DXの主戦場はバックオフィスにあり!グンゼが挑む財務・経理変革と「ミニCFO」の育成Butterfly Effect Archives 共想共創の歩み
公開日:2026年4月1日

経営を取り巻く環境が加速度的に変化する中、企業の財務経理部門の役割もまた、大きな転換点を迎えています。
創業から130年という歴史を紡いできたグンゼは今、財務や経理を起点としたDXの推進によって、経営の在り方そのものを再構築する抜本的改革を進めようとしています。従来の正確さと統制を重んじる“守り”の会計から、データを駆使し意思決定を導く“攻め”の会計へ。そんな変革を、現場レベルで担う存在として同社が育成を進めているのが「ミニCFO」なる人材です。
本稿では、グンゼ取締役兼常務執行役員 財務経理部長・澤田博和氏とキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)取締役常務執行役員・村松昇の対談により、10年にわたる両社の共創の歩みを振り返り、事業多角化と資本コスト経営を支える財務改革の現在地を描きます。バックオフィスDXと人材育成こそ、やがて企業価値を高める大きな力に――そのリアルな実践、そして未来へのメッセージとは。
この記事の目次
「SuperStream」導入に始まった会計基盤改革
グンゼ様とキヤノンITSとの協業は、2015年にグンゼ様の財務経理部門に「SuperStream-NX」を導入したことからスタートしたと伺っています。はじめに、「SuperStream」というパッケージソフトウェアの採用を決めた当時の状況を、改めて振り返っていただけますか。
澤田:2015年当時、私は財務経理部の経理統括室に在籍しており、「SuperStream」導入の責任者でした。それまで会計業務には自社開発のシステムを十数年にわたって使用しており、社外のパッケージシステムの導入は弊社としては思い切った決断でした。特に、グンゼグループ特有の会計処理であるグループ会社間の振替処理への対応が最大の課題だったわけですが、キヤノンITSさんと共同出資する形で製品にそうした機能を組み込んでいただきました。貴社の方々とミーティングを重ね、お互いに苦労しながら仕組みをつくり上げていったことが非常に印象に残っています。よく一緒に飲みにも行きました(笑)。
従来はユーザーが個々にやりたいことを一つひとつ積み上げていく、文字通り個別最適なシステムだっただけに、導入当初は現場の混乱や抵抗が多少なりともありました。社内説明会を重ねるなどして浸透を図った結果、「SuperStream」はほどなく定着し、今日に至るまで会計業務の標準化・効率化に大きく貢献しています。
村松:ありがとうございます。キヤノンITSは、「共想共創カンパニー」というビジョンを掲げています。「SuperStream」についても、「お客さま主語」という考えの下、VOC(Voice of Customer)を開発に活かし、ユーザーと共に成長していくことを製品の重要なコンセプトとしております。そういった意味で、10年前に「SuperStream」をご採用いただいたことは、貴社の課題に対して一緒に解を探し、より使いやすいシステムをつくり上げ、パートナーとして伴走させていただくという、まさに「共創」の取り組みの好例だったと思います。今後もぜひ現場の方々の声をお聞かせいただけたら幸いです。
澤田:キヤノンITSさんとは継続的に情報交換の場があり、改善要望内容をバージョンアップで機能追加していただくなど、常に我々に寄り添っていてくれている安心感があります。サポートも充実しており、単なるパッケージベンダーではなく、信頼できるビジネスパートナーとして協業体制が構築できていると感じています。
村松:うれしいお言葉を頂戴しました。ちなみに私、偶然にも貴社のアンダーウェア「ボディワイルド」の20年来の愛用者でして……。今日は何か、個人的にもただならぬご縁を感じております(笑)。
澤田:それはそれは(笑)。ご愛顧ありがとうございます。

多角化経営で130年の歴史を未来に紡ぐ
「SuperStream」の導入から10年が経ち、この間にはコロナ禍に代表される大きな社会的出来事や、財務・経理業務に関連する法改正など、さまざまな変化がありましたが、グンゼ様では近年どのような事業を展開されているのでしょうか。
