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ビジネスイノベーションを創出できるDXの条件
~戦略・組織・技術の三位一体の変革~
キヤノンITソリューションズ 共想共創フォーラム2025イベントレポート

当社が独自に実施したアンケート調査結果を引用しながら、DXの普及状況ならびにDXケイパビリティ獲得状況(技術/組織/戦略)を俯瞰します。岸氏からは、DX普及に向けた取り組み内容を具体的にご紹介いただきます。さらに、DX推進における戦略策定の重要性について議論を行い、DX推進に向けた課題と解決について共に理解を深める機会とします。

住友生命保険相互会社
エグゼクティブ・フェロー
岸 和良 様

キヤノンITソリューションズ株式会社
ビジネスイノベーション推進センター 付センター長
南本 肇

セミナー動画(視聴時間:50分38秒)

こんな方におすすめ

  • DX推進責任者・担当者

    社内のDX戦略立案や実行を担う部門のリーダー

  • 経営企画・事業戦略部門

    中長期の成長戦略や新規事業開発を検討している企業

  • 情報システム部門・IT部門

    技術導入やインフラ整備を通じてDXを支える部門

  • 人事・人材開発部門

    DX人材の育成やリスキリング施策を検討している企業

  • 業務改革・BPR推進部門

    業務効率化からビジネスモデル変革までを視野に入れている企業

  • 金融・保険・製造・流通などの大手企業

    特に従業員300名以上の企業で、DXに本格的に取り組むフェーズにある

  • スタートアップとの連携を模索する企業

    出島型や漸進型のイノベーション体制を検討している企業

  • 経営層(CXO)

    DXを経営課題として捉え、全社的な推進を図る意思決定層

DXケイパビリティを三位一体で変革する

図:DXケイパビリティを三位一体で変革する

住友生命保険相互会社のエグゼクティブ・フェロー 岸 和良氏と、キヤノンITソリューションズ株式会社 ビジネスイノベーション推進センター付センター長 南本 肇が登壇し、「ビジネスイノベーションを創出できるDXの条件 ~戦略・組織・技術の三位一体の変革~」をテーマに議論を展開しました。

企業がDXを通じてどのようにビジネスイノベーションを実現できるかを、実際のアンケート調査結果(従業員300名以上の企業対象、N=780)を交えながら分析。戦略面・組織・人材面・技術面の3つのDXケイパビリティをどのように組み合わせて推進すべきかについて、実践的な視点から深掘りします。

岸氏は、住友生命保険での取り組みを紹介しながら、社内外の連携、人材育成、マインドセット研修の重要性を強調。南本は、国内外での豊富なDX経験をもとに、企業が直面する課題とその乗り越え方について具体的な提案を行いました。

  • DXの三位一体(戦略・組織・技術)による変革がテーマ
  • アンケート調査(N=780)をもとに現状と課題を分析
  • 人材育成・マインドセット研修の重要性が強調された
  • DXによるビジネスイノベーション創出の具体的なヒントが提示された

DXによるビジネスイノベーションの現状と課題

図:DXでビジネスイノベーションを創出する

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進において、ビジネスイノベーションの創出は依然として大きな課題です。キヤノンITソリューションズが実施したアンケート調査(従業員300名以上の企業対象、N=780)によると、業務効率化・生産性向上を目的としてDXを進めた企業の57%が成果を達成した一方、ビジネスイノベーション(新商品・サービス開発やビジネスモデル変革)を目的とした企業での達成率は37%にとどまりました。

この結果は、イノベーション創出が単なる技術導入ではなく、戦略・組織・人材・技術の三位一体の変革を必要とする複雑なプロセスであることを示しています。特に、DX専門人材の確保や現場との連携、AIなど先進技術の本格活用に向けた環境整備が重要な要素として浮かび上がっています。

また、DXの進度を示す「DX進度マトリクス」では、企業の多くが業務効率化からビジネスイノベーションへの移行を目指しているものの、進展は限定的であり、継続的な戦略の見直しと外部との連携が求められています。

  • DXの目的達成率に差:業務効率化は57%、ビジネスイノベーションは37%と達成率にギャップ。
  • 三位一体の変革が鍵:戦略・組織・技術の連携がイノベーション創出に不可欠。
  • 人材と環境整備が重要:DX専門人材の育成と技術活用のための環境整備が成功要因。
  • DX進度マトリクスで現状把握:企業のDX進度を可視化し、次のステップを明確に。
  • 継続的な戦略見直しが必要:一度の施策で終わらず、柔軟な対応と外部連携が求められる

三位一体のDXケイパビリティとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)によるビジネスイノベーションを実現するには、戦略・組織・技術の三位一体のケイパビリティ(組織能力)を統合的に形成・運用することが不可欠です。キヤノンITソリューションズでは、これらを「戦略面」「組織・人材面」「技術面」に分類し、それぞれの役割と連携の重要性を強調しています。

