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第1回:キャッシュ・フロー計算書(CF計算書)の意味と役割~「黒字倒産」の恐怖とどう向き合うか~知っておきたいキャッシュ・フローの基礎知識


今月から全6回にわたり、「知っておきたいキャッシュ・フローの基礎知識」と題したシリーズをお届けします。
多くの経営者にとって、「利益は出ているはずなのに、なぜか手元にお金がない」という感覚は、決して他人事ではないはずです。決算書を見ると黒字が続いているのに、資金繰りだけがどんどん苦しくなっていく。こうした違和感の正体を理解するための鍵が、今回のシリーズで扱う「キャッシュ・フロー計算書(CF計算書)」です。
CF計算書と聞くと、専門用語が並ぶ難解な資料という印象を持たれる方も多いのですが、仕組みさえ理解してしまえばそれほど複雑なものではありません。むしろ、会社の健康状態を映し出す、非常に頼りになる「健康診断書」のような資料です。
第1回となる今回は、シリーズ全体の土台として、CF計算書がそもそも何のために存在するのかという「意味と役割」を概観していきます。

1.「利益」=「現金」ではない

経理や財務の世界には、「黒字倒産」という言葉があります。損益計算書(P/L;Profit and Loss statement)上は利益が出ているにもかかわらず、手元の現金が底をつき、会社が立ち行かなくなってしまう現象のことです。これは決して珍しい話ではなく、むしろ受注が伸び、業績が上向いている成長期の会社が陥りやすい落とし穴として知られています。
なぜこのようなことが起きるのか。答えはシンプルで、「利益」と「現金」は決してイコールではないからです。利益は商売の成果を表す指標であるのに対して、現金は事業を維持するための血液であり、キャッシュ・フローは企業内を循環する血液の流れと考えられるのですね。
このように利益とキャッシュが異なる性質を持っている以上、両者がずれる要因にはさまざまありますが、まずは重要なものとして次の4つを知っておきましょう。

一つ目は、売上を計上しても代金の入金が遅れている「売掛金」の存在です。会計上は売上として利益に計上されていても、実際に現金が口座に入ってくるのはずっと先、というケースは珍しくありません。

二つ目は、将来の販売に備えて仕入れた在庫(棚卸資産)を必要以上に抱えてしまうケースです。在庫はまだ販売されていない限り費用にはならず、それでいて仕入れの支払いという形で現金は先に出ていってしまいます。

三つ目は、設備投資による支出です。建物や土地、備品を買った場合、それらの支出は直ちに損益計算書の費用とはならないため、利益を減少させません。このような原因によっても、利益が現金の増加とイコールにならなくなります。

そして、四つ目が借入金の元本返済です。これも会計上の費用には計上されませんが、現金は確実に減っていきます。

損益計算書だけを眺めていても、こうした資金繰りの実態は決して見えてきません。経営の「真実」は、利益という「商売の成果にかかわる数字」だけを見るのではなく、キャッシュという「事業を継続するための血液循環にかかわる動き」にも着目することで、より鮮明に現れてくるのです。

2.財務三表の連携:P/LとB/Sをつなぐ「架け橋」としてのCF計算書

私はよく、損益計算書(P/L)は「会社の資産がどれくらい増えたかのフローを表す経営成績表」、貸借対照表(B/S)は「資産と負債のストックを表す財産明細表」のように表現して、お話ししています。
しかし、この二つだけでは、会社の実態を限定的にしか表現できません。利益によって資産が増加したとしても、資産には企業の血液ともいえる現金(キャッシュ)以外のものも含まれているからです。たとえば、売掛金・商品在庫・固定資産などですね。

そこで登場するのが、CF計算書です。CF計算書は、期首から期末にかけて「現金」がなぜ、どのようにして増減したのかという「プロセス」を、B/Sの情報を補いながらP/Lの収支や利益を調整する形で説明してくれます。P/LとB/Sの情報を補完して、資金の流れという視点から両者をつなげてくれる存在です。
三表を切り離して眺めるのではなく、一体として読み解くことで初めて、経営の実態を立体的に、かつ動きのあるものとして捉えることができます。CF計算書は、まさにP/LとB/Sをつなぐ「架け橋」なのです。

3.CFの三区分:お金の「出所」と「使い道」

CF計算書は、現金の「出所」と「使い道」を明らかにするために、大きく3つの区分から構成されています。

一つ目は「営業活動によるキャッシュ・フロー」です。これは、本業の営業活動によってどれだけ現金を稼ぎ出したかを示す区分で、ここがプラスであることが健全な会社であるための基本条件といえます。

二つ目は「投資活動によるキャッシュ・フロー」で、将来の成長のために設備投資や有価証券の取得などにいくら資金を投じたかを表します。積極的に投資を行う成長期の企業ほど、この区分はマイナスになりやすい傾向があります。

三つ目は「財務活動によるキャッシュ・フロー」で、金融機関からの借入や返済、株主への配当の支払いなど、資金をどのように調達し、どのように返済したかを示す区分です。
具体的な数字で見てみましょう。

①営業活動によるCF 200
②投資活動によるCF ▲230
③財務活動によるCF 220
資金の増減(①+②+③) 190
期首資金残高 1,000
期末資金残高 1,190

仮に営業活動CFが200、投資活動CFがマイナス230、財務活動CFが220だったとすると、3つを合計して現金は差し引き190増加し、期首の資金残高が1,000であれば、期末の資金残高は1,190になる、という形で読み解いていきます。

理想的な資金の流れは、本業で稼いだ範囲内(営業CFがプラス)で設備投資などを行い、その上で借入金の返済も着実に進めていける状態です。この3区分のバランスを見るだけで、その会社の資金が今どのようなフェーズにあるのか、経営の体力がどの程度あるのかが浮かび上がってきます。
こうした見方は、経営者自身が自社の状態を把握するためだけでなく、金融機関や投資家が会社を評価する際にも重視されています。営業CFがマイナスの状態が続いているにもかかわらず、財務CFのプラス、つまり借入によって何とか資金を回している会社があれば、それは黄色信号と見るべきでしょう。

逆に、営業CFで着実に稼ぎながら、必要な投資を行い、無理のない範囲で借入を返済している会社は、外部から見ても安心感のある経営をしているといえます。CF計算書の三区分は、こうした会社の「体質」を読み解くための共通言語なのです。

以上が、CF計算書の意味と役割、そしてP/L・B/Sとの連携、さらにはCFの3区分に関する概略の知識ですが、次回以降では、さらにこれらの内容を掘り下げて、会計知識に自信がない方にもわかるように、かみ砕いてお話ししていきたいと思います。

バナー画像:ホワイトペーパー・基礎から学ぶ決算書~営業利益と経常利益で会社の経営状況が分かる!~(資料ダウンロードはこちら) 柴山政行(しばやま まさゆき) 公認会計士・税理士 柴山会計ラーニング株式会社代表 公認会計士税理士事務所所長

著者プロフィール

柴山政行(しばやま まさゆき)
公認会計士・税理士
柴山会計ラーニング株式会社代表 公認会計士税理士事務所所長
公認会計士・税理士としての業務のほか、経営者や税理士向けにコンサルティング指導、メルマガ・インターネットを中心とした簿記・会計教材の製作、会計関連の講演やセミナーなど、多岐にわたって精力的に行っている。また、小中学生から始められる簿記・会計教育「キッズ★BOKI」のメソッドを開発し、その普及に力を注いでいる。