シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第19回)ハイパースペクトルイメージング その2 コラム
公開日:2020年4月17日
前回(第18回)では、ハイパースペクトルイメージングの入力部を司るハイパースペクトルカメラ技術について、特に撮像されるデータは、データキューブと呼ばれる多バンド構造となることをご紹介しました。ハイパースペクトルイメージング技術では、そのデータキューブを用い、ソフトウェア処理することで、従来手法では見えなかったものをみえるように、測れなかったものを測れるようにする技術として活用されています。
今回は、光の透過吸収性の違いを利用し、見えないものをみる技術についてご紹介します。
ハイパースペクトル画像処理ソフトウェアについて
光の透過吸収性を活用した処理事例
ハイパースペクトルイメージングでは、光の透過吸収性により反射波長に差異がでることを利用し、素材や表面性状の差異を検出することができます。 例えば、「アボカドのあざ検出と分類」(図3)では、特定波長(本例では700nm付近)に差異があることを利用し、その波長領域の画像をもとに、あざの可視化ができています。「ピーナッツの中身と殻の分類」では、見た目の色が異なるピーナッツの殻・ナッツ・薄皮の分類はもちろん、薄皮の茶色と見た目の色が似ているヘーゼルナッツ(画面右下)も、素材による波長の違いを利用して、明確に分類できます(図4)。
今回のまとめ
今回は、ハイパースペクトルイメージングを活用するためのソフトウェアと、光の透過吸収性による波長差異を利用した画像処理事例をご紹介しました。これまで、一般的なRGBカラーカメラや近赤外線カメラでは、検出できなかった、見えなかったものへの対応が可能であることがわかりました。次回は、ハイパースペクトルイメージングの新たな活用技術として、“測定技術”についてご紹介します。
筆者紹介
稲山 一幸(いねやま かずゆき)エンジニアリング事業 シニアアプリケーションスペシャリスト
1992年住金制御エンジニアリング入社、Matrox社製品の国内総代理店立ち上げに参画、以降25年マシンビジョン業界に携わる。
2013年~2016年、キヤノン株式会社にてマシンビジョン関連の新製品開発のソフトウェアリーダとして従事。現在は、エバンジェリストとして活躍中。
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