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リース会計基準のわかりにくい言葉第3回:~「使用方法」ってどういう意味?~公認会計士 中田清穂のIFRS徹底解説



新リース会計基準は、とても難しい会計基準です。
難しくしている原因の一つが、用語の難しさです。
本コラムでは、難しいと思われる用語をいくつか取り上げて、解説をしています。

今回は、「使用方法」という用語です。

この言葉は、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下、「適用指針」)の第8項の「使用を指図する権利」で使われています。

顧客は、次の(1)又は(2)のいずれかの場合にのみ、使用期間全体を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有している([設例1]、[設例5]及び[設例6])。

  • (1)
    顧客が使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を有している場合
  • (2)
    使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前になされており、かつ、次の①又は②のいずれかである場合
    • 使用期間全体を通じて顧客のみが、資産を稼働する権利を有している又は第三者に指図することにより資産を稼働させる権利を有している。
    • 顧客が使用期間全体を通じた資産の使用方法を事前に決定するように、資産を設計している。

この適用指針の第8項は、契約にリースが含まれるかどうかを識別する際に、とても重要な条文です。
しかし、「使用方法」について具体的な内容がわからないと、リースの識別は適切にはできません。

日本の新リース会計基準には、「使用方法」について具体的な説明はありません。
しかし、日本の新リース会計基準の元になったIFRS第16号には、少しわかりやすい例示があります。
IFRS第16号B26項です。

状況に応じて、定められた顧客の使用権の範囲内で資産の使用方法及び使用目的を変更する権利を与える意思決定権の例として、下記のものがある。

  • (a)
    当該資産によって産出されるアウトプットの種類を変更する権利
    (例えば、船積用コンテナを物品の輸送に使用するのか保管に使用するのかを決定する権利や、小売りスペースで販売する製品の構成を決定する権利)
  • (b)
    アウトプットが産出される時期を変更する権利
    (例えば、機械や発電所をいつ使用するのかを決定する権利)
  • (c)
    アウトプットが産出される場所を変更する権利
    (例えば、トラック又は船の目的地を決定する権利や、設備をどこで使用するのかを決定する権利)
  • (d)
    アウトプットを産出するのかどうか及び当該アウトプットの数量を変更する権利
    (例えば、発電所からエネルギーを産出するかどうかや、当該発電所からどれだけのエネルギーを産出するのかを決定する権利)

使用方法」について、このような例示があれば、リースの識別も間違いにくいですね。

(a)は、「アウトプットの種類」です。
カッコ内の例を補足すると、コンテナを「貨物船に乗せる」という「使用方法」で借りたけれども、「倉庫用のコンテナとして使う」という「使用方法」に変更できるかどうか、ということです。
もう一つの例は、小売りスペースを「製品Aを販売する」という「使用方法」で借りたけれども、「製品Bを販売する」という「使用方法」に変更できるかどうか、ということです。
いずれも、顧客(借主)が自由に変えられるのであれば、リースを含むということになります。

(b)は、「アウトプットが産出される時期」です。
例として、「機械や発電所をいつ使用するのか」という例が示されています。
もう少しイメージしやすくすると、「機械を午前中に使う」という「使用方法」で借りたけれども、「機械を18時まで使う」という「使用方法」に変更できるかどうか、ということです。

(c)は、「アウトプットが産出される場所」です。
例として、「トラック又は船の目的地」という例が示されています。
もう少しイメージしやすくすると、「トラックを関東地方で使う」という「使用方法」で借りたけれども、「トラックを関東及び東北地方で使う」という「使用方法」に変更できるかどうか、ということです。

(d)は、「アウトプットを産出するのかどうか及び当該アウトプットの数量」です。
例として、「発電所からエネルギーを産出するかどうかや、当該発電所からどれだけのエネルギーを産出するのか」という例が示されています。
こちらの例は、イメージしやすいので、特に補足する必要はないと思います。

上述したように、IFRS第16号B26項で表現されているような、具体的な例示は、新リース会計基準にはありません。
新リース会計基準はIFRS第16号をベースに作られたのに、どうしてIFRS第16号に記載されている、わかりやすい例示を取り入れなかったのでしょうか。
この点について、適用指針に以下のような説明があります。適用指針のBC13項です。

顧客が使用期間全体を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有しているか否かの判断を行うにあたっては、使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る意思決定を考慮する。

当該意思決定は、資産の性質及び契約の条件に応じて、契約によって異なると考えられる。
当該意思決定に関して、IFRS第16号では具体的な例示があるが、本適用指針に当該例示を取り入れないこととした。

これは、IFRS第16号の基準の本文では、資産の使用方法及び使用目的に係る意思決定は資産の性質及び契約の条件に応じて、契約によって異なる可能性が高いと定められているのに対し、これらの例示を示すことで資産の使用方法及び使用目的が限定的に解釈される可能性があるためである。(太字筆者)

つまり、例示してしまうと、「使用方法」が、例で示された4つしかなく、それ以外のものは「使用方法」ではないと解釈されない恐れがあるから、IFRSにはあるけれども、日本の基準としてはなくしてしまったということです。

理解しがたい論理です。

「限定列挙」ではないことは、「例示列挙である」という表現で基準や適用指針を作れば済む話です。
それよりも、「使用方法」がわかりにくくなり、リースの識別が不適切になり、会計処理を間違うリスクの方が、よほど重大だと思います。

今回は、「使用方法」を理解する目的で解説しましたが、ここでもう一つ気づけることは、IFRS第16号には、日本の新リース会計基準には記載されていない、例示やガイダンス的な説明がいろいろあるんだ、ということです。

したがって、皆さんが「この基準や適用指針はわかりにくいな」と感じたら、ぜひIFRS第16号を参考にしてみてください。

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。