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第7回 AIによる労働・社会保険業務の効率化AIを使った人事業務の効率化事例

公開日:2026年8月20日


労働・社会保険に関する届出、申請および問い合わせ対応などは、人事業務の中でも効率化が遅れている分野です。今回は、AIを活用して、それらの業務を効率化している事例を紹介します。

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労働・社会保険に関する申請業務などの効率化

労働・社会保険に関する申請業務としては、次のものが挙げられます。

  • 入社、退職時における被保険者資格の取得、喪失に関する届出
  • 労働・社会保険料の算定と納付業務
  • 労働・社会保険の給付申請に関する業務
  • 労働基準監督署、ハローワークなどへ提出する報告書の作成業務

資本金1億円を超える企業は、これらの届出、報告などの一部を電子申請で行うことが義務付けられていますが、数年後に、電子申請の対象となる企業、業務ともに拡大されると見込まれています。すでに、給与計算システムの中には「労働・社会保険に関わる申請書作成」から「行政への電子申請」までを一括して行う機能が装備されているものもありますが、今後、ほとんどの企業が、このようなシステムを使って労働・社会保険に関する申請業務を行うようになるでしょう。

さて、システム上で(つまり「紙」を使わずに)申請業務を行うようになると、資格取得の届出や給付申請等の場面で行われていた提出書類のチェックは、「人」ではなく、システムに組み込まれた「AI」で実施することになります。具体的には、AIが次のようなチェックを行います。

  • 労働・社会保険の被保険者の要件を満たす短時間労働者から資格取得申請が出されているか。
  • 出産、育児に関する給付(出産手当金、育児休業給付金など)の申請内容と事実に食い違いがないか。
  • 労災保険の給付請求書に労働者が記入した事項に事実誤認がないか。

これらの労働・社会保険に関する申請業務などの効率化は、給与計算システムのプログラム変更などが必要になります。人事担当者としては、システム会社や(自社の労働・社会保険業務を委託している)アウトソーサーなどと相談しながら、これらの業務の効率化やコストダウンを図っていくと良いでしょう。

AIによる労働・社会保険に関する申請業務の効率化

AIによる問い合わせ対応(チャットボットの導入)

人事部門には、従業員から労働・社会保険に関する質問が数多く寄せられるため、担当者は、その対応のために相当な時間や労力を費やしています。近年は、これらの対応にかかる負担を軽減するために、AIを活用したチャットボット(メールや電話による質問などに対して、会話形式で応答するシステム)を導入する会社が出始めています。

これまでも、質問者に対して、システムがあらかじめ準備された回答を伝える形式(シナリオ型)のチャットボットは、顧客対応などの分野で導入されていました。(皆さんも、スマホやアプリの問い合わせをしたときに、チャットボットによる回答を受けたことがあるものと思います。)

シナリオ型のチャットボットは、定型的な質問(例:「製品が動かない」)の回答はできますが、曖昧な質問や個別具体的すぎる質問(例:「私は、これからどうなるのか」)には対応できませんでした。しかし、AIを活用したチャットボット(自動対応型)は、AIが質問者の意図を理解したり、従来の回答を分析したりすることによって、(あらかじめ担当者が回答を準備しなくても、)それぞれの質問に適した対応をすることができます。

労働・社会保険に関する自動対応型チャットボットの例

労働・社会保険に関する質問のほとんどは「曖昧なもの」や「個別具体的なもの」であるため、従来のシナリオ型のチャットボットでは対応できませんでした。新たに開発された自動対応型のチャットボットは、「曖昧な質問」や「個別具体的な質問」であっても、AIがインターネットから情報を収集したり、質問者の状況を確認したりすることにより、人事担当者の手を煩わせることなく、適切な回答をすることができます。

AIを活用したチャットボットでは、従業員から寄せられた質問の傾向を分析することもできます。すでに導入した企業では、チャットボットが、労働・社会保険について従業員が疑問に思っている点を分析し、その結果をもとに、定年間近の従業員の研修を行ったり、福利厚生施策を実施したりしています。

最近は、厚労省のパンフレットや社内の業務マニュアルをAIに読み込ませて、自動対応型のチャットボットを作成するツールも販売されています。人事担当者は、これらのツールを使って、労働・社会保険に関する質問に自動対応するチャットボットを導入し、業務の効率化を図ってみてください。

次回のコラムでは、「AIによる合理的な報酬決定と人件費管理」の事例について解説します。

著者プロフィール

深瀬勝範(ふかせ かつのり)
Fフロンティア株式会社
代表取締役 人事コンサルタント 社会保険労務士
一橋大学卒業後、大手電機メーカーに入社、その後、金融機関系シンクタンク、上場企業人事部長等を経て独立。
現在、経営コンサルタントとして人事制度設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動などで幅広く活躍中。
主な著書に『はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、7の基本。8つの主な役割』『Excelでできる戦略人事のデータ分析入門』(いずれも労務行政)ほか多数。