AI急増に応える 液冷方式サーバー冷却サービス
キヤノンITソリューションズ 共想共創フォーラム2025イベントレポート
AIソリューションの導入や高次元データの解析ニーズが急速に高まる中、GPUや高性能CPUを搭載したサーバーの需要が急増しています。しかし、サーバーの消費電力が増大することで、従来の空冷方式では十分な冷却が難しくなっています。この課題を解決するために、データセンターでは液冷方式の導入が急務となっています。そこで、当社では市場に先駆けて2024年12月より「液冷方式によるサーバー冷却サービス」の商用提供を開始しました。本セッションでは、液冷方式を中心に当社のデータセンターサービスを紹介します。
キヤノンITソリューションズ株式会社
データセンターサービス本部 本部長
小林 信一
セミナー動画(視聴時間:28分24秒)
こんな方におすすめ
- AI・生成AIを活用する企業のITインフラ担当者
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- 高負荷GPUサーバーの導入を検討している
- データセンターの冷却課題に直面している
- データセンター運営企業の設備・技術責任者
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- 空冷方式の限界を感じている
- 液冷方式の導入を検討中
- 製造業・金融業などの大規模ITシステムを持つ企業
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- 高信頼性・高セキュリティのインフラを求めている
- CO₂削減や環境対応に積極的な企業
- 地方自治体・公共機関の情報システム部門
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- 災害対策・BCP観点でのインフラ強化を検討している
- 地方分散型DCの整備を進めている
- 環境・エネルギー対策を重視する企業のCSR・ESG担当者
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- 非化石証書や省エネ技術に関心がある
- 環境認証取得を目指している
キヤノンITソリューションズのデータセンター事業について

生成AIの普及に伴い、データセンターの高負荷化が進む中、液冷方式による冷却技術が注目されています。本セッションでは、当社が提供する液冷方式のサーバー冷却サービスの実例と、導入に至るまでの課題・解決策を紹介します。はじめに、キヤノンITソリューションズのデータセンター事業についてご紹介します。
- 1997年からの運用実績を持ち、現在は「西東京」「沖縄」の2拠点で展開。
- 西東京データセンターは最大40MWの受電能力、約5,000ラックの設置が可能。
- ISO20000、ISO22301、SOC2など多数の認証を取得し、運用品質を重視。
市場背景と課題
近年、生成AIの急速な普及により、データセンターを取り巻く環境は大きく変化しています。ChatGPTの登場以降、AIシステムの導入が加速し、GPUサーバーの需要が急増。従来のIAサーバーが1kW程度の消費電力であったのに対し、現在のGPUサーバーは10~14kWと高負荷化が進み、空冷方式では冷却が困難な状況となっています。これにより、液冷方式への移行が技術的にも経済的にも不可避となり、次世代サーバーでは液冷が標準仕様となりつつあります。
また、東京圏では電力供給余力が限られており、高負荷サーバーの設置には不向きです。政府は地方分散型データセンターの整備を推進しており、通信遅延の少ない地方でのAIトレーニング環境構築が進んでいます。さらに、環境対応も重要な課題です。
企業のESG対応やカーボンニュートラルへの取り組みが求められる中、非化石証書の活用や高効率冷却技術によるCO₂削減は、データセンター運営における新たな価値創出の鍵となっています。このような背景から、液冷方式の導入は冷却手段の選択を超え、次世代のITインフラ戦略における重要なソリューションとなっています。
- 生成AIの急速な普及により、GPUサーバーの消費電力が10kWを超える高負荷化。
- 液冷方式では冷却が困難となり、液冷方式への移行が求められる。
- 政府も地方分散型DCの整備を推進中。