澤田:我々は主に4つの事業セグメントを運営しているのですが、おっしゃるようにコロナ禍に前後して事業環境が大きく変わってきたことを肌で感じています。
弊社の主力であるインナーウェア、レッグウェアなどのアパレル事業は、正直に申し上げて、非常に厳しい状況です。そもそも人口が減少する中、コロナ禍を経て消費者の嗜好が変化し、さらに物価高騰や実質所得の減少などにより、消費マインドが冷え込んでいます。お米は高くても買われますが、お父さんの下着はどうしても優先度が低い。従来のビジネスモデルのままで収益力を回復するのは難しく、ECなど直接消費者にリーチするルートを強化しつつ、大胆な事業構造改革を進めているところです。
もう一つ、コロナ禍で大きなダメージを受けたのはショッピングセンターやスポーツクラブを運営するライフクリエイト事業ですが、リニューアルや不採算店舗からの撤退などにより現在、収益は回復傾向にあります。 一方で、包装用プラスチックフィルムや産業用途向けのエンジニアプラスチックなどの機能ソリューション事業は堅調です。プラスチックの環境負荷にまつわる批判という逆風はありますが、「資源循環」をキーワードに生産の仕組みや環境対応製品の開発を強化することでシェア拡大を図っています。
さらに今、最も伸びている分野がメディカル事業で、生体内で吸収される素材をベースに、手術用の糸をはじめとした医療に関わる部材を製造しています。利益率が高く成長性もあり、社会にも貢献できるということで、今後、グループの大きな柱に育てていきたいと考えています。試行錯誤しながらではありますが、こういったいわばソーシャルビジネスを活性化させることは、社員たちにとっても充実感につながり、いろいろな意味で良い循環を生むのではないでしょうか。

村松:創業から130年という長い歴史の中で、祖業の製糸・繊維業を大切にされながらも、時代の変化に合わせて既存事業の改革と経営の多角化に挑んでおられるのですね。今ご紹介いただいたメディカル事業にも、根底には「良い糸をつくる」という創業以来の精神がきっと受け継がれているのでしょう。すばらしいことです。さまざまな事業を通して、人々の生活と健康をサポートする製品を紡ぎ続けていることは、まさに社会貢献そのものだと思います。

財務・経理のミッションは“守り”から“攻め”へ
経営環境の変化とともに財務経理部門に求められる役割も大きく変わってきていると思われます。現在、グンゼ様の財務経理部門では、どのような課題意識をお持ちなのでしょうか。
澤田:グンゼは現在、2030年に向けた中期経営計画(Vision2030)を掲げ、「創業以来の価値観を大切にしながら、持続可能な事業基盤を構築しグローバルに選ばれ続ける会社となること」を目指しています。財務経理部門としては、そうした持続可能な事業基盤づくりに資するため、企業体質の改善、資本コストや株価を意識した経営を推進することが使命です。
従来は正確な記帳、決算、開示、税務対応、法令順守、内部統制など、企業の安定運営を支える“守り”に徹することが会計の役割でした。しかし今、企業価値を高めるためにはそれらにプラスして、精緻な判断材料と確固たる発言力をもって経営陣に提言し、変革の推進役となるような“攻め”の役割を強化していかなければいけません。
村松:10年前に「SuperStream」を導入された当時は、いわば“守り”を固めていこうというフェーズにあったと思いますが、近年は“攻め”の強化へと比重が変わってきているということですね。一方で、“守り”の領域も、要請が複雑化・高度化しているのではないでしょうか。
澤田:まさしくその通りで、直近では、通常業務と並行してグローバルミニマム課税、新リース会計基準などへの対応を進めています。当社の規模では一見すると直接影響のないような制度変更であっても大企業と同じ対応が求められ、業務負荷は増すばかりです。例えば、「ESGを開示しなさい」と言われても、「自社のデータだけでは完結しないスコープ3のCO₂排出量って、一体どうやって算定すればいいんだ?」といったところから我々はスタートせざるを得ません。
人員不足の中、現状の体制のままで、こうした“守り”に関する要請の高度化に自力で対応し、“攻め”の強化を図るのは難しい話です。そのためにもDXによってまずは通常業務を徹底的に効率化することで財務経理部門を筋肉質にして、財務経理担当者が事業参謀的な役割に注力できるような体制に変革していきたいと考えています。
