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コラム|初級編(番外編) お財布マネジメント
~お小遣いにも"需給"が関係?!~[2023.10.02]
在庫削減や適正化など、多くの企業にとって重要な経営課題である需要予測・需給計画。
需給計画においては、コツやポイントを知らないままでいると、余計な作業負担や在庫過多といった問題に直面してしまいます。
そこで本コラムでは、はじめて需給担当者になった方やこれから需給について学びたい方向けに、需要予測・需給計画の基本を分かりやすく解説します。
番外編では、より身近な日常を舞台に、発注や需給に関するポイントを考えます。
お財布マネジメント
皆さんこんにちは。キヤノンITソリューションズの大下です。
発注業務の問題点をテーマとした『発注業務編』『需給業務編』に続き、家庭での身近な需給をテーマにした『番外編』はいかがでしたでしょうか?
今回も引き続き番外編になりますが、新しくいろはさんの後輩に登場していただき、お小遣いをマネジメントする方法について『製品需給』を『お財布需給』に見立てながら一緒に考えてみたいと思います。
お小遣いはいくら持っておけば大丈夫?
―工場長が退職して数年後・・・当時は新人だったいろはさんもすっかり中堅社員に。今ではSCM部門に配属された新人社員の指導に当たっているようですね。
今日は月初の生販会議の日。会議終了後、新人の仁保(にほ)君が会議中に分からなかったことをいろはさんに質問しているようです。
仁保
「先輩、さっきの会議でいくつか分からなかったことがあるんですけど、今お聞きしてよろしいですか?」
いろは
「んー?いいよー。」
仁保
「えっと、まず販売計画についてですけど、営業部門の販売計画を使わずに需要予測をベースにした販売計画を使用して生産計画を立てているのはなぜでしょうか?営業部門は一番お客様に近いので、需要の傾向を最もキャッチしやすい部門ですから、販売計画の精度も良いのだと思っていたのですが・・・」
いろは
「お、仁保君するどいねー。たしかにその通りなんだけど、営業部門の立てる販売計画は、販売予算を組むために“これだけ売るぞー!”っていう気持ちがどうしても入っちゃうんだよー。だから実際の販売実績をもとに計算した需要予測の方が、実際のトレンドも反映できるし生産計画には向いているってわけ。ただ、需要予測だけだとせっかく営業部門がキャッチしたお客様の声まで消えちゃうから、大口の受注見込みなんかは需要予測に反映するようにしてるんだよー」
仁保
「なるほど・・・(メモしながら)あ、その需要予測についてなんですが、予測するためにインプット情報として使っている販売実績はどういったデータなんですか?」
いろは
「えっとねー、それはうちの会社から卸や販売店に売れた実績データだよ。私が入社したころはまだあまりちゃんとしたデータが貯まっていなかったけど、システム部門に掛け合ってやっと予測に使えるデータが3~ 4 年くらい貯まったころかなー?むかしは金額でしか残ってなかったり、カテゴリごとにしか分からなかったりして、集めるのにホント苦労したんだから・・・」
仁保
「へー、そうなんですね・・・(先輩、新人の頃からすごかったんだなー・・・)あ、あと最後にもう一つ!需要予測って、いつも先輩が言ってる通り100%当たらないじゃないですか?予測が外れた時はどう対応されているんですか?」
いろは
「その通り!需要予測は当たらないんだよねー。だけど、どれだけ外れるか分かれば、その分余分に作っておく事で欠品は防げるでしょ?だから需要予測は当てることも大事なんだけど、どれだけ外れるか知ることも大事なんだよー」
仁保
「なるほど!すごく良くわかりました!ありがとうございました!(やっぱり先輩はすごいなー・・・)」
**
―数日後の業務終了後、いつも元気ないろはさん、お財布を見ながら何か悩んでいるようです・・・
仁保
「あれ?先輩どうしたんですか?」
いろは
「あー、仁保君か・・・いやー、ちょっとお小遣いがねー・・・」
仁保
「あ・・・もしかして、今月ピンチな感じですか?」
いろは
「いや、反対でさー・・・メッチャ余ってるからどうしようかと思って・・・」
