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初級編(調達業務編) 第2話 調達の迷宮~「必要な物を切らさない」パーチェシングとは?~コラム

公開日:2026年1月9日

在庫削減や適正化など、多くの企業にとって重要な経営課題である需要予測・需給計画。
​需給計画においては、コツやポイントを知らないままでいると、余計な作業負担や在庫過多といった問題に直面してしまいます。

そこで本コラムでは、はじめて需給担当者になった方やこれから需給について学びたい方向けに、需要予測・需給計画の基本を分かりやすく解説します。
​今回は調達業務における需給の課題や押さえておきたいポイントについて見ていきましょう。

調達の迷宮

皆さんこんにちは。キヤノンITソリューションズの大下です。前回は企業における調達プロセスの役割と重要性を整理し、調達は「必要な物を切らさないためのパーチェシング」と「どこから・どう買うかを設計するソーシング」の二本柱で成り立つことを確認しました。

今回はパーチェシングに焦点を当て、「必要な物を切らさない」ことの難しさを深掘りします。

迷宮に潜む罠、守られない約束

―先日、主任の期待に応えられなかったことがよっぽどショックだったのか、少し元気のないいろはさん。「もうこれ以上がっかりされたくない」と気を引き締めているところへ、先日発注したサプライヤーから電話が―

いろはと主任
  • サプライヤー
    「先日いただいた発注についてなんですが、商品コードと一致するものがない商品がありまして…」
  • いろは
    「え?一致するコードがない?そんなはずは…すぐ確認するので、少々お待ちいただけますか!?」

(心の声)入力ミス?そんなはずはない、だってミスしないように部品表から原材料のコードをコピペで張り付けて発注書作ったし…これ以上発注が遅れると、製造にも影響出ちゃう…仕方ない、主任に聞いてみよう

  • いろは
    「先日発注した原材料ですが、一致するコードがないらしくて…すぐ発注し直したいのですが、原因がわからなくて…」
  • 主任
    「一致するコードがない?どっちのコードで発注したの?」
  • いろは
    「どっち?ちゃんと部品表に記載されていたコードで発注しましたが…」
  • 主任
    「あー、それが原因かもね。普通の原材料は部品表に記載されているウチのコードでも発注できるけど、特殊な原材料は相手先のコードで発注しないと、サプライヤーには通じないものがあるんだ。部品表の端っこのほうに注意書きがついてなかった?」
  • いろは
    「(え?なんだその罠!)…あ、ありました。すぐ正しいコードで発注しなおします」

―なぜコードが複数あるのか納得がいかない気持ちを抱えつつも、いろはさんは急いで待たせているサプライヤーへ正しいコードを伝えたようです。ところが―

  • サプライヤー
    「あー、その商品ですか…その商品はちょっと特殊でして、普段在庫していないので、ご希望の日にちまでにすべてを納品させていただくのは無理そうですね…早急に生産に取り掛かりますが、一旦半分を希望納期までにお納めさせていただくので、残りは1週間後でもよろしいでしょうか?」
  • いろは
    「分納ですか…(すこし考えてから)大丈夫です、それでお願いします」

―そう言って電話を切った後、そのやり取りを隣で聞いていた主任

  • 主任
    「なんか分納って聞こえたけど、大丈夫?」
  • いろは
    「はい、一旦半数は希望納期までに納品していただけるらしいので、足元の生産計画には影響がないはずです」
  • 主任
    「さすが元・生産計画担当、そこまですぐに判断できるとは。ちなみに原材料が希望通りの納期・数量で届かないことはよくあるけど、そのパターンと影響は押さえている?」
  • いろは
    「(褒められた…のかな?)なんとなくですが…良い機会なので整理して皆さんに共有しますね!」
  • 主任
    「うん、頼んだよ」

解説

今回は、外部調達で発生しがちなトラブルを2つ取り上げました。みなさんも現場では一度は経験がある内容かもしれませんね。順に要点を整理してみましょう。

まず1つ目はコードの違いによる発注ミスです。傍から見るとなんという事もないばかばかしいミスのように見えますが、実際の現場ではよく起こるトラブルです。その原因はいくつかありますが、主な原因には次のようなものが挙げられます。

  • コード体系の相違

    自社とサプライヤーでコード体系が異なるのは一般的です。また同じ仕様であってもサプライヤーが異なるとサプライヤーごとにコードも変わってきますので、自社システムでは自社コードで管理せざるを得ません(いろはさんが納得できなかったのはこれが原因ですね)
    ​さらに自社内でも事業統合などで旧システムのコードを引き継ぐ必要性から、同一品目が複数コードで管理されることもあり、注意が必要です

  • コードの多義性

    同一のコードが製品・部品など複数カテゴリで用いられる場合、文脈を取り違えると誤発注につながります
    ​過去のコードを流用しているケースも要注意です

2つ目は希望通りに届かないケースです。製造指図で社内完結する生産計画と異なり、外部調達は自社の発注Noと相手の受注Noが別体系で、システム上の突合や進捗把握が難しくなりがちです。今回のケースは分納でしたが、主任の言う通り、数量・納期・回数がブレる要素になりますので、そのケースごとに影響を把握しておくことが重要ですね。

次の図はいろはさんがまとめたノートのようですが、一緒に確認してみましょう。

図:いろはさんがまとめたノート

主任に褒められ上機嫌ないろはさんはきれいにまとめることができたようですが、皆さんはいかがでしたか?
​主任の評価につながったのは、状況を型で捉え、影響を即時に評価できた点のようですね。

最終話(第3話)では、エンジニアリングチェーンにおける調達、ソーシングを取り上げます。どこから・どう買うかを設計し、パーチェシングのリスクを前段で抑える視点について一緒に考えていきましょう。

  • 印刷用PDFは下記よりダウンロードいただけます。

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筆者紹介

大下 吾朗

執筆:大下 吾朗(おおした ごろう)

キヤノンITソリューションズ株式会社 ビジネスイノベーション推進センター ビジネスサイエンス部所属
​2003年に関西大学大学院 総合情報学研究科 知識情報学専攻を修了後、同社へ入社
​米国PMI認定プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)資格保有

R&D本部 数理技術部にて需要予測・需給計画ソリューション FOREMASTの開発およびシステム導入プロジェクトに従事。
​2024年に現所属部門へ異動し、現在はデータサイエンス領域のコンサルティングを担当。

関連書籍など

在庫管理のための需要予測入門

FOREMAST担当コンサルタントが執筆した需要予測入門書です。
​どのような需要予測システムを導入すればよいかお悩みの方のために、実務に精通したコンサルタントが基本知識からシステム導入時に考慮すべきポイントまでをやさしく解説しています。

在庫管理のための需要予測入門
キヤノンシステムソリューションズ株式会社数理技術部[編]
​淺田 克暢+岩崎 哲也+青山 行宏[著]

  • 出版社:東洋経済新報社
  • 発売日:2004年12月22日
  • ISBN:4492531874
  • 価格(税込):1,980円

事例で解決!SCMを成功に導く需給マネジメント

FOREMAST担当コンサルタントが執筆した需給マネジメントの仕組みに関する実務視点の解説書です。
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事例で解決!SCMを成功に導く需給マネジメント
キヤノンITソリューションズ株式会社数理技術部[編]
五島 悠輝、多ヶ谷 有、永井 杏奈、八鳥 真弥 他、計14名[著]

  • 出版社:日刊工業新聞社
  • 発売日:2024年12月26日
  • ISBN:9784526083617
  • 価格(税込):3,080円

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