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「現場の自動化・無人化DX」[2023.1.30]
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シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第38回)
「現場の自動化・無人化DX」[2023.1.30]

現場の自動化・無人化DX

新年、明けましておめでとうございます。本年も最新技術をご紹介するように努めてまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。さて、2023年最初のコラムは、昨今、様々な分野で導入が進められているDXについて、当社が掲げる「エンジニアリングDX」と、イメージング技術による「現場の自動化・無人化DX」についてご紹介いたします。

エンジニアリングDXとは

エンジニアリングDX

図1 エンジニアリングDX

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「エンジニアリングDX」とは、「モノづくりのDX」のエンジニアリングチェーン領域に関わるDXを指す用語として、当社、キヤノンITソリューションズが商標登録したものです。製品ライフサイクル管理のPLMをはじめ、設計のCAD、デジタルツインのxR、生産現場のFA(ファクトリーオートメーション)から、今回ご紹介する、イメージング技術やロボティクスをベースに、人の代替化を目指す、「現場の自動化・無人化」、さらに、それらを有機的に連携・結合させることを含め、価値を創出する取り組みとなっています。
モノづくりのDXで利用される各技術領域について、簡単にご紹介します。PLM技術は、部品などの素材や製品情報から、企画、設計、生産、販売、廃棄まで製造のライフサイクル全体にわたって、管理するソフトウエアで、エンジニアリングチェー ン全般をサポートしています。
CAD技術は、部品、成形品をつくり上げるために必要なソフトウエアで、現在2Dから3Dへの変革が活発です。特に3D情報を活用できることが、アドバンテージとなります。
続く、xR技術は、3D情報を利用するVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)技術の領域で、スマートグラスやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などウェラブル機器を利用し、プロダクトデザインの外観や機能性確認、試作レス、デジタルツインなどに活用されています。
さらに、FA技術では、各種センサおよび、SCADA/MES領域のソフトウエアを利用し、工場・プラント設備や製造現場において、リアルタイムなデータの収集、蓄積、監視制御から、ビッグデータ分析、AIでの最適化など、製品、製造の品質向上と、生産性向上を目指したDXに活用されています。
イメージング技術では、近年、技術革新が進む先進の撮像センシング技術と画像のAI技術、さらに、移動や駆動を伴うマシンやロボットとの組み合わせにより、様々な現場の自動化に活用されています。外観検査による製品や製造品質の担保、人の代替化、それによる働き方改革など、一つ先の価値創出のために導入が進められています。

イメージング技術の3つのソリューション

現場の自動化、無人化に向けたDXとしては、主に、ベルトコンベア上に設置し、製品の外観検査で利用される「産業用カメラソリューション」、工場や設備室などに設置し、パン、チルト、ズーム機能を利用し、複数個所の点検を行う「ネットワークカメラソリューション」、カメラの自己位置推定技術により、AGVや、ロボットの自由走行で利用する「VSLAMカメラソリューション」があります。

産業用カメラソリューション

産業用カメラソリューション

図2 産業用カメラソリューション

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産業用カメラソリューションは、マシンビジョン、コンピュータビジョンと呼ばれる領域のもので、主に、固定焦点レンズを用いた産業用カメラを、ベルトコンベア上に固定設置し、カメラ下を通過する対象物を高速に検査、認識等を行うものです。産業用カメラには、対象ワークの形状、検査内容により、エリアスキャンカメラ、ラインスキャンカメラ、3Dカメラ、ハイパースペクトルカメラなどが利用されます。カメラの映像をパソコンへ転送するために、画像入力ボード、処理のための産業用パソコン、どのような処理と自動化を行うかについては、画像処理ソフトウエアを用いて構築されます。

ネットワークカメラソリューション

ネットワークカメラソリューションについては、第34回コラムでも、ご紹介いたしましたが、固定焦点で駆動部をもたない産業用カメラと異なり、パン(左右移動)、チルト(上下移動)機能で視野の変更ができ、ズーム(前後方向で拡大縮小)とオートフォーカス機能を利用することで、1台のカメラで広範囲の視野をカバーし、撮像映像や画像をもとに、様々な画像処理を組み合わせた自動化が取り組まれています。
新規導入はもとより、設置済みの既存ネットワークカメラも利用できるため、入退室の顔認証、オフィス内の人数カウント、工場現場の巡視点検の自動化など、産業用カメラソリューションに次ぎ、導入が進められています。

VSLAMカメラソリューション

VSLAMカメラソリューション

図3 VSLAMカメラソリューション

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最後は、VSLAMカメラソリューション(第24回第36回コラムで紹介)です。こちらは、AGVソリューションとも呼ばれており、昨今、AGVの自由走行化、AMR化する技術として、注目されている技術領域です。VSLAMとは、Visual Simultaneous Localization and Mapping の略語で、カメラ映像をもとに自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術のことです。ステレオカメラとIMU(ジャイロセンサと加速度センサ)の構成に、VSLAM処理機能を搭載したデバイスを使用します。

現場の自動化・無人化DXとしては、大きく2つあり、1つは、VSLAMカメラを利用した無人走行車の自由走行化で、これまで、白線や黄線など床にはわせたライン上を移動していたAGVを経路変更時にラインの引き直しなく、自由に走行可能となります。もう1つは、物流現場で運行しているフォークリフトやエレカ(小型電気運搬車両)など、有人の構内車両に対する位置認識です。有人の走行車の場合、人の操作により自由に走行できますが、逆に、どこを走行中かを把握したいという要望があり、そのためのデバイスとしては、小さなVisual SLAM搭載カメラを取り付けるだけで、リアルタイムに位置検出ができ、非常に有効な手段となります。
また、VSLAMカメラは、必ず進行方向に取り付ける必要はなく、フォークリフトなど、前方に荷台があり、視野が狭まる場合は、逆に後部に取り付けることもでき、カメラとしては後ろ向きに進む場合でも認識可能です。さらに、VSLAMカメラソリューションとしては、自由走行化となったAGV/AMR上に、ロボットの眼として産業用カメラや、ネットワークカメラを搭載し、より高度な認識と、移動や駆動を伴う多機能なサービスロボットへの応用も進んでいます。

今回のまとめ

今回は、ものづくりのDXとなる、エンジニアリングDXと、現場の自動化や無人化DXの中心となる3つのイメージソリューションについてご紹介いたしました。
現在、DXを取り巻くデジタル技術は、日進月歩、更新されており、ソリューションとしては、エッジベースの構成でご紹介しましたが、エッジ・クラウド双方の技術で進んでいます。本年も引き続き、最新の情報をご紹介するよう努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

  • 産業用カメラ技術については、第4回第7回第8回第9回第10回コラムも、ご参考ください。
  • ネットワークカメラ技術については、第34回コラムも、ご参考ください。
  • VSLAMカメラ技術については、第24回第36回コラムも、ご参考ください。

 

筆者紹介

シニアアプリケーションスペシャリスト 稲山

稲山 一幸(いねやま かずゆき)

エンジニアリング事業 シニアアプリケーションスペシャリスト

1992年住金制御エンジニアリング入社、Matrox社製品の国内総代理店立ち上げに参画、以降25年マシンビジョン業界に携わる。
2013年~2016年、キヤノン株式会社にてマシンビジョン関連の新製品開発のソフトウェアリーダとして従事。現在は、エバンジェリストとして活躍中。

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