第4回 AIによる効率的な勤怠管理と過重労働対策AIを使った人事業務の効率化事例
公開日:2026年6月1日
人事部門は、労働法令の遵守、過重労働防止および生産性向上のために、従業員一人ひとりの勤怠管理をしっかりと行わなければなりません。これらに関する業務も、AIを導入すれば、大幅な効率化や的確な対策実施などの成果を出すことができます。
今回のコラムは、AIを使った勤怠管理の効率化、過重労働対策および生産性向上に成功した、飲食チェーンK社の事例を紹介します。
AIによる勤怠管理の効率化
K社は、全国に約100店舗、従業員約3,500名(うち、パート、アルバイトが3,000名)を抱える飲食チェーンです。店長や人事担当者は、勤怠データのチェックやシフト勤務表の作成などに多くの時間がかかってしまい、本来行うべきマニュアル徹底や従業員教育にまで手が回らない状況に陥っていました。
そこで、AIによる勤怠管理の効率化に取り組むことにしました。
勤怠管理システムに入力された始業・終業時刻等のデータをAIにチェックさせることにより、次の作業を自動化しました。
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従業員の始業・終業時刻の入力漏れのチェックと修正
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始業・終業時刻とシフト勤務表のズレが大きい従業員への確認メールの送信
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時間外労働の上限に達しそうな従業員への警告メールの送信
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年次有給休暇の取得状況のチェック、取得日数が少ない従業員へのメール送信
これらの効率化により、店長は1か月当り1.0日分、人事担当者は2.0日分の作業時間削減に成功し、その時間を従業員教育などに振り向けました。その効果は、来店者数の増加やパートの退職率低下として着実に表れています。
AIを使った過重労働対策
また、K社では、次のようなAIを使った過重労働対策も実施しています。
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時間外労働が多い職場の傾向分析および時間外労働の削減策の提示
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過重労働によりメンタル不調に陥りそうな従業員のリストアップと対策の提示
例えば、(2)については、AIが次のデータ分析と対策提示を行っています。
- 過去の残業時間、パルスサーベイの結果(健康状態やストレスに関するアンケート調査)、担当業務の内容などのデータを収集し、これまでにメンタル不調に陥った従業員の傾向を分析する。
- メンタル不調に陥った者と同じ傾向を示している従業員をリストアップする。
- 従業員が抱える過重労働リスクの程度に応じて、「労働時間の短縮、休暇の付与、産業医との面談、配置転換」のうち講じるべき対応策を提示する。
このような過重労働対策により、メンタル不調者数の減少、従業員のエンゲージメントの改善などの効果が表れています。

AIによるデータ分析に基づいた生産性の向上
K社では、パート、アルバイトのシフト勤務表の作成も、AIを活用して自動的に行っています。具体的には、次の流れとなります。
- それぞれのパート、アルバイトが勤務を希望する曜日、時間帯などのデータをAIに入力する。
- AIがパート、アルバイトの相性等を分析して、効率よく働けるメンバーの編成、シフト勤務表の作成を行う。
- シフト勤務の変更履歴や実際の勤務実績等をAIが学習し、作成するシフト表の精度を高める。
AIを活用したシフト勤務表の作成により、パート等の突発休みや遅刻・早退が減少し、従業員が快適に働くことができるようになりました。そして、各店舗において生産性の向上(従業員1人当たりの粗利益の上昇)が見られるようになっています。
K社では、今後、AIを使ったデータ分析によりパート、アルバイトの退職を抑制して、各店舗のさらなる生産性向上を図っていきたいと考えています。

シフト勤務を行っている飲食店、介護施設、病院、ホテル等は、K社の事例を参考にして、AIを使った勤怠管理の効率化と生産性向上に取り組んでみてください。また、シフト勤務を行っていない業種でも、過重労働対策を講じる際には、K社のようにAIを積極的に活用していただきたいと思います。
次回のコラムでは、「AIを活用した就業規則改訂業務の効率化」の事例について解説します。
著者プロフィール
深瀬勝範(ふかせ かつのり)
Fフロンティア株式会社
代表取締役 人事コンサルタント 社会保険労務士
一橋大学卒業後、大手電機メーカーに入社、その後、金融機関系シンクタンク、上場企業人事部長等を経て独立。
現在、経営コンサルタントとして人事制度設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動などで幅広く活躍中。
主な著書に『はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、7の基本。8つの主な役割』『Excelでできる戦略人事のデータ分析入門』(いずれも労務行政)ほか多数。
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