新リース会計基準の概要と改正のポイント、企業に必要な準備と対策を解説トレンド情報
公開日:2024年7月4日
2027年4月に迫る新リース会計基準の全面適用により、企業の財務報告と経営戦略に大きな変革が求められています。
企業では、オペレーティングリースのオンバランス化や損益構造の変化など、改正ポイントの本質を把握し、早期対応が急務となっている状況です。
貸借対照表の資産・負債増加による経営指標への影響を最小限に抑えるためには、システムの改修や契約管理の見直しが必要不可欠です。
そこで今回は新リース会計基準の概要と改正のポイント、企業に必要な準備と対策を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 1.2027年4月に強制適用される新リース会計基準とは?
- 2.リース取引の種類|オペレーティングリースとファイナンスリースの違い
- 3.新リース会計基準が導入される背景と改正のポイント
- 4.新リース会計基準の適用によるオペレーティングリースがオンバランス化される影響4つ
- 5.新リース会計基準の適用による財務諸表への影響
- 6.新リース会計基準への対応で重要となるポイント2つ
- 7.新リース会計導入で企業に必要な準備と対策5つ
- 8.企業が新リース会計に対処する際のポイント4つ
- 9.新リース会計基準への対応にはキヤノンITソリューションズのクラウド会計システム「SuperStream-NX」の導入がおすすめ!
2027年4月に強制適用される新リース会計基準とは?
そもそもリース会計とは、リース取引における会計処理のルールを定めた基準のことです。
新リース会計基準は、リース取引の会計処理を規定する新たな基準で、2027年4月以降に開始する事業年度から強制適用されます。
新リース会計基準とは?
新リース会計基準とは、従来のリース取引に関する会計処理を大きく変更する基準です。
主な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
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✓すべてのリース取引について、原則として貸借対照表に資産及び負債を計上することを求めています。
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✓オペレーティング・リースも含め、収益獲得を目的として利用されているリースを貸借対照表に計上します。
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✓財務諸表利用者のニーズに応え、企業の財務状況をより正確に反映することを目指しています。
適用開始時期と対象企業
新リース会計基準の適用開始時期と対象企業は、次のとおりです。
適用開始時期
新リース会計基準の適用開始時期については、次の強制適用と早期適用(任意)があります。
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✓強制適用:2027年4月1日以降に開始する事業年度の期首から。
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✓早期適用:2025年4月1日以降に開始する事業年度の期首から可能。
対象企業
新リース会計基準の対象企業は、次のとおりです。
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✓上場企業など金融商品取引法が適用される企業(子会社や関連会社を含む)。
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✓会社法上、会計監査人を設置する企業とその子会社。
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✓中小企業については任意適用となります。
国際会計基準との整合性
新リース会計基準は、国際的な会計基準であるIFRSとの整合性を図ることを重視しています。
新リース会計基準を導入する主な目的は、以下のとおりです。
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✓財務諸表間の比較可能性を高めること。
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✓海外投資家が理解できる財務諸表を公開すること。
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✓日本の資本市場及び企業の財務報告に対する信頼性を維持すること。
この改正により、国内の約1400社以上で総資産が増加することが見込まれ、特にリース店舗利用の多い小売業などでは、ROAの悪化が懸念されています。
企業においては、新リース会計基準の適用に向けて、既存のリース契約の全体像把握や財務諸表への影響額試算など、慎重な準備が必要です。
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リース取引の種類オペレーティングリースとファイナンスリースの違い
従来(改正前)のリース会計では、主にオペレーティングリースとファイナンスリースの2つの取引形態を区別し、それぞれの会計処理方法を規定しています。
オペレーティングリースとは?
オペレーティングリースとは、リース期間が短く、中途解約が可能(違約金が発生する可能性あり)なリース取引のことです。
オペレーティングリースは、リース資産と債務が借手の貸借対照表に計上されないのが特徴で、リース料のみが借手の費用として処理されます。
ファイナンスリースとは?