仁保
「え?余ってる??どういうことです??」
いろは
「ほら、もうすぐ給料日でしょ?いつも実家に入れる分とかスマホの通信費とか必要な分だけ残して、あとは全額口座からおろしてたんだけど、さすがに毎月そんなに使わないから余っちゃってねー・・・どうしようかなって考えてたの・・・」
仁保
「えー!?普通は反対なんじゃないですか?自分が使う分だけ口座からおろして、あとは貯金するんじゃ・・・お財布なくしたらどうするんですか??」
いろは
「え!?そうなの??確かにそういわれるとそうだけど・・・でも、毎月どれくらい使うかなんてわかんないじゃん?」
仁保
「・・・先輩、それ本気で言ってます?」
いろは
「え?本気だよ?どういうこと??」
仁保
「だってそれ、いつも先輩が言ってる事じゃないですか?ほら、予測が大事だって・・・」
いろは
「・・・ほんとだ・・・いつも言ってるね、私・・・仕事とプライベートってまったく別々に考えてたから、そんなこと思ってもみなかったよ・・・ちょっと考えてみるねー・・・ありがとう、仁保君!」
仁保
「いえいえ、とんでもないです(仕事できる先輩でも、こういうところあるんだなー・・・)」
解説
仁保君にしてみると、仕事ができる先輩だと思っていたいろはさんの意外な面が見られたようですね。がっかりしなければいいですが(笑)。
さて、仁保君にヒントをもらったいろはさんですが、仕事での『製品需給』とプライベートの『お財布需給』をどのように考えて答えを出すのでしょうか?
皆さんも、いろはさんになったつもりで考えてみてください。
ヒントは仁保君の質問に対するいろはさんの回答にありましたね。以下にまとめてみましたので、ぜひ答え合わせをしてみてください。
No. | キーワード | 企業の“製品需給” | いろはさんの“お財布需給” |
---|---|---|---|
1 | 需要予測 | 営業部門の予算(売りたい量)から、実際のトレンド(売れる量)へ予測を変更 | 使っても良いお小遣いから、必要なお小遣いへ予測を変更 |
2 | イベント | 事前に大口受注などの情報をキャッチして需要予測に反映 | 飲み会の開催時期や会費などの情報を早めに聞いて月々のお小遣いを調整 |
3 | 見える化 | 過去の販売実績を蓄積 | お小遣い手帳をつけるなど実績を把握 |
4 | 安全在庫 | 需要のブレを吸収できる余裕を持った補充 | 余裕を見たお小遣い設定 |
いかがでしたでしょうか?皆さんはもちろん出来ていますよね?そうです、実は私たちは、知らず知らずのうちに“需給”をマネジメントしているんですよね。
これを読んでより“需給”を身近な問題だと感じていただければ幸いです。
さて次回は、『それでも予測が外れたときどうするか』について、今回同様に『製品需給』と『お財布需給』を比較しながら考えてみたいと思います。
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筆者紹介
大下 吾朗(おおした ごろう)
R&D本部 数理技術部 シニアコンサルティングスペシャリスト
米国PMI認定プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル。
需要予測・需給計画ソリューション FOREMAST(フォーマスト)の開発およびシステム導入プロジェクトに従事。
主に在庫補充量計算に関する機能設計・開発を担当。
関連書籍など
在庫管理のための需要予測入門
FOREMAST担当コンサルタントが執筆した需要予測入門書です。
どのような需要予測システムを導入すればよいかお悩みの方のために、実務に精通したコンサルタントが基本知識からシステム導入時に考慮すべきポイントまでをやさしく解説しています。
在庫管理のための需要予測入門
キヤノンシステムソリューションズ株式会社数理技術部[編] 淺田 克暢+岩崎 哲也+青山 行宏[著] ■出版社:東洋経済新報社 ■発売日:2004年12月22日 ■ISBN:4492531874 ■価格(税込):1,980円
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