村松:財務や経理といったバックオフィスの業務を三角形とすると、土台となる決算処理や内部統制、監査など、“守り”が占める面積がどんどん大きくなり、三角形上部の経営支援やデータの可視化といった“攻め”の部分に回す余力がなくなる。それが多くの企業における現状と言えるでしょう。私たちは「SuperStream」で業務構造を逆三角形にし、財務や経理に携わる方々が会社の未来のためにより多くの時間を使えるようにしたい。そのように考え、「バックオフィスは、デジタル経営戦略の司令塔へ」というメッセージを打ち出しています。これは今、澤田様がおっしゃった「事業参謀になる」ということと目指すところは共通していると思います。
「SuperStream」は各分野のエキスパートである約80社のビジネスパートナーと連携しております。例えば、決算説明会の資料をAIで自動作成する技術を持つパートナーがいます。監査法人と連携して、監査業務データのやり取りを効率化することも可能です。あるいはESGに詳しいベンダーと組むことで、今お話のあったCO₂算定などももっと楽にできるかもしれません。さまざまなパートナーと協力し、個々のお客さまのニーズに即したバックオフィスDXを実現していきたいと考えます。
澤田:例えばですが、システムエンジニアが制度改正対応などのコンサル的な役割を担ってくれるようになると助かりますね。一般に、コンサルはシステムのことはなかなか分からない。逆にシステムを構築する側の人が税制や法律なども深く理解していて、そちらの方面の相談にも乗ってくれたら、我々としては非常に心強い。
村松:それは私どもが努力して実現していかなければなりませんね。製品には制度の要請に対して最大公約数的な回答を行うような機能をまず組み込むわけですが、法律の解釈や適用条件などは個社ごとに違ってきます。弊社のエンジニアだけでそれらを完全にカバーすることはできませんが、個々の状況に応じてコンサルティングできるビジネスパートナーと連携する形でサービスを拡張していきたいと思います。

「自前主義」から脱却し、バックオフィスDXで経営を変える
“守り”と“攻め”のそれぞれの領域で、実際にどういったDXに取り組まれているのでしょうか。
澤田:2015年に「SuperStream-NX」を導入して、それまで各部門それぞれのシステムで行っていた売掛金の消込などの業務も順次取り込みました。また、国内拠点の勘定科目体系を統一させることなどにより、決算手続きの早期化と内部統制の強化を図ることもできました。単なるシステム導入に終わるのではなく、業務プロセスを見直す機会とし、生産性向上につなげることを目指して取り組んだ結果です。社内でも「これは有効だ」という認識が広まり、今は連結パッケージにも連携するなど、どんどん拡張させています。また、SuperStream導入プロジェクトを通じて得たノウハウを活用し、クラウド基盤の活用、電子帳簿保存法への対応・ペーパーレス化、請求書受領のBPO(外部委託)、スマートフォンでの経費精算などの導入に取り組み、社内改革を着実に前に進めてきました。
そうそう、SuperStreamのシステム連携ツール(コネクト)のトレーニングサービスも受講させていただきました。我々のようなユーザー側のエンジニアが必要な機能を自前で開発できるように教育いただけるサービスであり、他ではなかなかないサービスだと思っており、SuperStreamを導入して良かったと感じている点です。グンゼは事業部門毎に上流の基幹システムが異なっており、それぞれのシステムとSuperStreamをシームレスに連携できる仕組みの構築を目指しています。
村松:トレーニングサービスがお役に立てたようで何よりです。ノウハウや知識が蓄積されるほど、「SuperStream」の使い勝手はよくなり拡張性も広がりますので、今後もぜひ柔軟にご活用いただければと思います。