ファイナンスリースとは、リース期間が長く、中途解約不可能なリース取引のことです。
ファイナンスリースでは、リース資産と債務を借手の貸借対照表に計上する必要があります。これにより、リース資産の減価償却費と支払利息が借手の費用となるのが特徴です。
ファイナンスリースは実質的な資産の購入とみなされ、借手の財務諸表にリース資産と負債が計上されるという点において、オペレーティングリースとの大きな違いがあります。
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新リース会計基準が導入される背景と改正のポイント
2027年4月から、リース会計基準が改正される見込みです。
前述したように、現行のリース会計基準では、借手側においてオペレーティングリースとファイナンスリースを区別し、オペレーティングリースについては使用資産とリース負債をオフバランスとする(企業が保有する資産や負債を貸借対照表に計上しない)扱いでした。
新基準の主な変更点は、オペレーティングリースについても使用資産とリース負債をオンバランス(貸借対照表に計上)する必要があるという点です。
これにより、リース取引に関する企業の財務情報の開示がより一層透明性の高いものとなる一方で、借り手となる企業の負債総額が増加するため、財務指標への影響は避けられないでしょう。
改正の背景には、現行基準におけるオフバランス処理への懸念があり、リース取引の実態をより適切に財務諸表に反映させる必要性があるためです。
そこで企業においては、新たな会計処理への対応や影響の分析、必要な準備が求められます。
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新リース会計基準の適用によるオペレーティングリースがオンバランス化される影響4つ
新リース会計基準の適用により、これまでオフバランス処理されていたオペレーティングリースについても、リース資産と負債を計上する必要が生じます。
この変更により、次の4つの影響が考えられます。
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オペレーティングリースの資産と負債が計上されるため、企業の資産・負債残高が増加する。
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資産と負債の増加により、自己資本比率などの財務指標に悪影響が生じる可能性がある。
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オペレーティングリースに関する会計処理が複雑化し、企業の事務負担が増える。
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開示項目が増え、財務情報の透明性が高まる。
企業では、これらの影響を踏まえ、速やかに新基準移行に向けた準備が必要です。例えば、新リース会計基準の導入開始による影響の洗い出しや会計システム対応、リースのポートフォリオの見直しなどが求められるでしょう。
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新リース会計基準の適用による財務諸表への影響
新リース会計基準の適用により、企業の経営指標が変化する可能性があります。以下では、3つの大きなポイントを解説します。
貸借対照表の資産・負債の増加
新リース会計基準の適用により、従来オフバランスだったオペレーティングリースが貸借対照表に計上されます。
これにより、「使用権資産」と「リース負債」が新たに計上され、総資産と総負債が大幅に増加します。特に、不動産リースの多い多店舗展開をしている小売業では、資産と負債が倍増するケースも少なくありません。
この変更は、企業の財務状況をより正確に反映することを目的としていますが、同時に財務指標に大きな影響を与える要素となります。
自己資本比率とROAへの影響
新リース会計基準の適用により、自己資本比率とROA(総資産利益率)に大きな影響が出ます。
具体的には、総資産の増加により、自己資本比率が低下する可能性が高いです。これは、負債の増加が資本の増加を上回るためです。
また、ROAも低下する傾向にあります。これは、分母となる総資産が増加する一方で、分子の利益への影響が限定的であるためです。
これらの指標の低下は、企業の財務健全性や資産効率性の評価に大きな影響を与える可能性があります。
損益計算書の費用構造の変化
新リース会計基準の適用により、損益計算書の費用構造も大きく変化するでしょう。
従来のリース会計基準では、オペレーティングリースの支払リース料は販管費として計上されていましたが、新基準では「減価償却費」と「支払利息」に分けて計上されます。減価償却費は引き続き販管費に含まれますが、支払利息は営業外費用として扱われます。
この変更により、EBITDA(支払利息や税金、減価償却費を差し引く前の利益)や営業利益にプラスの影響がある一方で、リース期間の前半は費用計上額が大きくなる傾向があり、利益の期間配分にも影響を与えるでしょう。
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新リース会計基準への対応で重要となるポイント2つ
新リース会計へ対応する際には、下記の重要となるポイントが挙げられます。
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リース期間の見積りと割引率の算定
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借手と貸手の会計処理に違いが生じること
それぞれ解説します。
リース期間の見積りと割引率の算定
まずは、リース期間の見積りが重要です。解約不能期間に加え、延長オプションを行使する可能性が合理的に確実な場合は、その期間も含めます。
なお、割引率の算定は以下の順序で行います。
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①貸手の計算利子率が分かれば当該利率を使用する
