初級編(番外編) お財布マネジメント ~それでも予測が外れたら・・・?~コラム
公開日:2024年3月7日
在庫削減や適正化など、多くの企業にとって重要な経営課題である需要予測・需給計画。
需給計画においては、コツやポイントを知らないままでいると、余計な作業負担や在庫過多といった問題に直面してしまいます。
そこで本コラムでは、はじめて需給担当者になった方やこれから需給について学びたい方向けに、需要予測・需給計画の基本を分かりやすく解説します。
番外編では、より身近な日常を舞台に、発注や需給に関するポイントを考えます。
続・お財布マネジメント
皆さんこんにちは。キヤノンIT ソリューションズの大下です。
前回は、お小遣いをどれだけ使うか『予測』し、必要な分だけ引き出すことで、いろはさんの“お財布需給”を適正化する内容でしたね。
今回は『それでも予測が外れたときどうするか』について一緒に考えてみたいと思います。
予測が外れたらどうするか
ー今日は毎月恒例の、SCM部門、生産部門、営業部門の責任者が集まって実施する生販会議が朝から開催されています。
新人だった仁保君もずいぶん成長し、担当商品を任されてきました。今日の議題は、先月に出荷が急増して欠品しそうになった商品について話し合っているようです。
そして会議終了後・・・
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営業「いろはさん、おつかれー。例の商品、この前言ってたとおり受注できそうやから、来月多めに計画しといてなー」
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いろは「はーい、おつかれさまです!受注できそうで良かったですね!了解しましたー!」
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仁保「(先輩、いろんな人と仲いいよな・・・)あのー、先輩・・・」
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いろは「んー?どうしたの仁保君、そんな泣きそうな顔しちゃって・・・」
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仁保「・・・いえ、さっきの会議でちょっと疑問に思ったことがあって・・・聞いてもいいですか?」
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いろは「お、さすが仁保君は真面目だなー。もちろん!なんでも聞いていいよー」
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仁保「ありがとうございます・・・実はさっきの会議で議題にあった欠品した商品、ウチの部の担当は私なんですよ・・・需要予測の結果も、もちろん工場からもらった生産計画の内容もちゃんと確認したつもりなのに欠品したから、さっきの会議で怒られるかなって覚悟していたんですけど、みんな何も言わないから拍子抜けしちゃって・・・まだ新人扱いされているんでしょうか?」
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いろは「なんだ、そんなこと気にしていたのかー。それは、やっぱりみんな分かっているからじゃないかな?」
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仁保「え?わかってる??・・・何を、ですか??」
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いろは「お?もしかして仁保君はまだわかってなかったのかな?前に言ったつもりだったんだけど、うまく伝わってなかったのか、ゴメンゴメン・・・そんな難しいことじゃないんだけど、簡単に言うと『予測は当たらない』ってことをみんな知ってるってことだよ」
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仁保「・・・え?予測って当たらなくていいんですか?当てるために予測しているんじゃ・・・?」
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いろは「うんうん、そう思う人多いよね・・・でもさ『予測』は『予知』じゃないんだよ?当たらなくて当然!だから大事なのは『どれだけ外れるか』を把握しておくってことだねー」
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仁保「・・・はい、なので、外れたときのことも考えて多めに生産する計画にしたつもりなんですが・・・」
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いろは「外れにも“想定内の外れ”と“想定外の外れ”があるってこと。仁保君が考えていたのは“想定内の外れ”で今回欠品した原因は“想定外の外れ”だから。今回の件は私が担当だったとしても欠品していたかもねー」
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仁保「えっ!先輩でも、ですか?それじゃーどうしようもないんじゃ・・・」
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いろは「そう!だから、あらかじめ外れたときにどうするか考えておくことが大事ってこと!今回の欠品もすぐ解消できたでしょ?あれは事前にみんなでちゃんと考えておいて、その通りに対応できたからなんだよ。・・・そうだ、今回どんな対応したか、それをするために事前にできることはないか、まとめておくといいかもね!」
