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「産業用照明について その2」 [2021.09.30]
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シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第29回)
「産業用照明について その2」 [2021.09.30]

「産業用照明について その2」

前回、第27回「産業用照明について」では、マシンビジョンで利用される産業用照明の光源についてご紹介致しました。今回は、続いて、光の特性と、その特性を利用した照明手法についてご紹介いたします。

光の特性と照明手法

光の特性

図1 光の特性


光は、粒子的特徴をもつ電磁波です。
粒子と波、両方の特性をもち、その特性としては、「①直進」、「②反射・散乱」、「③透過・吸収」、「④屈折」、「⑤干渉」、「⑥偏光」が挙げられます。(図1)

①「直進」は、真っすぐ進む性質ですが、物体が存在すると遮断され、物体形状を示す影ができるため、物体の有無や形状計測などで利用されます。

②「反射・散乱」は、外観検査で最も利用される特性で、反射には、対象物の材質により、正反射(表面反射)と拡散反射(散乱)があります。材質により、反射の状態がかわるため、光の入射方向とカメラの位置と角度を工夫することで、正常時の表面状態と異なるキズや欠陥、付着物や汚れなどをコントラスト高く撮像することができます。


光の反射・錯乱

図2 光の反射・錯乱


鏡面、ガラスなど表面がフラットな材質は、入射角と反射角が等しく、正反射となり、表面に凹凸が多い材質では、入射角と反射角が異なり、拡散反射となります。
カメラを設置する方向としては、正反射を撮像する視野を明視野と呼び、背景に対して異物となるキズや欠陥を暗くとらえる撮像となります。

一方、散乱、拡散反射をとらえる視野を暗視野と呼び、背景に対して異物となるキズや欠陥を明るくとらえる撮像となります。(図2)


特に、明視野では、鏡面素材の場合に、照明自体の映り込みが発生するため、外観検査では、照明の映り込みの発生しない暗視野での撮像が一般的です。 (図3)

しかし、曲面形状の鏡面素材など、どの位置にカメラを設置しても、正反射をとらえる明視野となる場合は、拡散板や偏光フィルタを用いた撮像方法が取り入れられています。(図4)

明視野と暗視野

図3 明視野と暗視野

拡散板・偏光フィルタ

図4 拡散板・偏光フィルタ


透過・吸収

図5 透過・吸収


③「透過・吸収」は、対象の物質や材質の異なり、材質の変化、色の違い、ムラ汚れなどの検出に利用されます。(図5)

④「屈折」は、空気中と水中など物質の違いで光の角度が変わる性質で、遠方の物体をカメラ内部の撮像素子で焦点を結合するカメラのレンズ構造で利用されています。
レンズについては、第26回「産業用レンズについて」で紹介しています。

⑤「干渉」は、表面反射と物質透過後の内部反射との位相差で干渉縞として現れます。干渉縞と物質透過率から膜厚測定に利用されます。
膜厚測定については、第20回「ハイパースペクトルイメージング その3」で紹介しています。

⑥「偏光」は、電場および磁場の振動方向が規則的な光のことで、特定の振動方向に絞り込むことで対象物の平面状態の可視化に利用されています。
偏光技術については、第9回「偏光カメラ その1」第10回「偏光カメラ その2」で紹介しています。

今回のまとめ

産業用途における、高精度要求に対しては、背景と欠陥(キズや汚れなど)をよりコントラスト高く撮影する照明を含めた撮像技術が重要となります。今回は、光の特性とその特性を利用した照明手法についてご紹介しましたが、 次回は、照明手法を用いた照明機器についてご紹介いたします。

 

筆者紹介

シニアアプリケーションスペシャリスト 稲山

稲山 一幸(いねやま かずゆき)

エンジニアリング事業 シニアアプリケーションスペシャリスト

1992年住金制御エンジニアリング入社、Matrox社製品の国内総代理店立ち上げに参画、以降25年マシンビジョン業界に携わる。
2013年~2016年、キヤノン株式会社にてマシンビジョン関連の新製品開発のソフトウェアリーダとして従事。現在は、エバンジェリストとして活躍中。

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