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新リース会計基準対応を生成AIで乗り切る
​第3回:生成AIに「重要性の判断規準」について聞いてみよう!
公認会計士 中田清穂のインボイス制度と電子帳簿保存法の解説講座


今回は、「重要性の判断規準」について、生成AI(Copilot)に聞いてみます。

中田:新リース会計基準における「重要性の判断規準」について説明してください。

Copilot:新リース会計基準では、「重要性の判断規準」に基づき、一定の条件を満たすリース取引について簡便的な会計処理が認められます。特に、使用権資産の金額的重要性が乏しい場合に適用可能です。
以下に、新リース会計基準における重要性の判断規準の概要を整理します。

重要性の判断規準の概要

新リース会計基準(企業会計基準第34号および適用指針第33号)では、すべてのリースを原則オンバランス処理することが求められますが、「重要性が乏しい」と判断される場合には、簡便的な処理が認められます。

金額的重要性の判断
  • 未経過リース料の期末残高が、当該期末における有形固定資産および無形固定資産の合計額の10%未満である場合、「重要性が乏しい」と判断されます。
  • この判定には、無形固定資産リースも含めることが可能であり、分母が増えることで10%未満の基準を満たしやすくなります。
質的重要性の判断
  • 金額が小さくても、業務上重要な資産(例:基幹システム、主要設備)であれば、質的重要性が高いと判断され、簡便処理は認められません。
  • 逆に、業務に与える影響が軽微な資産(例:コピー機、備品)であれば、簡便処理が可能です。
簡便的な処理方法
重要性が乏しいと判断された場合、以下の処理が認められます:
  • 利子込法:利息相当額を控除せず、リース料全額を費用処理
  • 定額法:利息相当額を定額で配分
実務上の留意点
  • 重要性の判定は期末時点での残高ベースで行うため、リース契約の更新や新規契約により判定結果が変動する可能性があります。
  • 一度「重要性が乏しい」として簡便処理を採用した場合でも、重要性が高まった時点で利息法への変更が必要になることがあります。
実務対応のポイント
  • 定期的な重要性判定の見直しが必要です。
  • 無形固定資産リースの任意適用を活用することで、分母を増やし簡便処理の適用可能性を高めることができます。
  • 業種や企業規模に応じた判断が求められ、特に中小企業では実務負担とのバランスが重要です。

私の聞き方が不適切でしたね。
この回答内容は、リースの識別で「リースを含む」と判断した後、資産・負債計上することを前提としていますね。 ​

すなわち、「リースを含む」と判断しても、金額的重要性がないので資産・負債計上するのではなく、費用処理するための規準を聞かなくてはなりませんでした。

そこで、追加の質問をしてみます。

中田:ありがとうございます。
​一契約の支払リース料総額が、300万円を超えても、重要性がないと判断して、簡便的な処理として、資産・負債計上せず、費用処理することはできますか?

Copilot:はい、リース料総額が300万円を超えていても、「重要性が乏しい」と合理的に判断できる場合には、資産・負債を計上せず、費用処理(簡便的な処理)を行うことが可能です。ただし、300万円超は原則として重要性があるとみなされるため、慎重な判断と文書化が必要です。

300万円基準の位置づけと実務的な扱い
300万円基準とは

企業会計基準適用指針第16号35項において、以下のいずれかに該当する場合、「重要性が乏しい」として簡便処理が認められます:

  • 減価償却資産の費用処理基準額以下(例:20万円以下)のリース資産
  • リース期間が1年以内
  • リース料総額が300万円以下で、かつ企業の事業内容に照らして重要性が乏しいと認められるもの

300万円超でも簡便処理できるか?
300万円はあくまで目安であり、絶対的な上限ではありません。​
したがって、300万円を超える場合でも、企業の資産規模や業務への影響を踏まえ、「重要性が乏しい」と合理的に判断できる場合には、簡便処理が可能です。
ただし、監査人との協議や社内の会計方針の整備が不可欠です。​

実務上の留意点
300万円超の契約について簡便処理を適用する場合は、以下のような対応が望まれます:

判断根拠の明確化と文書化(例:全体の固定資産に占める割合、業務への影響の軽微性)

  • 監査法人との事前協議
  • 社内会計方針への明記(例:「当社では、リース料総額が500万円以下で、かつ業務上重要性が乏しいと判断されるリースについては簡便処理を適用する」など)
清穂さんへの補足

清穂さんのように、IFRSや日本基準の実務的な整合性を重視される立場では、IFRS 16の「low-value asset」基準(5,000米ドル以下)との整合性を意識した社内基準の策定も有効です。
特にR&Dやソフトウエア関連のリースでは、金額は大きくとも、使用頻度や代替可能性、業務への影響を踏まえて質的重要性が乏しいと判断できるケースもあります。​

結論

300万円超のリース契約でも、金額的・質的に重要性が乏しいと合理的に判断できる場合には、簡便処理(費用処理)が可能です。ただし、判断根拠の明確化と監査対応が重要です。