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②貸手の計算利子率が分からない場合は、借手の追加借入利子率を使用する
借手と貸手の会計処理に違いが生じること
新リース会計基準では、借手側の会計処理がファイナンスリース基準に統一されますが、貸手側は従来どおりファイナンスリースとオペレーティングリースに区分されます。
つまり、借手側はすべてのリースについてリース資産とリース負債を計上するのに対し、貸手側はリース形態によって異なる会計処理を行います。この点で借手と貸手の会計処理に違いが生じるのです。
新リース会計導入で企業に必要な準備と対策5つ
企業は新リース会計基準への適切な移行に向けて、次の準備と対策を行う必要があります。
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リースのポートフォリオの洗い出しと影響度の分析
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会計システムと業務プロセスの見直し
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財務指標への影響の検討と対策の立案
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経理・財務部門への教育と研修
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リースポリシーの見直し
それぞれ解説します。
1.リースのポートフォリオの洗い出しと影響度の分析
企業では、全てのリース契約を洗い出し、新基準の適用対象となるものを特定する必要があります。これには不動産賃貸借やレンタル契約も含まれます。
そして、各契約の条件を精査し、使用権資産とリース負債の計上額を試算しましょう。
この分析は、財務諸表への影響を把握し、経営層への報告や今後の対策立案の基礎とするための重要な要素です。
特に、多店舗展開している小売業などでは影響が大きくなる可能性があるため、慎重な分析が必要です。
2.会計システムと業務プロセスの見直し
新リース会計基準に対応するため、既存の会計システムの改修や新システムの導入が必要です。具体的には、使用権資産とリース負債の計算、減価償却費と利息費用の計上、開示資料の作成など、新たな機能が必要となるでしょう。
また、リース契約の管理から会計処理、開示資料作成までの業務プロセスを見直し、効率的かつ正確な処理ができるように再構築しましょう。
これには、IT部門や各事業部門を含めた全社的な取り組みが不可欠です。
3.財務指標への影響の検討と対策の立案
新リース会計基準の適用により、ROA、自己資本比率、EBITDA、営業利益などの主要な財務指標が変化する可能性が高いです。特に、総資産の増加によるROAの低下や、負債の増加による自己資本比率の低下が予想されるでしょう。
一方で、EBITDAや営業利益にはプラスの影響があります。これらの変化が投資家や格付機関の評価に与える影響を分析し、必要に応じて財務戦略の見直しや投資家向け説明資料の準備が必要です。
4.経理・財務部門への教育と研修
新リース会計基準の適用には、経理・財務部門の担当者の理解と適切な対応が不可欠です。
新基準の概要、会計処理の変更点、システムの操作方法、新しい業務プロセスなどについて、体系的な教育と研修を実施しましょう。
また、リースの定義や識別方法の変更に伴い、契約内容の評価能力も求められるため、法務部門と連携した研修も検討する必要があります。
継続的な学習機会を提供し、スムーズな移行と適切な運用を確保することが重要です。
5.リースポリシーの見直し
新基準の適用を機に、企業のリースポリシーの見直しが必要です。
短期リースや少額資産リースの取り扱い、リース期間の判断基準、割引率の設定方法などを明確化し、社内規程として整備しましょう。
また、リースとサービス契約の区分や、リース取引の経済的実質の評価方法についても方針を定める必要があります。
さらに、設備投資の意思決定プロセスにおいて、購入とリースの選択基準を再検討し、財務戦略との整合性を確保しなければなりません。
企業では、このような準備を着実に進め、新基準適用による影響に先手を打つことが重要です。
企業が新リース会計に対処する際のポイント4つ
次に、企業が新リース会計に対処する際の4つのポイントを解説します。
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リースデータの一元管理と精査
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システム対応と社内規程を整備
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経営判断に影響を与える財務データの検証
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新基準適用に向けた体制構築と実務対応
それぞれ解説します。
1.リースデータの一元管理と精査
まずは、全てのリース契約のデータを一元的に収集・管理する体制を構築する必要があります。契約条件を精査し、リース期間の見積りや割引率の設定など、新リース会計基準に沿った会計処理が可能かを確認しましょう。
2.システム対応と社内規程を整備
リース債権債務の計算や仕訳処理に対応できるよう、会計システムの改修や新規導入を検討しましょう。また、リース会計に関する社内規程や運用ルールを新基準に合わせて見直す必要があります。
3.経営判断に影響を与える財務データの検証
新リース会計基準の適用により、資産と負債が計上されるため、財務指標に影響が生じます。そこで、経営判断の材料となる財務データへの影響度を検証し、対応策を立案する必要があります。
4.新基準適用に向けた体制構築と実務対応
経理と財務部門を中心に、新基準への理解を深め実務対応力を高める研修を実施する必要があります。そこで、適用時期に向けたプロジェクト体制を構築し、影響の洗い出しから移行計画の策定、実務対応までを着実に進めましょう。
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