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第9回 AIを活用した人材育成・リスキリングAIを使った人事業務の効率化事例

公開日:2026年10月2日


研修の企画・運営やキャリア開発支援などの人材育成分野および従業員のリスキリングにも、AIが積極的に活用されるようになっています。ここでは、AIが人材育成に活用される要因を説明したうえで、情報サービス業T社の事例を紹介します。

AIが人材育成に活用される要因

近年、人材育成分野(特に従業員のリスキリング)にAIが積極的に活用されるようになっています。
その主な要因は、「AIが普及し、誰でも気軽に使えるようになったこと」ですが、これ以外にも、次のような要因が考えられます。

1.e-Learningやオンライン研修の広がり

従業員がテーマを選択し、時間や場所を選ばずに受講できるe-Learningやオンライン研修が広がっています。これらの研修は、「各従業員が受講したテーマ」、「受講時間」および「知識・スキルの習得レベル(テストの結果)」などのデータを簡単に集計することができます。そのデータをAIで分析し、人材育成に役立てようとする動きが活発になっています。

2.従業員に習得させるべき知識・スキルの変化(リスキリングの必要性の高まり)

「DXに関する知識」や「データ分析スキル」など、新しい知識・スキルを従業員に習得させる必要性が高まっています。従業員に習得させるべき知識・スキルが変化し、リスキリングの必要性が高まる中、会社は、人材育成の方向性を定めるうえで、AIを活用した将来予測を行うことが不可欠になっています。

3.キャリア開発支援の重要性の高まり

人材育成においては、「習得した知識・スキルを活かせる職務を従業員に与えること」や「各従業員に適したキャリアの方向性を会社が示すこと」など、会社によるキャリア開発支援の重要性が高まっています。従業員のキャリア面談などを効果的に実施するために、会社は、AIを積極的に活用するようになっています。

情報サービス業T社の事例

それでは、人材育成分野にAIを活用している情報サービス業T社の事例を紹介しましょう。
T社では、人事情報システムに蓄積された従業員の研修受講歴、職務経験、人事評価などのデータをAIに分析させて、その分析結果を使って、次のような人材育成を行っています。(【図表1】参照)

  • (1)
    AIによるチャットボットが、従業員のキャリア面談を実施する。AIは、面談を受ける従業員の適性やスキルを分析して、キャリアの方向性や受講するべき研修などを客観的な視点で提案する。
  • (2)
    AIが研修受講歴や人事評価などのデータを分析し、会社に対して、各従業員に付与するべき職務について提案する。
  • (3)
    AIが分析した研修受講状況、AIが予測した将来的に必要とされる知識・スキルなどの情報を研修会社と共有し、新たな研修プログラムの開発や従来の研修の見直しなどを実施して、人材育成のスクラップ&ビルドおよび従業員のリスキリングを進める。

T社は、上記のようなAI活用に3年ほど取り組んでいますが、チャットボットによるキャリア面談は従業員の80%が利用し、研修会社からは新しい研修プログラムが毎年提供されるようになっています。人材育成が以前よりも効果的に進められるようになっており、その結果、業務効率化による生産性の向上、従業員の自律的なリスキリングの進行および若年層従業員の定着率の改善などの効果が出てきています。

【図表1】T社が実施している「AIを活用した人材育成」

AIによる人材育成状況の分析・報告

AIに人材育成状況を分析させて、経営層や人事部門に定期的に報告させている会社もあります。
【図表2】は、AIが人材育成状況を分析し、人事部門などにパソコン画面(ダッシュボード)上で報告している事例です。この報告を受けた人事部員等が、「研修時間が減少した要因は?」「IT系の資格保有者数を増やすには何をするべきか?」などの質問をAIに投げかけると、AIはさらに情報を分析して、回答を示してくれます。
「まずは人材育成の現状を把握したい」という会社の場合、AIによる人材育成状況の分析・報告から始めてみると良いでしょう。

【図表2】人材育成状況を分析・報告するダッシュボード(例)

リスキリングの必要性が高まる中、人材育成分野におけるAIの活用は、今後ますます進むものと考えられます。皆さんも、本稿を参考にして、できるところから始めてみてください。

次回のコラムでは、「AIによる従業員アンケートの分析と満足度向上策の提案」の事例について解説します。

著者プロフィール

深瀬勝範(ふかせ かつのり)
Fフロンティア株式会社
代表取締役 人事コンサルタント 社会保険労務士
一橋大学卒業後、大手電機メーカーに入社、その後、金融機関系シンクタンク、上場企業人事部長等を経て独立。
現在、経営コンサルタントとして人事制度設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動などで幅広く活躍中。
主な著書に『はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、7の基本。8つの主な役割』『Excelでできる戦略人事のデータ分析入門』(いずれも労務行政)ほか多数。