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マシンビジョン市場動向・2023年予測(3) [2022.02.22]
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シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第33回)
マシンビジョン市場動向・2023年予測(3) [2022.02.22]

マシンビジョン市場動向・2023年予測

マシンビジョン市場動向について、最後は、技術進化により拡大が期待されるトレンド技術についてご紹介いたします。

技術進化により拡大が期待される市場(国内)

マシンビジョントレンド技術の市場動向(国内)

図1 マシンビジョントレンド技術の市場動向(国内)


技術進化により拡大が期待されるトレンド技術としては、「AI関連ソフトウェア&ハードウェア」、「ロボットビジョン2D/3D」、「ハイパースペクトルカメラ」の3領域が挙げられています(図2)。まず、筆頭の「AI関連ソフトウェア&ハードウェア」については、2017年の2億から2019年の22億円へと11.1倍の実績値で、2023年に向けても、さらに9.5倍の高成長率で212億円市場へ向かうとの予測です。画像AI技術の中心となるCNN(畳み込みニューラルネットワーク)の技術革新を皮切りに、汎用的なライブラリ化、学習時に必要なアノテーションツール、さらには、統合的なプラットフォーム化など、開発者にとって扱いやすい環境が整ってきたことが大きな要因となっています。また、物体認識やポーズ認識などカメラ上でAI処理可能なAIプロセッサ搭載スマートカメラの登場もその理由の一つとなっています。「ロボットビジョン2D/3D」については、しばらく変化なく進んできましたが、2023年に向けては、53億市場と1.5倍の成長見込みとなっています。特にロボティクスにおいて、ロボットアームなど省スペースな領域に取り付けられるカメラで3D物体認識や形状認識などを行いたいといった要望が多く、近年高解像度化が進む3DToF(Time Of Flight)カメラの普及が大きく影響するとの予測です。ToFカメラは、1ショットで物体のデプス情報(深度情報)得られるため、特に2D及び3DToFセンサを搭載したAIスマートカメラでは、省スペースなロボットアームへの搭載も可能となることから、そうしたロボットの目としての活用が進められています。「ハイパースペクトルカメラ」は、光の広波長域を高波長分解能で撮像するカメラで、従来は地球観測、リモートセンシングで利用されてきた技術ですが、物質間の波長差異をもとにした物質分類や定量化、さらには薄膜の厚み計測が行える技術として産業用途への導入が進められています。2023年においても、19億(国内)と、まだまだ規模の小さい領域ですが、1.7倍と高い成長が期待されています。マシンビジョンにおいて撮像技術の重要性は言わずもがなですが、これまでの撮像技術は、可視光をターゲットに撮像の解像度と速度を追求してきましたが、ハイパースペクトルイメージングは、波長域の拡張と波長ごとの強度値の分析に注力することで、見えないものを見る、測れないものを測る技術として注目されています。

AI技術については、コラム「第21回第22回第23回
ハイパースペクトル技術については、コラム「第18回第19回第20回」をご参照ください。

マシンビジョン構成技術の技術トレンド

マシンビジョン構成技術のテクノロジートレンドマップ

図2 マシンビジョン構成技術のテクノロジートレンドマップ


マシンビジョンの構成技術について、2023年に向けた技術動向をご紹介します(図2)。産業用エリアスキャンカメラについては、第31回コラムで示しましたが、解像度は5Mがボリュームゾーンとなり、12Mの高解像度への移行が開始されます。高解像度版については、ベルトコンベア上を流れる製品の外観検査など移動する物体の撮像には、グローバルシャッタータイプが不可欠ですが、静止物などの撮像においては、低コストのローリングシャッタータイプが広がるとの見方です。エリアスキャンカメラより高解像度撮像となるラインスキャンカメラでは、横方向解像度8Kをボリュームゾーンとして進むとの予測です。撮像条件で最も重要となる産業用照明では、引き続き、光の強さと均一性要求の向上が求められ、レンズとイメージセンサについては、画角と解像度の最適化がポイントとなっています。また、イメージセンサについては、CMOSが主流でアナログが終焉し、さらに、AIチップ搭載のセンサの開発が進みます。画像ボードについては、アナログ終焉により、AD変換ボードはラストバイとなりますが、汎用インターフェースとなるGigEVisionやUSB3Visionの普及により、衰退していくとの予測は、高速画像処理対応や伝送距離の拡大ニーズにより、双方を備えたCoaXPress画像ボードの採用拡大により、継続するとの予測となっています。

今回のまとめ

全3回を通じ、マシンビジョンの市場動向についてご紹介致しました。市場領域は、製造業で使用される各種装置や外観検査などを主なターゲットとした画像処理システム市場の範囲となっていますが、特に今回ご紹介した画像AI技術、3Dセンサ技術、ハイパースペクトル技術などのトレンド技術については、クロスインダストリー領域など様々なサービス、市場への利用も大いに考えられます。こんなところへ活用できないか、応用できないかといったご意見、ご相談、アイデアなどございましたら、ご一報いただければ幸いです。

※参考データ:富士経済「2020画像処理システム市場の現状と将来展望」

 

筆者紹介

シニアアプリケーションスペシャリスト 稲山

稲山 一幸(いねやま かずゆき)

エンジニアリング事業 シニアアプリケーションスペシャリスト

1992年住金制御エンジニアリング入社、Matrox社製品の国内総代理店立ち上げに参画、以降25年マシンビジョン業界に携わる。
2013年~2016年、キヤノン株式会社にてマシンビジョン関連の新製品開発のソフトウェアリーダとして従事。現在は、エバンジェリストとして活躍中。

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