澤田:冒頭でも言いましたが、弊社ではもともと、会計をはじめ多くのシステムが「自前主義」で運用されてきました。個別の業務状況に合わせた柔軟な開発ができるメリットはありましたが、運用・保守に時間とコストがかかり、昨今の複雑で高度な開発ニーズや変更要請にスピーディーに対応することが難しくなっていました。「SuperStream」の導入がきっかけとなり、自前主義を脱却することができたのは大きな前進です。今は競争力にならない部分は委託する動きが増えて、事業に関してもECの仕組みをはじめ、使えるところは外部のサービスを使うようになってきています。
村松:実際、インボイスやリース会計などを見ても、非常に大がかりなシステム対応が必要ですし、その上、毎年のように制度のマイナーチェンジがあって、その都度手を加えなければいけません。客観的に見ても、やはり外部サービスのほうが効率的なのではないでしょうか。
「SuperStream」が目指す姿は、会計や人事給与で何かお困りごとがあれば最初に訪れてもらえるような「エコシステムドライバー」です。各方面のパートナーと連携して、お客さまのさまざまな課題やご要望にワンストップでお答えできる、体系化されたエコシステムを構築したいと考えています。 ところで、AIの活用について貴社はどのようにお考えですか。
澤田:AIに関しては正直遅れていて、ようやく「やっぱりAIを使った方がいいぞ」という気運が高まってきたところです。まずは2027年から強制適用される新リース会計基準への対応に、AIが契約書からリースを識別する仕組みを導入しました。
会計分野で言えば、消費税一つとっても、課税か非課税かをAIが瞬時に判断してくれたらかなりの時間が削減できるのだろうとは思います。ただ今はまだ、どうすれば効率的にAIを使いこなせるのか分からずに悩んでいる状況です。
村松:AIを用いたサービスは「SuperStream」の中でも既にいくつか提供していますが、まだまだAIによって自動化できそうな“守り”の業務は多いと拝察しますので、現場の皆さまのご意見を伺いながら一つずつ形にしていければと思います。
一方で、“攻め”の会計DXには、どんなことを期待されますか。
澤田:目指すのはやはり、データドリブン経営です。しかしながら、既にデータは大量にあるのですが、それをどう利活用するかというところがまだぼんやりしています。BIツールで最大公約数的なアウトプットが出てきても、それが経営判断に直接役立つとも思えません。
実際、経営者の視点はすぐに変わります。トップや事業環境が変われば、見方や認識も変わっていく。だからそれに先んじて、財務経理部門がいつでも簡単にデータを活用できるように基盤の拡張性を備えさせたいのです。昨日まで売上ベースで参照していたデータを、今日は為替の影響という視点に切り替える。あるいは原料の値上がりの価格転嫁ができているかをチェックする。そういったことに柔軟に対応できてタイムリーに結果が出せないと、“攻め”の経営管理にはつながらないと思います。
村松:おっしゃる通り、環境の変化というインプットがあった時にアウトプットも当然変わるわけで、この間のプロセスを標準化して、誰がやっても迅速に結果が出せるような仕組みを私どもでも検討してまいります。 今はまだ、多くの企業がデータ利活用に悩んでいる状況です。弊社のお客さまの例では、ワークショップを一緒にやってはじめから仕組みをつくり上げていくパターンが成功しています。どのデータが何に使えるか、どういう効果があるのかを私たちも一緒になって考えた上で、BIツールなどでかたちにし、それが定着化するところまで伴走する。そんな「共想共創」のメニューの開発を強化しているところです。

事業部門にFP&A視点を根付かせる「ミニCFO」構想
財務経理部門が担う領域が“攻め”へと拡張すれば、求められる人物像も変わってくると思われます。人材育成についてはどのようにお考えでしょうか。
澤田:DXにおいて私が最も重視しているのは、「人」の力です。どれだけ優れたシステムやデータ基盤を整備しても、それを活用し、経営に活かすのは結局人間なんですよ。ですから、人材育成はこれからますます重要になってくるでしょうね。
今、CFO(最高財務責任者)は従来のリスク管理やガバナンスの徹底に加え、成長戦略の立案や新規事業の推進など、経営の最前線で意思決定をリードする存在へと変化しています。単なる経理・会計のプロフェッショナルではなく、ファイナンスの視点から未来志向で経営全体を俯瞰し、企業価値向上のためにトップに提言ができる、そんな「変革ドライバー」としての役割が求められているのだと私自身も強く意識しています。
