕入れることによって、仕入原価を安くできてるから、その分安く販売できるってことやろ?」
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いろは「あ、そういえば前に仕事で、工場長が同じようなことを言ってた気がする・・・なるべくまとめて調達したほうが原料が安くなるから、その分販売価格も下げれるとかなんとか・・・」
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いろはママ「そうなの?てっきり関西だからだと思ってたわー・・・じゃー今度から全部あのお店で買おっか!あ、でもそうすると、いろはちゃんが昔アルバイトに行ってた近所のスーパー、潰れちゃうかもねー」
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いろは「うーん、そうはならないんじゃないかなー?会社でも同じようなことを工場長に言ったら、大量に買えるモノとそうじゃないモノがあるって言われたから・・・たしか保管場所の確保が難しいとか、使用期限がどうとか・・・だから、やっぱりその都度スーパーで買わないといけないモノもあるんじゃない?」
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いろはパパ「そうやなー・・・牛乳とか卵とかは冷蔵庫に入れる必要があるから容量にも限界があるし、そもそも一度にそんなにたくさん買っても、なかなか賞味期限内に使いきれんしなー・・・」
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いろは「だよねー・・・あれ?ママ、このお菓子お兄ちゃんしか食べないのにまた買ったの??」
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いろはママ「あらヤダ・・・あの子がいなくなってもうだいぶ経つのに・・・またやっちゃったわ・・・駄目ね・・・なかなか慣れなくて・・・」
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いろはパパ「・・・」
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いろは「・・・ママ、お兄ちゃんはまだ生きてるよ?ただの海外赴任だよ?」
スーパーおおしたは、なんとか潰れずに済みそうですね。今は、倉庫をそのまま店舗として利用することで各店舗に商品を運ぶコストをカットしたり、大ロットの箱のまま販売することで小分けにする手間をカットして、その分安く販売するようなスーパーがたくさんありますよね。
また、そういったお店では周りの客が大量に買っているのを見ると、自分もついつい購買意欲が高まるという、いわゆるバンドワゴン効果(※1)もあるようです。
筆者の家でも、牛乳の調達は悩みの種です。毎週定期便で配送してもらっていますが、子供たちの消費はそれ以上ですぐ欠品してしまいます。その分多く定期便で頼めれば良いのですが、それだと冷蔵庫に入りきらないし、入ったとしても鮮度が落ちておなかを壊しても困ります。
週の途中に近くのスーパーに追加で買いに行くのが私の週課です。
あと何本買わないといけないのか?在庫を見ながら需要を予測して必要数を計算する必要がありますが、もう慣れたものですよ。
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※1
バンドワゴン効果・・・「人がもっているものを欲しくなる」「多くの人が支持している商品に価値を感じる」という心理現象で、ある選択肢を多数が選択している現象が、その選択肢を選択する者を更に増大させる効果
ミッション2:麦茶を切らすな!
―暑い時期、いろは家にて
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いろは「(冷蔵庫をあけて)あれ?ママ、また麦茶がなくなってるよー」
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いろはママ「あらヤダ、切らさないように気を付けてるんだけど・・・暑いとすぐなくなっちゃうのよねー・・・すぐ沸かすわ」
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いろは「(あれ?なんか同じような話を最近会社でしたような・・・たしか・・・)そうだ、ママ、今は麦茶のビンが1本だけだけど、もう1本増やしてみたら?」
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いろはママ「え?1本増やしても、一度に2本分沸かさないといけないから面倒なだけでしょ?なにも変わらないんじゃない?大丈夫?いろはちゃん・・・」
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いろは「そうじゃなくって・・・えっと、まず2本分お茶を沸かして、それをそれぞれA、Bとするじゃない?でね、まずAから飲んでいきます」
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いろはママ「うんうん、それで?」
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いろは「で、Aが無くなったら、次からはビン1本分沸かしてAに入れます。このAのお茶が冷えるまでの間、Bの麦茶を飲みます。そうすれば、Bのお茶が無くなるまでにAのお茶が冷えて、いつでも冷えたお茶が飲めるって訳!」
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いろはママ「ちょっといろはちゃん!天才じゃない!?ぜひご両親の顔を見てみたいわ!」
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いろは「・・・パパ、ママが一緒に鏡見たいってー」
いろはさんが言ってたやり方は、ダブルビン方式と呼ばれるやり方で、比較的簡単に補充することができる仕組みの一つです。昔からあるやり方ですが、いろはさんの会社同様、いまでもよく利用されている発注方式です(詳細は『発注業務編 第1話』参照)。
ちなみに、筆者の家の麦茶もこの方式で管理していますが、子供たちがルールを守らず、ABどちらも飲み始めるので欠品が絶えません。
父親の私が注意しても効果がありませんでしたが、母親が注意するとルールが守られ、安定供給されるようになりました。
仕組みがいくら良くても、管理者に権限がないと現場が統率されないのは、仕事も家庭も同じですね。
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筆者紹介
- 大下 吾朗(おおした ごろう)
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R&D本部 数理技術部 シニアコンサルティングスペシャリスト
米国PMI認定プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル。
需要予測・需給計画ソリューション FOREMAST(フォーマスト)の開発およびシステム導入プロジェクトに従事。
主に在庫補充量計算に関する機能設計・開発を担当。
関連書籍など
在庫管理のための需要予測入門
FOREMAST担当コンサルタントが執筆した需要予測入門書です。
どのような需要予測システムを導入すればよいかお悩みの方のために、実務に精通したコンサルタントが基本知識からシステム導入時に考慮すべきポイントまでをやさしく解説しています。
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