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経理DXの次なる課題—。デジタルインボイス対応で
実現するバックオフィス業務の変革
Our Challenges 私たちの取り組み

公開日:2025年12月26日

電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が進む中、経理DXの次なる課題として挙げられるのが「デジタルインボイス」への対応です。構造化されたデータによって売り手と買い手のシステム間で請求から支払までの処理を電子化するデジタルインボイスは、経理業務の効率化にとどまらず、企業間取引のデジタル化を大きく加速させます。本記事では、すでに欧州では段階的な義務化が進められ、日本国内でもデジタル庁の主導によって普及が始まっているデジタルインボイスがもたらす価値について解説します。

デジタルインボイス―紙の請求処理を刷新する新たな選択肢

日本の企業社会では依然として、紙の請求書による処理やハンコ(押印)の文化が根強く残っています。ここでは、仕分け、押印、印刷、郵送といった作業が発生し、多くの時間やコスト、人的リソースが消費されます。これらの作業は特に月末月初・期末などに集中し、時間外労働を発生させる要因としても長く指摘され続けています。

紙の書類やPDFによる請求処理には、紛失や二重入力といったリスクも伴います。支払い漏れや誤処理は取引先との信頼問題に直結することに加えて、適格請求書発行事業者番号のチェックも手作業で行う必要があり、経理担当者の負荷は高まる一方です。

さらにリモートワークが浸透し、脱炭素が叫ばれる中、紙、郵送、出社を前提とした業務は時代の要請とは逆行しています。こうした業務がDXの推進やサステナビリティへの対応の足かせになるリスクも否定できません。

電子帳簿保存法やインボイス制度への対応として、すでに広く普及しているPDFの請求書はあくまで画像データに過ぎず、売り手と買い手のシステム間での自動連携や自動処理には対応できません。AI-OCRPDFの文字情報を読み取ることは可能ですが、手書きの請求書や例外的なレイアウトには対応が困難で、どうしても目視確認や手作業が残ってしまいます。電子化はしたものの、業務の本質的な改善、効率化には至っていない―。これが多くの企業が直面している現実です。

ここで注目されるのが「デジタルインボイス」です。デジタルインボイスとは、PDFのような画像データではなく、標準化され構造化されたデータとしての電子インボイスを指します。相手先情報、金額、消費税区分、適格請求書発行事業者番号といった項目ごとにデータが整理されており、売り手と買い手のシステム間で直接連携することが可能です。このように構造化されたデータによる請求処理の自動化が、バックオフィス業務を変革する鍵となるのです。

図1.デジタルインボイスの特長

グローバルで広がるデジタルインボイスの義務化

全世界で普及しつつあるデジタルインボイスの目的は、企業間取引の透明性の確保と税務コンプライアンスのデジタル化にあります。企業間におけるデジタルインボイスのやりとりについては、Peppol(ペポル)と呼ばれるデータ交換プロトコルが国際標準として採用されており、すでに義務化されているイタリア、ドイツなどの企業で実装が進んでいます。

日本においても、デジタル庁の主導でデジタルインボイスの普及が進められています。令和510月のインボイス制度の開始、電子帳簿保存法の改正を背景に、Peppolネットワークでやりとりされるデジタルインボイスの日本の標準仕様として「JP PINT」が策定されました。現在は努力目標の段階ですが、すでに国内の会計システムの主要ベンダーからはJP PINTに対応した機能が提供されるようになっています。

グローバルでビジネスを展開する日本企業にとっては、海外での義務化への対応は待ったなしの状況です。大手企業での導入が進めば、取引先への波及は必然となります。こうしたシステム基盤の整備には一定の時間を要することから、将来の混乱を回避するためにもデジタルインボイスへの対応は早めの準備が必要です。

経理業務の効率化にとどまらないデジタルインボイスの効果

では、デジタルインボイスを導入することで、どのような変化が生まれるのでしょうか。最も大きな変化は、請求データをそのまま会計システムに取り込めることです。構造化されたデータであるデジタルインボイスであれば、相手先情報、金額、消費税区分、適格請求書発行事業者番号といった項目ごとに処理が自動化され、請求書の受領から支払い、入金消込までの一連のプロセスが人の手を介することなく完結できるようになります。また、請求書の検索や管理が容易になり、監査対応がスムーズになる点もメリットです。

月末月初・期末などに集中しがちな経理担当者の業務負荷も大幅に緩和されます。紙の請求書の目視確認、手入力、転記作業やファイリングによる管理は不要になり、請求書の紛失リスクの排除、支払い漏れの防止、適格請求書発行事業者番号の自動チェックによる人的ミスの削減など、請求から支払までの関連業務の負荷軽減と精度向上が同時に実現するのです。

こうした定型業務の自動化によって、経理部門は分析や戦略提案といった付加価値の高い業務に時間や人的リソースをシフトすることができます。これによりデータドリブン経営を支えるパートナーとして、経理部門の役割そのものが大きく変わっていきます。

デジタルインボイスへの対応は、グローバル取引の円滑化においても有効です。国際標準規格のPeppolに準拠することでビジネスの海外展開がスムーズになり、取引先からの要請にもすぐに対応することができます。

企業間取引のデジタル化は、ペーパーレスによる環境への配慮、テレワークの推進といった働き方改革の実現にもつながります。先進的な取り組みとして対外的にアピールすることで、DX推進企業としてのブランディング効果も期待できます。

図2.経理業務の効率化にとどまらない、デジタルインボイスの5つの効果

デジタルインボイス対応を起点に経理DXを加速

こうした将来の変化を見据え、キヤノンITSは長年にわたるバックオフィス支援の実績を活かして、さまざまなサービス開発を進めています。約11,000社の導入実績を誇る会計・人事給与システム「SuperStream-NX」に追加されたデジタルインボイスオプションもその1つです。このデジタルインボイスオプションでは、債権伝票の各項目とJP PINTの各要素を紐づけてデジタルインボイスを自動作成し、Peppolネットワークを介して配信する機能(売り手側)、受領したデジタルインボイスの記載内容に従って支払伝票を自動起票する機能(買い手側)などが提供されます。

SuperStream-NXは、国際標準規格に準拠したJP PINTに対応し、経理業務に特化した最新機能によって法対応と業務効率化を一気通貫でサポートします。すでに導入済みの企業であれば、追加オプションとしてスムーズな導入が可能で、コストも最小化できます。

デジタルインボイスは取引先との連携によって効果を発揮するため、今後の普及拡大が鍵となります。そのため、キヤノンITSはシステム開発だけでなく、SuperStream-NXのユーザー会を通じた先進事例に関する情報共有など、デジタルインボイスの普及支援にも力を入れています。

全世界で義務化が拡大しているデジタルインボイスへの対応は、日本においても必須の経営課題です。またデジタルインボイスは単なる法対応ではなく、経理DXを加速する大きなきっかけにもなります。将来の変化に備えるための準備を、キヤノンITSと一緒にはじめませんか。

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会計・人事給与システム・SuperStream-NX

企業の経営資源を適切に把握し、その計画と管理の中核を担うシステムが、会計システムと人事給与システムです。SuperStream(スーパーストリーム)は、会計システム、固定資産管理システム、人事給与システム、グループ経営管理システムで企業のバックオフィスの最適化を実現します。