戦略面では、DXの方向性を定めるビジョンや外部との連携が求められます。組織・人材面では、DX推進組織の設立や専門人材の育成が鍵となり、技術面では、データ基盤やインフラ整備、先進技術の導入が必要です。

これらのケイパビリティは、個別に進めるのではなく、相互に連携しながら進化させることで、DXの成果が最大化されます。特に、ビジネスイノベーションを目指す企業にとっては、戦略と技術をつなぐ人材の存在が重要であり、現場との連携や試行錯誤を通じて、仮説検証型のアプローチが効果的です。

セッションでは、Uberの事例を引き合いに出し、3つのケイパビリティが混然一体となって機能していることがイノベーションの源泉であると紹介されました。日本企業においては、既存事業との関係性を考慮した「漸進型」の推進が主流であり、分業的な体制の中でも、いかに三位一体の連携を実現するかが課題となっています。

  • DXケイパビリティは「戦略・組織・技術」の三位一体で構成される
  • 個別施策ではなく、統合的な連携が成果創出の鍵
  • 人材の育成と現場との連携が、戦略と技術をつなぐ橋渡し役
  • Uberの事例に見る、ケイパビリティの融合がイノベーションを生む
  • 日本企業では「漸進型」推進が多く、三位一体の実現には工夫が必要

DXの成功モデルと日本企業の現状

図:DXによるビジネスイノベーションの究極例

DX(デジタルトランスフォーメーション)によるビジネスイノベーションの成功モデルとして、セッションではUberの事例が紹介されました。Uberは、戦略・組織・技術の3つのDXケイパビリティが混然一体となって機能しており、ユーザー体験(UX)を徹底的に重視したサービス設計や、先行技術の積極的な導入、テック人材の集結による高速な仮説検証スタイルが特徴です。これらが融合することで、革新的なビジネスモデルが生まれ、利用者にとっては「当たり前」と感じるほど自然なイノベーションが実現されています。

一方、日本企業では、既存事業や組織との関係性を重視しながらDXを推進する「漸進型」のアプローチが主流です。スタートアップ型のような突破力は弱いものの、社内のハレーションを抑えながら安定的に進められる利点があります。DX推進専門組織を設置しつつ、現業部門や人事、企画など既存部門との連携を図ることで、分業的にケイパビリティを形成していく体制が多く見られます。

このような現状では、三位一体のケイパビリティをいかに連携させ、目的に特化した試行錯誤を行えるかが、ビジネスイノベーション創出の成否を分ける重要なポイントとなります。

  • UberはDX成功モデルの象徴:戦略・組織・技術が融合し、UX重視の革新を実現。
  • 日本企業は「漸進型」推進が主流:安定性重視で既存組織との連携を図る。
  • スタートアップ型との違いは突破力と柔軟性:漸進型は社内調整に強み。
  • 三位一体の連携が成功の鍵:分業体制でも統合的な推進が求められる。
  • 目的特化の試行錯誤が重要:仮説検証型のアプローチがイノベーションを加速。
図:日本企業でビジネスイノベーションを創出するには
図:日本企業のイノベーション創出体制イメージ

人材育成の重要性

岸氏が主導する「DXマインドセット研修」

岸 和良氏は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進において、技術導入だけでなく「人材育成」と「マインドセットの醸成」に重点を置いた取り組みを展開しています。岸氏が主導する「DXマインドセット研修」は、事前知識や課題が不要で、楽しみながらDXの本質を理解できる内容となっており、これまでに中学生から社会人まで累計2,000人以上が受講しています。

岸氏の活動は住友生命保険社内にとどまらず、他企業や地域社会との連携にも広がっており、顧客価値提供力の養成や地域金融機関のDX支援、大学生向けの就職支援など、多方面にわたる人材育成を実践しています。特に、DXを技術的な取り組みに限定せず、事業戦略や新商品開発といったビジネスの本質に結びつける思考回路の育成を重視している点が特徴です。

このような取り組みは、企業がDXを単なるIT導入ではなく、組織全体の変革として捉えるうえで大きなヒントとなります。岸氏の考え方は、DXケイパビリティの「組織・人材面」における実践的なモデルとして、多くの企業にとって参考になるものです。

  • DXマインドセット研修で2,000人以上を育成:技術だけでなく思考回路の醸成に注力。
  • 社外連携を重視:住友生命保険にとどまらず、他企業・地域・教育機関とも協働。
  • DXを事業戦略と結びつける:新商品開発や顧客価値創出に直結する人材育成。
  • 幅広い対象層に対応:中学生から社会人まで、誰でも参加できる研修設計。
  • 組織・人材面のDXケイパビリティ形成に貢献:実践的な育成モデルとして注目。