まず、「リース料総額が300万円を超えていても、「重要性が乏しい」と合理的に判断できる場合には、資産・負債を計上せず、費用処理(簡便的な処理)を行うことが可能」と答えていますが、こういった表現の明確な条文は、新リース会計基準にはありません。
また、「300万円超は原則として重要性があるとみなされる」という規定もありません。
企業会計基準適用指針第16号35項において」と言っているあたり、現行基準と混同しているように見受けられます。

このあたりが生成AIの不正確なところかなと思います。

「300万円」という言葉は、新リース会計基準や適用指針の本文にはないのですが、適用指針の「結論の背景」のBC41項からBC43項までの規定で触れられています。

特にBC41項が重要だと思われるので、以下に抜粋します。

企業会計基準適用指針第16号では、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリースについて、簡便的な取扱いを認めていた。
​一方、IFRS第16号の結論の根拠では、IFRS第16号の開発当時の2015年において新品時に5千米ドル以下程度の価値の原資産を念頭に置いて、リース1件ごとに簡便的な取扱いを選択適用することができるとの考え方が示されている。
​企業会計基準適用指針第16号における300万円以下のリースに関する簡便的な取扱いと、IFRS第16号における簡便的な取扱いを比較した場合、適用単位の定め方、数値及び条件が異なるため、どちらの取扱いが広範であるかは一概にはいえないと考えられる。
​企業会計基準適用指針第16号における300万円以下のリースに関する簡便的な取扱いを適用している企業においては、これを継続することを認めることにより、追加的な負担を減らすことができると考えられる。
​方、IFRS任意適用企業においては、IFRS第16号における簡便的な取扱いを認めることにより、「IFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となる」ことを目指す方針(会計基準BC13項)と整合することになると考えられる。
​このように、これらの簡便的な取扱いについては優劣がつけがたいと考えられる。

この条文をわかりやすく説明すると以下になります。

  • 現行基準では、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリースは重要性が乏しいとして、簡便的な処理を認めている。
  • IFRS第16号では、新品時に5千米ドル以下程度の価値の原資産を念頭に置いて、リース1件ごとに簡便的な取扱いを認めている。
  • 両者は、判断をする際の単位が「リース契約1件当たり」(現行日本基準)と「リース1件ごと」(IFRS第16号)ということで異なっていて、単純にどちらがいいのか判断することは難しい。
  • いずれにしても、現行基準で300万円ルールにより重要性の判断をしている企業にとっては、新リース会計基準でも、300万円以下は重要性が乏しいことを認めてあげると、新リース会計基準を適用する際の負担が増えることはない。

ここでわかることは、「300万円超は原則として重要性があるとみなされる」という規定ではないということです。
あくまでも、「300万円以下は引き続き重要性が乏しい」という取り扱いをしても良いですよ、ということです。

では300万円を超える場合はどうでしょう。
​これについても明確な規定はありません。

ただし、適用指針第22項の本文の表現は以下です。

(前略)

(2)次の①又は②を満たすリース
​①企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース

(後略)

この条文で、私が重要だと思うのは、本文には「300万円」という明確に金額が示されておらず、「リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しい」という表現でしかないということです。

各企業にとっていくらが重要なのかは、その企業の資産総額や売上高などの金額的な大きさによって異なるでしょう。
​したがって、各企業にとっていくらが重要なのかは、各企業が決めるべきで、会計基準が一律に決めるべきではないという考え方になっていると思います。
​これは、IFRSの概念フレームワークに明記されている考え方です。

今回の新リース会計基準は、IFRS第16号の影響を非常に強く受けているので、重要性の考え方についても、IFRSの概念フレームワークの考え方に基づいていると思います。

IFRSの概念フレームワークに基づいているとは言わないまでも、日本にも「企業会計原則」の「重要性規準」があるので、矛盾しません。

さらに、収益認識基準の第101項に、以下の条文があります。

なお、他の会計基準と同様に、重要性が乏しい取引には、本会計基準を適用しないことができる。

これは収益認識基準の条文ですが、重要なポイントは、
他の会計基準と同様に」という部分です。

したがって、皆さんの会社にとって重要性が乏しい取引については、新リース会計基準を適用しないことができるのです。

そして、最後の疑問として残るのが、
​「では、わが社にとって重要性のある金額というのは、いくら以上なのか」
​ということでしょう。

これにはいろいろな考え方や設定の仕方があると思います。
​一つの考え方として、私は以下のような提案をしています。

皆さんの会社には、経営意思決定機関があると思います。
取締役会や役員会、常務会、戦略経営会議などです。
そういった会議のために作成されている資料の金額の単位を確認してください。
それが億円単位だったら、その会社の金額的な重要性を1億円にできると思います。
なぜなら、1億円未満は意思決定資料に反映されず、経営意思決定においては重要ではないということだからです。
また、役員会資料などは細かい単位で作成されていても、役員などの会議の参加者の重要な発言が、億円単位であれば、やはり、その会社の金額的な重要性を1億円にできると思います。

いかがでしょうか。
​ご参考になれば幸いです。

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著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。