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~生産計画立案時の落とし穴~[2022.05.12]
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コラム|初級編(需給業務編) 第4話 計画を超えて
~生産計画立案時の落とし穴~[2022.05.12]

需要予測・需給計画ソリューション「FOREMAST」連載コラム それゆけ!いろは(受給業務編)

在庫削減や適正化など、多くの企業にとって重要な経営課題である需要予測・需給計画。
需給計画においては、コツやポイントを知らないままでいると、余計な作業負担や在庫過多といった問題に直面してしまいます。

そこで本コラムでは、はじめて需給担当者になった方やこれから需給について学びたい方向けに、需要予測・需給計画の基本を分かりやすく解説します。
今回は需給業務をテーマに、直面しやすい課題と抑えておきたいポイントを見ていきましょう。

計画を超えて

前回は、効率よく生産しようとするほど、意図せず増えていく在庫についてお話させていただきました。効率よく生産することは大事ですが、実はそれが在庫の適正化を邪魔していた、というお話でしたね。理解していれば大丈夫だと思いますが、そうでなければ『え?なぜ?』と思うかもしれません。
今回は、計画通り生産しているのに生産できなくなるという、また別の『え?なぜ?』と思うかもしれないお話をしたいと思います。
ではいつも通り、いろはさんと工場長にお話の進行をお願いしましょう。

生産計画の立案期間

今日は月初に行われる生販会議の日。SCM部門、生産部門、営業部門で実施するこの会議もだんだん定着化してきて、少しずつですが効果も出てきているようです。
今日は売上が好調な商品の増産について検討しているようですね。

工場長といろは

いろは

「・・・というわけで、ここ数ヶ月売上が好調だったこの商品については、今後もしばらく売上が伸びていく傾向があると考えています。これまでも少し多めに生産してきましたが、今後のことも考えると今月はいつもより増産すべきだと思います・・・工場長、どうでしょうか?」

工場長

「そうやなー・・・これだけ売上が伸びてきてるんやったら、これまでみたいにちょっと増産するんやなくて、思い切って増産したほうがええなー・・・その方が生産効率も上がるしな」

いろは

「そうですね、これだけ売上が安定して伸びてきているなら、在庫日数が増えたとしてもすぐ解消されるから問題なさそうですね・・・では、今月は思い切って増産するということでよろしくお願いしますね!」

工場長

「おー、今月は工場の負荷もそれほど高くないし、まー大丈夫やろーから任しときー」

さすが工場長、工場の負荷まで考えて答えてますね。でも、本当にそれだけでよかったのでしょうか?そして半月後・・・。

工場長

「・・・いろはさん、ちょっと相談があるやけど、今ええかな?」

いろは

「あれ?工場長から相談なんて、珍しいですね、どうしたんですか?」

工場長

「お、おぅ・・・ほら、月初の生販会議で、あの商品増産するって決めたやん?あれな、全部生産できんかもしれんくてな・・」

いろは

「え?ちゃんと生産計画立てて生産してるのに・・・計画通り生産できないってどういうことですか?」

工場長

「資材が足りんねん・・・」

いろは

「資材?資材って、原材料や包装材ですよね?在庫もあるはずだし、足りなければサプライヤさんに発注すればいいんじゃ・・・」

工場長

「普通はそうやねんけどな・・・ほら、ここ最近ちょっとずつ増産してたやろ?その関係で余ってた在庫は使ってたみたいでな・・・で、急遽サプライヤさんの方に発注したんやけど、急に無理やって回答きてなー・・・せめて1ヶ月前に言ってくれって」

いろは

「えー・・・じゃあ、どうするんですか?」

工場長

「おー・・・そこで相談なんやけど、とりあえず欠品しないくらいは生産できるから、そこまでで勘弁してもらえへんかなー?ま、次からあんじょうやるわー」

いろは

「まー、そういうことであれば仕方ないですよね・・・ではそうしましょう・・・でも、なぜこんなことになったんですかねー?」

工場長

「そうやなー・・・今月の生産計画を超えて計画する必要があるんちゃうかな・・・」

いろは

「計画を超えて、ですか?どういうことですか?」

工場長

「つまりやな、今は当月の生産計画しか立ててへんやろ?せやけど、先月の時点で今月増産するって決めてたら、サプライヤさんには1ヵ月前に発注できてたから間に合ったんちゃうかな?」

いろは

「!・・・なるほど、生産するための計画としてその当月分だけあればいいと思っていましたが、資材の調達まで考えたら、今の計画期間を超えて、もうちょっと先まで必要ということですね・・・あっ!生産計画が先々まで必要になるってことは、販売計画はもっと先まで必要になりますね!?」

工場長

「お、おぅ、まーそういうことやな・・・もうちょっと先まで考えんとアカンから大変かもしれんけど、来月からあんじょう頼むわー、いろはさん」

いろは

「はい!頑張ります!」

解説

さて、今回のお話はどうでしたか?皆さんは『え?なぜ?』と疑問に思われましたか?少し考えれば理解できますが、これまで携わってきたプロジェクトを振り返ってみても、意外とこの問題に気づけていないことがあります。ではもう少し詳しく考えてみましょう。

生産計画の立案期間

実際に生産計画を立てたいのは今月分なのですが、この今月分の生産をするためには資材が必要であり、その資材をあらかじめ準備するには1ヶ月前に発注しておく必要があるため、実際は前月の時点で今月の生産計画が必要になります。この1ヶ月とは、資材の調達リードタイムですので、

生産計画の立案期間 = 必要な生産計画期間 + 資材の調達リードタイム

と覚えておくとよいかもしれません。

販売計画の立案期間

今月確定する生産計画に必要な販売計画期間は、今月生産入庫から来月生産入庫までの期間(a)と今月生産入庫までの期間(b)を加算した(c)の期間になります。したがって、

生産計画に必要な販売計画期間 = 計画サイクル + 生産リードタイム

に相当することがわかると思います。
今回のお話では、資材の調達まで考えると翌月の生産計画まで必要ということでしたので、いろはさんが気づいたように販売計画の必要な期間もさらに伸びることが分かりますね。

グラフ

次回の第5話では、今回のお話にも少し出てきた『生産負荷』についてお話ししたいと思います。

  • 印刷用PDFは下記よりダウンロードいただけます。

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筆者紹介

大下 吾朗(おおした ごろう)

R&D本部 数理技術部 シニアコンサルティングスペシャリスト

米国PMI認定プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル。
需要予測・需給計画ソリューション FOREMAST(フォーマスト)の開発およびシステム導入プロジェクトに従事。
主に在庫補充量計算に関する機能設計・開発を担当。

関連書籍など

在庫管理のための需要予測入門

FOREMAST担当コンサルタントが執筆した需要予測入門書です。
どのような需要予測システムを導入すればよいかお悩みの方のために、実務に精通したコンサルタントが基本知識からシステム導入時に考慮すべきポイントまでをやさしく解説しています。

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キヤノンシステムソリューションズ株式会社数理技術部[編]
淺田 克暢+岩崎 哲也+青山 行宏[著]
■出版社:東洋経済新報社
■発売日:2004年12月22日
■ISBN:4492531874
■価格(税込):1,980円

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