オペレーティングリースとは?仕訳方法やメリット・デメリットを解説トレンド情報
公開日:2024年10月15日
オペレーティングリースは、企業の資産管理や経費削減において重要な役割を果たす手法であるため、基本的な仕組みを押さえ、その仕訳方法について理解する必要があります。
また、オペレーティングリースを活用することで得られるメリットと、注意すべきポイントを知っておくことも重要です。
これにより、企業の財務戦略における最適な選択肢を見つけることが可能です。
そこで今回は、オペレーティングリースの概要と、仕訳方法やメリット・デメリットを詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
オペレーティングリースとは?基本的な概念を解説
オペレーティングリースとは、企業が設備や機械などの資産をリース会社から借りて使用する契約形態の一つです。リース期間が終了すると、資産はリース会社に返却されます。
オペレーティングリースの特徴
オペレーティングリースには、大きく次の4つの特徴があります。
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✓所有権が移転しない
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✓リース期間を柔軟に設定できる
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✓費用を標準化できる
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✓節税効果が高い
それぞれ解説します。
所有権が移転しない
オペレーティングリースでは、リース期間中の資産の所有権はリース会社にあり、リース終了後にリース会社に返却される仕組みです。
オペレーティングリースを活用することにより、企業は資産の減価償却や保守管理の負担を軽減できます。
リース期間を柔軟に設定できる
オペレーティングリースは、リース期間が比較的短く、契約内容に応じて柔軟に設定できます。通常、リース期間は資産の耐用年数よりも短く設定されるため、企業は必要な期間だけ資産を利用できます。
オペレーティングリースを活用することで、技術革新スピードが速い分野でも、常に最新の設備を利用することが可能です。
費用を標準化できる
オペレーティングリースを活用することで、資産を購入せずにリース料を支払うだけで済むため、初期投資を抑え、月々の支払いを平準化できます。これは、企業のキャッシュフロー管理を容易にするだけでなく、予算計画を立てやすくするためにも効果的です。
節税効果が高い
リース料は経費として計上できるため、税務上のメリットがあります。オペレーティングリースの活用は、企業の税負担を軽減し、資金を他の重要な投資に回すことを可能にします。
オペレーティングリースは、特に技術革新スピードが速い機器や設備の導入に適しており、企業の資金繰りやキャッシュフローの改善に効果的です。
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オペレーティングリースの基本的な仕訳方法
オペレーティングリースは、賃貸借取引として処理されます。以下に、オペレーティングリースの具体的な仕訳方法を示します。
オペレーティングリースの仕訳方法の具体例
以下では、2024年9月1日にリース会社から備品をオペレーティングリース契約で取引した場合の仕訳例を解説します。
なお、契約については以下の条件とします。
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✓リース形態:オペレーティングリース
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✓リース期間:5年
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✓リース料:年間120,000円、毎年8月末払い(後払い)
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✓決算期:3月末
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✓消費税:別途支払い
上記の場合、仕訳を行う可能性があるタイミングは、主に次の4つです。
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リース契約したタイミング
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翌年の決算のタイミング
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翌年の4月の再振替仕訳のタイミング
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翌年の8月末の営業日のタイミング
それぞれ解説します。
1.リース契約したタイミング
オペレーティングリースは資産計上しないため、契約時の仕訳は行いません。
2.翌年の決算のタイミング
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払リース料 | 70,000※ | 未払費用 | 77,000 |
未払消費税 | 7,000 |
-
※
120,000円/12ヶ月✖️7ヶ月(9月〜3月分)=70,000円
3.翌年の4月の再振替仕訳のタイミング
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払費用 | 77,000 | 支払リース料 | 70,000 |
未払消費税 | 7,000 |
-
※
前月の決算期の洗替の仕訳です。
4.翌年の8月末の営業日のタイミング
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払リース料 | 120,000 | 現預金 | 132,000 |
仮払消費税 | 12,000 |
上記のように、前期分のリース料を3月の決算時に計上していますが、翌4月に洗替を行っているため、8月末の営業日のタイミングで計上します。
また、注意すべきポイントとして、リース料は「未払金」ではなく「未払費用」として計上する必要があります。
-
※
2027年4月からは、特定の企業に対して「新リース会計基準」が強制適用されるため、下記の記事を参考に、上記とは異なる会計処理が必要です。対象となる企業の経理担当者の方は、早めに準備することをおすすめします。