村松:貴社の事業部門は独立採算制で、それぞれが個別に会計処理をされているとのことですが、CFOの考え方や方針は、どのように各事業部門と共有されているのでしょうか。
澤田:グンゼでは各事業部門を一つの会社単位とみなしています。それぞれが別会社と同じ扱いですから、個別に管理部門を設けて人員を配置しています。私は事業部門も本社同様に“守り”に費やすリソースをDXで最小化し、“攻め”のウエートを高めて、先ほど村松さんがおっしゃったような逆三角形の構造に転換させていきたいと考えています。そのためにはそれを牽引する人材が必要です。各事業部門でその役目を主に担うのは管理部長ですが、私は彼らを「ミニCFO」と位置付け、私が全社レベルで行っているようなことを各々でやってほしいと考えています。
村松:ミニCFOとは、非常に分かりやすく的確なネーミングですね。しかし、そうした人材を育てるのはなかなか大変そうです。ミニCFO候補育成のために何か工夫なさっていることなどはございますか。
澤田:“攻め”のDXを遂行するには、ファイナンスの視点から管理・分析を行い、戦略を立案するFP&Aのようなスキルが必要です。極端に言えば、ファイナンスの知識があれば、簿記や経理のことをあまり知らなくても、資本コストを意識した経営管理はできる。そこで目下取り組んでいるのが、FP&Aの人材を早回しで育てていくプログラムです。本来のキャリアパスでは、40~50代のベテランがFP&Aの勉強をしていたのですが、それを一気に前倒しした格好ですね。
村松:なるほど。具体的にはどのような研修を?
澤田:我々の財務戦略では、弊社のオリジナル指標であるGVA(Gunze Value Added:税引後営業利益+受取配当金-投下資本×WACC)とROIC(資本収益性)を併用した管理強化に取り組んでいるわけですが、各事業部門のミニCFO候補となりそうな20~30代の中堅社員~若手管理職を「GVA/ROICアンバサダー」として任命しています。彼・彼女らに社外スクールへの派遣も含めてFP&Aを基礎から学んでもらい、習得したスキルを所属する事業部門で展開し、定着させるところまでを一連の研修体系としたもので、これは2024年度にスタートしました。
村松:資本コスト経営管理の知識と考え方をしっかりと身につけた会計担当者が、本社と事業部門の橋渡しとなってDXを進め、ひいては重点指標向上のための経営戦略の策定を担っていく――。
澤田:そう、まさにそれが狙いです。本社の財務経理部門が全社の経理部門の人事を統括しているからこそ、そうした取り組みも可能になっています。事業部門長にしてみれば、本社からスパイが来たように感じるかもしれませんけれども(笑)、疑念や軋轢を生まずに相手の懐に入りつつ、私の考えも汲み取って、上手にバランスを取りながら変革を進めていけるような資質がミニCFOには求められるということですね。
村松:それは相当重要な役回りですね。そうなると、ファイナンスの知識だけでなく、調整力がカギになる気がします。
澤田:私は若い人には「コミュニケーション能力が一番大事だよ」といつも話しています。いくら会計的に正しい分析をしても、発信力がないとどうしようもない。ただ手元のメモに残しているだけでは意味がないですからね。また、自分の分析なり提言を、相手の感情を害さないように伝えられるスキルも欲しい。
村松:そのお気持ち、とてもよく分かります。私どもでも、「自分主語」、これをやっちゃダメだよねという反省から、ビジネスは「顧客主語」の考え方でするんだよということを、かなり前から言ってきました。もっと言えば、「相手主語」。隣に座っている同僚だって、上司だって、部下だって一緒。まずは「相手がどう思うか」を考えることがコミュニケーションの第一歩なんだよと、私も常々部下たちに話しています。
澤田:コミュニケーション能力は「お勉強」だけで身につくものではないですし、社外を含めてさまざまなバックグラウンドを持つ方と交流する機会を得て、知識と調整力の両面を磨いていくことが大事でしょうね。
村松:例えば、「SuperStream」のユーザー会なども、普段会わない他社の方とコミュニケーションできる、一つの学びの場としてご活用いただけるのではないでしょうか。
