生成AIの本質を理解して業務効率化を加速する進化し続ける生成AIとビジネス価値創出への取り組みR&D News+Reports 研究開発
公開日:2025年12月12日
キヤノンITソリューションズ株式会社
R&D本部 言語処理技術部
林 淑隆
アーリーアダプターとして最新技術をビジネスに適用
言語処理技術部では、テキストマイニングなど文書情報の分析/活用に関わる応用研究を進めており、昨今は膨大なテキストデータから得たい情報を効率的に探し出すことや、データが持つ内容の傾向を分析する技術の研究に注力しています。労働人口の減少や企業が保有するデータの利活用など、社会課題や企業課題に沿った研究を通じて、私たちの技術を活用したソリューションの開発に取り組んでいます。
数十年前の話ですが、当部の前身はセキュリティ領域を研究する部門で、当時は企業活動におけるメール利用が急速に広がり始め、メールによる情報漏えいが大きな課題となっていました。そこで、言語処理技術を活用して、メールの内容や宛先を分析し、セキュリティ事故につながる恐れのある情報漏えいを防止するソリューションを開発しました。その後、インターネットの普及に伴い、人の力では収集/分析ができないほどの膨大なデータを扱うようになったことから、ビッグデータを活用するためのソリューションを開発しました。そして現在は、多様化する社会課題を解決するために、トレンドである「生成AI」、そして「AIエージェント」を活用したソリューション開発に注力しています。その中で、私は主に大規模言語モデル(生成AI)の制御や運用に関する研究開発を推進しています。
近年は新しい技術が次々と生まれています。私たちはそういった技術をいち早くキャッチして、その技術を技術者だけでなく幅広い方々に活用いただけるようわかりやすく伝え、ビジネスにつなげることに注力しており、いわばアーリーアダプターとしての役割を担っています。このスピード感により、営業担当から「お客さまが抱えるこの課題を、言語処理技術を活用して解決できないか」と相談を受けたら、直ちに事業部門の活動に伴走できる体制を構築しています。
業務効率化の第一歩は「生成AIとは何か」を知ること
ChatGPTが発表されて以来、お客さまから「生成AIで業務効率化をしたい」という相談が急増しています。業種問わず、人手不足が課題となっていることから、定型業務や定常業務を生成AIで代替/削減をしたいというお声を多くいただきます。このような業務はテキストを扱う場面が頻繁にあるため、当部の専門領域である言語処理技術と生成AIの活用を通じて、業務効率化をサポートします。また、業務マニュアルなどのテキストだけではなく画像が含まれている情報を扱う場合でも、当部が所属するR&D本部には画像解析技術の研究を専門とした先進技術開発部があるため、同部と連携しながら開発を行うことで正確に情報を活用できます。このように、さまざまな技術を駆使してお客さまの課題解決を実現する取り組みを進めています。
ChatGPTが広く使われるようになった背景には、自然言語での操作が可能であり専門知識がない人でも気軽に使えることや、インターネット検索より手軽に必要な情報を得られることにあります。誰でも知りたいことを入力すれば、大量のデータを基にして瞬時に回答が得られるため、「生成AIを活用すればどんな課題も解決できる」と考えている方が多いですが、技術者の視点では生成AIは「それらしい答えを確率的につくり出すだけで、必ずしも正しいとは限らない」ツールとして捉えています。生成AIを活用した業務効率化を実現するには、まず仕組みや活用方法を正しく理解しておくことが重要となります。そこで、生成AIの基本的な技術情報をわかりやすく解説したコラムをキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)のコーポレートサイトにテクニカルレポートとして掲載していますので、ぜひご覧ください。
また、ChatGPTの他にも数多くの生成AIが存在するため、どのAIを活用したら良いか、何を基準に選択したら良いか悩んでいる方も少なくありません。生成AIは、理論的な理解が十分に進んでいないため、評価する際には実際のデータと組み合わせたときに良い結果が得られるかという道具的な観点が重要になります。そこで、「リーダーボード」と呼ばれる生成AIの評価結果を一覧化し、ランキング形式で比較する方法を用いることで、非常にシンプルに生成AIの評価を行うことができます。生成AIごとに得意分野が異なるため、一つの生成AIを活用するのではなく、求めている回答ごとに生成AIを使い分けることでより業務効率化につながります。実際に、私がllm-jp-evalというツールを使用し主要な各生成AIの性能を評価した結果をコラムに掲載していますのでぜひご覧ください。
キヤノンITSは、システム開発やアプリケーション構築を通じてビジネスの提供価値を高める取り組みを推進しています。言語処理技術部では長年培ってきた日本語処理技術を生かし、お客さまの「生成AIを利活用し業務を効率化したい」という想いを実現する取り組みを進めてまいりますので、今後もキヤノンITSの活動にご期待ください。
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生成AIの基本的な技術情報をわかりやすく解説し、みなさんがAIとともによりよい未来を築いていくためのヒントを提供します。
今、生成AIの日本語理解能力と性能評価について知っておくことは、生成AIを上手に使いこなすために重要です。生成AIの得意分野や限界を正しく理解することで、ビジネスや生活でより効果的に活用することが可能になります。