オペレーティングリースを利用する企業のメリット
オペレーティングリースの主なメリットについては、前述の特徴部分で解説しています。そこで以下では、それ以外のメリット3つについて解説します。
競争力を高めることができる
オペレーティングリースを利用することで、企業は最新の設備や技術を導入しやすくなるため、常に最新の技術を活用して競争力を維持・向上させることが可能です。また、リース契約終了後に新しい設備に切り替えることが容易なため、技術革新にも迅速に対応できます。
資金繰りの改善に寄与する
オペレーティングリースは、設備を購入するための大きな初期投資を避けることができるため、企業の資金繰りを改善します。リース料は定期的な支払いとなるため、資金計画が立てやすく、キャッシュフローの安定化にも寄与します。
資産価値の減少リスクを回避できる
オペレーティングリース契約では、設備の所有権がリース会社にあるため、企業は資産価値の減少リスクを回避できます。これは、設備が型遅れとなる陳腐化や、市場価値の低下による損失の回避につながるため、企業の財務リスクの軽減に寄与します。
オペレーティングリースは、特にIT機器や車両など、技術革新スピードが速い分野での利用が一般的です。企業の資金繰りやキャッシュフローの改善に役立つため、多くの企業で採用されています。
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オペレーティングリースのデメリット
オペレーティングリースにはいくつかのデメリットがあります。以下に注意すべきポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
途中解約のリスクがある
オペレーティングリース契約では、契約期間中の途中解約が可能な場合もありますが、実際には難しいのが現実です。なぜなら、途中解約を行うことで違約金が発生するケースが多いために、企業にとって予期せぬコストがかかるリスクがあるからです。
また、リース契約の条件によっては解約が認められない場合もあるため、契約期間中はリース料の支払い義務が続きます。
為替変動リスク
リース料が外国通貨で設定されている場合、為替変動によるリスクが発生します。為替レートの変動により、リース料の支払い額が予想以上に増加する可能性があり、企業の財務計画に影響を与えることもあるでしょう。このリスクを回避するためには、為替ヘッジなどの対策が必要です。
オペレーティングリースでは、これらのデメリットを踏まえた上での検討が大切です。
オペレーティングリースとファイナンスリースの違い
ファイナンスリースとは、リース会社がユーザの代わりに設備や機械などを購入し、ユーザに貸し出すリース方式の一つです。
以下では、オペレーティングリースとファイナンスリースの違いを比較します。
オペレーティングリース | ファイナンスリース | |
---|---|---|
所有権 | リース期間終了後に貸主に返却 | リース期間終了後に借主に移転する場合がある |
リース期間 | 比較的短期(1〜5年程度)が多い | 比較的長期(5〜10年程度)が多い |
解約 | 中途解約が可能(違約金が発生する場合あり) | 中途解約は原則不可 |
会計処理 | 賃貸借契約として処理 | 資産として計上し、減価償却を行う |
コスト | リース料が比較的低い | リース料が高くなる傾向 |
メンテナンス | 原則として貸主が行う | 原則として借主が行う |
利用目的 | 短期利用や技術革新スピードが速い機器に適している | 長期利用や高額な設備に適している |
なお、どちらのリースが適しているかは、企業のニーズや資産の利用目的によります。詳しくは、以下の記事をご参照ください。
オペレーティングリースの活用事例成功事例と失敗事例
次に、オペレーティングリースの活用に成功した事例と失敗した事例をそれぞれ紹介します。
IT業界がオペレーティングリースの活用に成功した事例
大手IT企業は、最新のサーバーやネットワーク機器をオペレーティングリースで導入しました。技術の進歩が早いIT業界では、短期間での機器更新が必要ですが、リースを利用することでコストを抑えつつ最新技術を活用することができました。
航空業界がオペレーティングリースの活用に成功した事例
ある航空会社は、新しい航空機を購入する代わりにオペレーティングリースを利用したことによって初期投資を大幅に削減し、最新の航空機を導入することができました。結果として、運航効率が向上し、顧客満足度も高まりました。
物流業界がオペレーティングリースの活用に失敗した事例
ある物流会社は、新しいトラックをオペレーティングリースで導入しましたが、リース契約には定期メンテナンス費用や保険料が含まれておらず、これらの追加費用が予算を大幅に超えてしまいました。また、使用距離の制限を超過したため、追加料金が発生し、最終的にはキャッシュフローが厳しくなりました。
これらの事例から、オペレーティングリースを利用する際には、契約内容を十分に確認し、追加費用やリスクを考慮することが重要であることがわかります。
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オペレーティングリースを導入する際の注意点と対策
オペレーティングリースを導入する際には、リース期間を適切に設定し、技術の進歩や市場の変動に対応できるようにすることが重要です。
ただし、リース料だけでなく、メンテナンス費用や保険料などの追加費用も含めた総コストを計算し、購入と比較してから契約するようにしましょう。
また、海外の企業などからドル建てのリース契約を行う場合には、為替リスクをヘッジするために、為替予約やデリバティブを活用するのがおすすめです。これにより、企業は為替リスクを管理し、安定した経営を維持できます。
上記のポイントを踏まえ、契約内容を詳細に確認し、不明点や不利な条件があればリース会社と交渉することが重要です。これらの対策を講じることで、リスクを最小限に抑えつつ、効果的に資産を活用できるでしょう。
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オペレーティングリースのまとめ
上記のように、リース契約にはオペレーティングリースとファイナンスリースがあります。リース契約では、リースする資産の特徴などによって適切に使い分け、適切な会計処理を行うことが重要です。
ただし、2027年4月から強制適用される「新リース会計基準」によって、リース契約のメリットが大きく変わる可能性があるため、十分な調査と分析を行う必要があります。
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