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クラウドを活用したバックオフィスDXとはバックオフィスDX

公開日:2025年12月5日


人手不足や経済社会のデジタル化により、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます。特に、経理や人事といった「バックオフィス」部門の変革は、会社全体の生産性に直結する重要なテーマです。
しかし、「何から手をつければ良いか分からない」、「ツールを導入したが効果が出ない」といった悩みも少なくありません。
本記事では、バックオフィスDXの鍵を握る「クラウド」に着目し、その基礎知識からDXの本来の目的、そして成功への具体的な進め方までを解説します。

目次

そもそも「クラウド」とは?オンプレミスとの違いとメリット

クラウドとは、従来は自社内のサーバーにインストールしていたソフトウエアやデータを、インターネット経由で「サービス」として利用する形態を指します。
これに対し、自社内にサーバー機器を設置し、ソフトウエアをインストールして自社で運用・管理する形態を「オンプレミス」と呼びます。クラウドとオンプレミスの比較は下記の通りです。​

図:オンプレミス型とクラウド型の比較

バックオフィス業務におけるクラウド活用

このような特徴・メリットのあるクラウドは、定型業務が多く、法改正への対応も頻繁に発生するバックオフィス業務と非常に相性が良いと言えます。

  • 経理部門

    銀行口座やクレジットカード連携による仕訳自動化、スマホでの経費申請・承認、請求書の電子発行・受領により、入力作業と紙の取り扱いを大幅に削減します。

  • 人事労務部門

    スマホやICカードでの打刻データを基に、残業や給与を自動計算、Web給与明細の発行で、集計や印刷・配布の手間を削減します。また、従業員情報の一元管理、入退社手続きの電子化、雇用契約書の電子締結により、ペーパーレス化と業務スピードを向上させます。

これらの導入により、「手入力の削減」、「紙の削減」、「業務プロセスの標準化」が実現し、バックオフィス業務の生産性は飛躍的に向上します。

DXの本質:「効率化」の先にあるもの

バックオフィス業務にクラウドを導入し、業務が効率化された。これで「DX完了」と満足していないでしょうか?
ここで、DXの本質について改めて考えてみましょう。経済産業省はDXを「企業が(中略)データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
​重要なのは、単なる「IT化」や「業務効率化」に留まらない点です。DXは以下の3つのステップで整理されます。

  • デジタイゼーション(Digitization):

    アナログ・紙の情報のデジタル化(例:紙の書類をデジタルデータ化する)

  • デジタライゼーション(Digitalization):

    個別の業務プロセスのデジタル化(例:クラウド会計システムを導入する)

  • デジタルトランスフォーメーション(DX):

    デジタル技術を前提に、ビジネスモデルや組織全体を根本的に変革し、新たな価値を生み出し、競争優位性を確立すること。

クラウドを導入して業務効率化を実現すること(デジタライゼーション)は、DXを達成するための「手段」または「前提」に過ぎません。DXの本質は、その先にある「変革」と「競争優位性の確立」にあります。

バックオフィスDXの本質と、成功への進め方

では、バックオフィスにおけるDXの本質とは何でしょうか。
​それは、「ルーティンワークを徹底的に効率化・自動化し、それによって創出されたリソース(人材や時間)を、経営者の意思決定に資する情報提供や、より付加価値の高い戦略的な業務へと振り向けること」です。
​単に業務を楽にするのではなく、バックオフィスが持つデータを経営資源として活用し、企業の成長に貢献する「攻めのバックオフィス」へと変革することこそが、バックオフィスDXの本質です。
​この「攻めのバックオフィス」を実現するためのDXの進め方を、DXの3つのステップに沿って整理します。

ステップ1:デジタイゼーション

アナログ業務のデジタル化

まずは請求書や領収書、契約書など、紙で管理・運用されている情報を、システム導入などによりデジタルデータで取り扱えるようにすることから着手します。

ステップ2:デジタライゼーション

業務プロセスの変革

DX推進の中核です。クラウド会計や勤怠管理システムなどを活用し、個別の業務プロセスをデジタル化します。ポイントは導入した各クラウドサービスを連携し、業務を効率化すること、そしてデータを一元管理することです。

ステップ3:デジタルトランスフォーメーション

データ活用による価値創出

デジタライゼーションで業務の効率化・データの一元管理が実現したら、いよいよ「変革」のフェーズです。データを分析し、「コスト超過の原因」、「離職率の傾向」といったインサイト(洞察)を導き出し、経営層や事業部へ具体的な改善を促します。バックオフィスがデータに基づき経営を支援する「戦略的パートナー」へと進化することこそが、バックオフィスDXのゴールです。

バックオフィスDX成功のポイント

これらの3つのステップを確実に進めるためには、以下のポイントが重要です。

業務プロセスの見直し(=BPR)が成否を分ける

高機能なクラウドを導入しても、古い業務プロセス(紙への押印、不要な二重チェックなど)を温存したままでは効果は半減します。業務プロセスの見直しにあたっては、「システムに合わせて業務を変える」という視点も効果的です。

小さく始めること(=スモールスタート)

最初から全社・全部門で完璧なDXを目指すと、現場の抵抗が大きく、計画が頓挫しがちです。まずは「ワークフロー」、「勤怠管理」など、課題が明確で効果が出やすい領域から小さく始め、成功体験を積み重ねながら横展開していく方が確実です。

データの一元的な管理との分析・活用

ツールを「導入して終わり」にせず、各システムに蓄積されるデータをいかに連携・一元管理し、次のアクション(分析・提案)に繋げられるかが重要です。「データ活用」というゴールを見失わないことが、DXを「効率化」で終わらせないための鍵となります。

クラウドを活用したバックオフィスDXは、単なる業務効率化やコスト削減の手段ではありません。定型的なルーティンワークからバックオフィス部門を解放し、データを分析・活用して経営の意思決定を支援する「戦略的パートナー」へと進化させるための、重要な経営戦略です。
​本記事で紹介したステップやポイントを参考に、ぜひ「攻めのバックオフィス」への変革に向けた第一歩を踏み出してください。

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著者プロフィール

辻・本郷 税理士法人 ロゴ画像

辻󠄀・本郷 税理士法人
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