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仁保「そうですね・・・ちゃんと整理しておきます。ありがとうございました!」
―その日の業務終了後、前回同様いろはさんがお財布を見ながら何か悩んでいるようです・・・
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仁保「あれ?先輩また財布のぞいて・・・まだ給料全部引き出しているんですか?」
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いろは「いやーそうじゃなくて、ほら、この時期は配属異動とかあって歓送会が多いでしょ?わかっていたから多めに引き出したんだけど足りなそうで、どうしようかなって思って・・・」
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仁保「ああ、今朝の話と一緒ですね」
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いろは「え?どういうこと??」
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仁保「え?だって、先輩が今朝言っていたじゃないですか?ほら、外れたときにどうするかちゃんと考えておくことが大事だって・・・」
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いろは「(!)・・・も、もちろんわかっていたよ?あれでしょ?あの商品みたいに緊急生産すればいいんでしょ?」
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仁保「(・・・これは、わかってないな・・・)いまから残業しても振り込まれるのは来月だから間に合いませんよ・・・他の方法もあったじゃないですか、考えてみたらどうです?まー、いつもお世話になっているし、いざとなったら私がお貸ししますよ」
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いろは「仁保くーん、ありがとうー、何ができるか考えてみるー・・・」
解説
仕事ができるいろはさんですが、相変わらずお財布のマネジメントは苦手のようですね。ちょっと天然なのはお母さんに似たのでしょうか? (笑)
さて、いろはさんは仕事での『製品需給』とプライベートの『お財布需給』をどのように考えて答えを出すのでしょうか?
前回同様、皆さんもいろはさんになったつもりで考えてみてください。
今回はヒントなしですが、みなさんはもうわかりますよね。以下に一つの例としてまとめてみましたので、ぜひ答え合わせをしてみてください。
No. | キーワード | 企業の“製品需給” | いろはさんの“お財布需給” |
---|---|---|---|
1 | 緊急対応 | 他部門に応援要請するなど、稼働を上げて緊急生産する | 貯金を崩す |
2 | 外注 | 外部の委託先に生産依頼する 他の拠点から在庫転送して補充する |
クレジットカードやQRコード決済等で支払う |
3 | 転送 | 在庫が余っている拠点を把握しておく | 知り合いに借りる 貸し借りしやすい関係を築いておく |
4 | 欠品 | 欠品を許容し、お客様へ謝罪する 納期を延ばしてもらう |
飲み会を断る 支払いを待ってもらう |
欠品しそうなときの対応は、その時の状況に応じて選択できる手段が限定されますので、取れる手段をあらかじめ整理しておくことが重要です。
また、こういった緊急時は他部門にも協力してもらわないといけないケースも多いため、いろはさんのように普段から他部門の関係者と仲よくするなど、事前に良好な関係を構築しておくことも重要ですね。
以上で、需給業務の問題点をテーマとしたコラムの番外編も終了となります。これまでご愛読いただきありがとうございました。
全4話を通して、仕事の需給と身近な需給を比べてきました。
これを読んでより”需給”を身近な問題だと感じていただき、皆様の何かのお役に立ちましたら幸いです。
また機会がありましたら、お会いしましょう。
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初級編(発注業務編)
初級編(需給業務編)
筆者紹介
- 大下 吾朗(おおした ごろう)
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R&D本部 数理技術部 シニアコンサルティングスペシャリスト
米国PMI認定プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル。
需要予測・需給計画ソリューション FOREMAST(フォーマスト)の開発およびシステム導入プロジェクトに従事。
主に在庫補充量計算に関する機能設計・開発を担当。
関連書籍など
在庫管理のための需要予測入門
FOREMAST担当コンサルタントが執筆した需要予測入門書です。
どのような需要予測システムを導入すればよいかお悩みの方のために、実務に精通したコンサルタントが基本知識からシステム導入時に考慮すべきポイントまでをやさしく解説しています。
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