澤田:貴社のユーザー会は他社の方々と話せる貴重な場ですし、いろいろと情報も得ることもできて、とても役に立っています。ただ、参加者はシステムエンジニアが中心なんですよね。実務を担っている会計担当者が、外部の人と会話できる機会は、実は本当に少ない。そうしたことも踏まえて、各事業部門に配置している若手社員を対象に、本社でワークショップ形式の研修会をすることで、少しでもコミュニケーションを促す工夫をしていますが、可能ならば社外の人と交流できる機会がもっともっとあるといいと思っています。
村松:今お話を聞いていて、経理DXをテーマにした会計の実務担当者の集いは、すぐにでも開いた方がいいと感じました。他社の取り組みを知り、意見交換するだけでも何かしら成長の種があるかもしれません。ぜひ企画させてください。

DXは企業価値向上への継続的な進化のプロセス
最後に、今後の活動の展望をお聞かせください。
澤田:グンゼは2026年8月に創業130年の節目を迎えます。長い歴史の過程で、会社を堅実に守り、支えてきた財務経理部門の功績は非常に大きいものだと思っています。
ただ、変化の激しい時代においては新しい価値観を柔軟に受け入れることも必要です。株式市場から資本コスト経営が求められている今、我々が率先して従来のPL脳から脱却し、未来志向の会計にトランスフォームして、全社的な変革の中心になることが私の目標です。そのためにも、DXを徹底的に推進し、働き方も考え方も逆三角形の構図に転換していこうというメッセージを社内に強く発信していきたいと考えています。
DXは一度きりのプロジェクトではなく、継続的な進化のプロセスです。経営層と現場が一体となり、失敗を恐れずにチャレンジを続けることで、グンゼグループ全体の持続的成長と企業価値の向上を図っていきたいと思います。
村松:確かにDXを進めるためには新しいことに挑戦するマインドセットが不可欠です。一人ひとりが自分の頭で考えトライする、そんな人材の集合体のような組織を私どもも目指しています。トライ精神の土壌づくりは簡単ではなく、試行錯誤する日々です。例えば私の部署では今、どんなに小さなことでもいいので自分なりに何にトライをしたか、ハードルをどう超えたかをまとめて提出し、良かったものを皆で共有しています。また年1回、「失敗をたたえる日」というイベントを開催し、選ばれた何人かの失敗談を発表して表彰しています。失敗の裏には必ず挑戦がある。それが大事なんだよと、若い社員たちに伝わればいいなと思っています。
澤田:面白いアイデアですね。私も最近、1on1(ワンオンワン)などで社員と個別に話す機会が多いので、そこで何にトライするかを宣言してもらって、次の回で結果を聞くようにすれば、モチベーションの醸成にもつながりそうです。
村松:先ほどおっしゃったように、DXは継続していくものです。特に近年のAIの急速な発展はDXのゴール地点を大きく変えようとしています。これからはAIをどう活用していくのかが、各企業にとって重要なテーマになるでしょう。弊社の第一のミッションは、汎用的なAIサービスを広くご提供することです。ただ、私はもっと深くお客さまと協業し、AIの可能性をトライアンドエラーで一緒に探りつつ、より高度なニーズをカバーできるプラットフォームをつくっていきたいと考えています。貴社とのお仕事が、そのような機会になればと願っております。
澤田:AIの活用についても、キヤノンITSさんのようなプロフェッショナルと一緒に組めるならば心強いです。貴社のシステムエンジニアの優秀さはよく知っています。お互いに先行投資のようなかたちで協力し合えることがあれば、ぜひ声を掛けてください。
村松:今日のお話を伺って、貴社がこの10年間にさまざまなチャレンジをされてきたことに驚き、伴走し続けさせていただいた喜びを改めて感じました。これからはよりいっそう課題に寄り添い、システムづくりの土台となる「想い」の部分から最適なご提案をできるように努め、しっかりと貴社との「共想共創」を極めていきたいと思います。
本日はありがとうございました。

お客さまプロフィール
- 会社名
- グンゼ株式会社
- 所在地
- 大阪府大阪市北区梅田二丁目5番25号 ハービスOSAKAオフィスタワー
- ウェブサイト
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