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第5回 AIを活用した就業規則改訂業務の効率化AIを使った人事業務の効率化事例

公開日:2026年6月30日


就業規則の改訂業務においても、AIを活用できる場面は多くあります。
就業規則は、採用、労働時間、休日・休暇、賃金、退職、服務など、従業員の働き方に関するルールを定める重要な文書です。法改正や会社の制度・運用の変更があった場合には、その内容を見直す必要があります。
近年は、育児介護休業法やパートタイム・有期雇用労働法などの労働関連法の改正がほぼ毎年実施され、また柔軟な働き方や人材確保に向けた新たなルールづくりが求められるなど、人事関係者は、就業規則改訂業務を頻繁に行うようになっています。さらに、規則改訂にあたっては、条文を修正するだけでなく、他の規程との整合性や実際の運用とのズレなどを確認することが必要になり、その作業に多くの時間がかかっています。今や、就業規則改訂業務の効率化は、人事関係者が取り組むべき重要課題になっていると言えます。
そこで今回は、AIを活用した就業規則改訂業務の効率化について解説します。

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AIによる改訂箇所の洗い出し

就業規則を改訂する際、まず必要となるのが、「どの条文を見直す必要があるのか」を確認することです。法改正や会社の制度変更があった場合でも、その影響が就業規則のどの部分に及ぶのかは、会社ごとに異なります。たとえば、育児・介護休業に関する法改正があった場合、見直しが必要となるのは育児・介護休業規程だけとは限りません。改正内容によっては、賃金規程、正社員就業規則、パートタイム就業規則など、関連する規程の確認も必要になります。また、条文の追加や削除により、他の規程で引用している条番号がずれてしまうこともあります。そのため、改訂箇所だけでなく、関連する規程全体を横断した確認が欠かせません。
S社では、この改訂箇所の洗い出しにAIを活用しています。具体的には、次のような流れで実施しています。

  • 現行の就業規則および関連する諸規程をAIに読み込ませる。
  • 法改正の概要や、会社が新たに導入しようとしている制度の内容をAIに読み込ませる。
  • 現行規程のうち、見直しが必要となる可能性がある条文や、条番号の修正が必要となる箇所をAIに抽出させる。

このように、AIを活用することで、改訂が必要となる可能性のある条文を短時間で確認しやすくなります。

AIを活用した「育児・介護休業規程」の改訂例

AIによる条文案・新旧対照表の作成

改訂が必要な箇所を洗い出した後は、実際の条文案を作成します。この段階では、法律上必要な内容を盛り込むだけでなく、会社の運用に合っているか、他の規程との表現がそろっているかといった点も重要です。
これらの確認や文案作成にも、AIを活用することができます。たとえば、次のような場面が考えられます。

  • 法改正や制度変更の内容を踏まえた条文案の作成
  • 会社の運用に合わせた文言の調整
  • 用語や表現がそろっているか、関連する規程との整合性チェック
  • 現行条文と改訂案を比較する新旧対照表の作成

AIを活用することで、条文案のたたき台を短時間で作成しやすくなります。また、用語や表現の違いを整理し、規程全体の表現を統一しやすくなります。改訂案がある程度まとまった後は、現行条文と改訂案を比較する新旧対照表の作成にも活用できます。

AIによる説明資料・社内周知文の作成

就業規則を改訂する場合、改訂内容について社内で説明・周知する必要があります。このような説明資料や社内周知文の作成にも、AIを活用することができます。たとえば、次のような資料が考えられます。

  • 役員会・経営会議向けの説明資料
  • 管理職向けの説明資料
  • 従業員向けの改訂内容のお知らせ文
  • 従業員から想定される質問と回答例

同じ就業規則の改訂であっても、経営層向け、管理職向け、従業員向けでは、伝えるべき内容や表現が異なります。AIを活用することで、対象者に応じた説明文や資料のたたき台を作成しやすくなります。また、想定される質問と回答例を事前に整理しておくことで、周知後の問い合わせ対応にも備えやすくなります。

このように、AIは就業規則改訂業務の効率化に役立ちます。一方で、AIが作成・抽出した内容をそのまま使用することには注意が必要です。就業規則は、会社と従業員の労働条件や職場のルールに関わる重要な文書であるため、法律上必要な内容が反映されているか、会社の実態に合っているか、他の規程と矛盾していないかについては、最終的に人事担当者や社会保険労務士などの専門家が確認することが重要です。
その点を踏まえたうえで、就業規則の改訂に多くの時間がかかっている、法改正対応が後手に回りやすい、社内周知資料の作成まで手が回らないという会社は、AIを活用した就業規則改訂業務の効率化を検討してみてください。

次回のコラムでは、「AIによる給与計算業務の効率化」の事例について解説します。

著者プロフィール

深尾裕香(ふかお ゆか)

RavoRico Consulting社会保険労務士法人 代表 社会保険労務士
大手IT企業在籍時に結婚・出産を経験し、社内保育園の立ち上げを主導。その後、企業にて人事・労務業務に従事。2022年社会保険労務士事務所を設立、2025年に法人化。企業の人事労務に関する支援を行いながら、各種研修・講演にも登壇。
著書「図解でやさしい!労務管理がすべてわかる本」(ソーテック社 2025年)
YouTube『イマドキ社労士ふかゆかChannel』