アンケートから見えるDX成功の要因

キヤノンITソリューションズが実施したアンケート調査(従業員300名以上の企業対象、N=780)では、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業のうち、業務効率化・生産性向上を目的として成果を達成した企業は57%、ビジネスイノベーション創出を達成した企業は37%にとどまりました。この差から、DXの目的によって成功要因が異なることが明らかになりました。

図:アンケート結果から示唆されること 戦力面 組織・人材面 技術面

ビジネスイノベーション創出を達成した企業群では、戦略面の課題認識は比較的低い一方で、実際の取り組み状況は進展しており、戦略の具体化と実行力が成功に寄与していると考えられます。また、組織・人材面では、DX専門人材の確保や現場との連携体制が整っている企業が多く、人的リソースの充実が成果に直結していることが示唆されました。

技術面では、AIなど先進技術の導入が進んだ企業ほど、活用ルールやデータガバナンスの整備、投資対効果の評価など、より高度な課題に直面している傾向が見られました。これは、技術導入の初期段階を超え、本格活用フェーズに移行していることを示しています。

これらの結果から、DXによるビジネスイノベーションを成功させるには、戦略・組織・技術の三位一体のケイパビリティを段階的かつ連携的に整備・運用することが重要であると読み取れます。

  • 戦略の具体化と実行力が成功の鍵:課題認識よりも実施状況の進展が成果に直結。
  • DX専門人材の確保が成果に貢献:人材面の充実がイノベーション創出に不可欠。
  • 技術導入後の本格活用が課題に:AI活用ではガバナンスや評価が新たな焦点に。

三位一体変革モデルと支援体制

DX(デジタルトランスフォーメーション)によるビジネスイノベーションを成功させるためには、戦略・組織・技術の三位一体によるケイパビリティ形成が不可欠です。南本は、これらを段階的かつ連携的に進める「三位一体変革モデル」として7つのステップを提示しました。

まず①戦略を策定し、②DX推進組織を立ち上げることで枠組みを整備。③先進技術を導入し、④DX専門人材が試行錯誤を通じて使い込み、⑤本格活用に向けた環境整備を進めます。⑥多くの社員のDXスキルを底上げし、⑦戦略の見直しと外部との継続的な交流を通じて、イノベーション創出を加速させる流れです。

このプロセスは、スタートアップ的な柔軟性と、一般的な日本企業に適した組織的な安定性の両面を持ち合わせており、企業の実情に応じた推進が可能です。

図:三位一体変革モデルの加速に向けて

キヤノンITソリューションズでは、このモデルに基づき、DXグランドデザイン策定支援、PoC(概念実証)支援、リスキリング研修、技術導入支援など多面的なサービスを提供。岸氏の人材育成ノウハウとも連携し、企業のDX推進を伴走型で支援しています。

  • 7ステップの三位一体変革モデルでDXを体系的に推進
  • 戦略・組織・技術の連携がイノベーション創出の鍵
  • PoC支援やリスキリング研修など多面的な支援体制を整備
  • スタートアップ的柔軟性と日本企業向け安定性の両立
  • 岸氏との連携により人材育成面でも実践的支援が可能

まとめ

本セッションでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)によるビジネスイノベーション創出に向けて、戦略・組織・技術の三位一体の変革がいかに重要であるかが繰り返し強調されました。特に、単発的な施策ではなく、段階的かつ連携的にケイパビリティを形成・運用していくことが、成果を生む鍵であると示されました。

岸氏の取り組みからは、DXを技術導入にとどめず、社員一人ひとりのマインドセットやスキルの底上げが不可欠であることが明らかになりました。また、住友生命保険における社外連携や教育活動は、他企業にとっても参考となる実践例です。

南本は、DX推進の7ステップモデルを提示し、企業が自社の状況に応じて柔軟に進めることの重要性を解説。キヤノンITソリューションズとしても、グランドデザイン策定支援、PoC支援、リスキリング研修などを通じて、企業のDXを多面的に支援していることが紹介されました。

本セッションは、DXを「全社的な変革」として捉える視点を提供し、戦略的かつ実践的なアプローチの重要性を再認識させる内容となりました。

  • DXは三位一体(戦略・組織・技術)の連携が不可欠
  • 岸氏の人材育成とマインドセット醸成の実践が示唆に富む
  • 南本の7ステップモデルがDX推進の道筋を明確化
  • キヤノンITSは多面的な支援体制で企業を伴走支援

DXによるビジネスイノベーションの推進に関して

「どこから着手すべきか分からない」「自社に合った進め方を知りたい」など、お悩みやご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。キヤノンITソリューションズでは、戦略策定からPoC支援、人材育成、技術導入まで、お客さまのフェーズに応じた伴走型の支援をご提供しています。

DXレポート、ホワイトペーパー、講演資料

写真:これまでに発行された「共想創共創INOVATION INSIGHT」の冊子


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