液冷方式の冷却技術と導入事例
AIの急速な普及に伴い、GPUサーバーの消費電力は従来のIAサーバーの約10倍以上となり、空冷方式では冷却が困難な状況となっています。これを受けて、キヤノンITソリューションズでは2024年12月より、西東京データセンターにて液冷方式によるサーバー冷却サービスの提供を開始しました。
採用したのは「Direct Liquid Cooling(DLC)」方式で、CPUやGPUの直上に冷却プレートを設置し、冷却液を直接循環させることで最大80kWの冷却能力を実現しています。冷却液はCDU(クーラントディストリビューションユニット)によって循環され、サーバーの排熱の約70~80%を液冷で回収し、残りを空冷で補完する設計です。既存の空調設備を活用しながら、床下配管や防水処理、漏水検知センサーなどを組み合わせ、安全性と効率性を両立。設計から施工、負荷テストまでを約5ヶ月で完了し、短期間での導入を実現しました。この液冷方式は、従来は研究機関やスーパーコンピューターなどに限定されていた技術ですが、今後は一般企業でも活用が進むと見込まれています。高密度・高性能なAIサーバーの安定運用を支える冷却技術として、液冷方式は次世代のインフラ構築において重要な選択肢となっています。
- 当社は2024年12月より液冷方式による冷却サービスを西東京DCで提供開始。
- Direct Liquid Cooling(DLC)方式を採用し、最大80kWの冷却能力を実現。
- 既存設備を活用しつつ、短期間(約5ヶ月)で導入完了。
液冷方式のメリット
液冷方式によるサーバー冷却は、従来の空冷方式では対応が難しい高負荷GPUサーバーに対して、効率的かつ安定した冷却を可能にする技術です。最大のメリットは、冷却効率の高さにより空調機の消費電力を大幅に削減できる点で、理論上は約7割の省エネが可能とされています。実際、液冷方式を採用したラックでは、排気熱が空冷ラックよりも涼しく感じられるほど冷却効果が高く、サーバールーム全体の温度管理にも貢献しています。
また、液冷方式は高密度なサーバー設置を可能にし、限られたスペースを有効活用できる点も大きな利点です。従来の空冷では排熱の制約からサーバーラック間の距離を広く取る必要がありましたが、液冷ではラックを密に配置できるため、処理性能の向上とコスト削減の両立が可能となります。さらに、液冷方式はサーバーの消費電力に応じた柔軟な冷却設計が可能であり、電力供給能力を超えない範囲での高負荷運用を実現します。これにより、データセンターの設計思想も「スペースを売る」から「電力・冷却能力を売る」へと変化しており、液冷方式は次世代のインフラ運用における重要な選択肢となっています。
- 消費電力の最大約7割削減が可能。
- 排熱温度が低く、空調負荷も軽減。
- 高密度GPUサーバーの設置が可能となり、スペース効率が向上。




安全性と運用対策
液冷方式の導入にあたり、最も懸念されるのが漏水リスクです。キヤノンITソリューションズでは、西東京データセンターにおいて、万が一の漏水に備えた多層的な安全対策を講じています。床下には防水処理を施し、ドレン配管を設置。さらに、漏水検知帯による中央監視システムと、漏水検知シールによる視覚的な位置特定を組み合わせることで、迅速な対応が可能です。
ラック内で漏水が検知された場合は、即座にサービスデスクへ通報され、顧客にも連携される仕組みが整っています。また、冷却配管・電源・ネットワークはそれぞれ分離して配置されており、特に電源は天井ラダーに配線することで、漏水時の漏電事故を防止する設計となっています。
冷水配管は2N構成で冗長性を確保し、障害発生時にはバルブ操作により影響範囲を最小限に抑えることができます。これらの対策により、液冷方式の導入に伴うリスクを最小限に抑えつつ、高負荷サーバーの安定運用を実現しています。安全性と運用品質を両立する設計思想は、AI時代のデータセンターに求められる新たなスタンダードとなりつつあります。
- 水漏れ検知センサーによる即時対応体制。
- 電源・ネットワーク・冷却配管を分離配置し、安全設計を徹底。
- 顔認証による入退館管理を導入し、セキュリティも強化。





環境対応と今後の展望
キヤノンITソリューションズでは、液冷方式による冷却技術の導入に加え、環境負荷の低減と持続可能なデータセンター運営に向けた取り組みを積極的に進めています。特に注目すべきは、非化石証書を活用したCO₂削減支援サービスの提供です。これは、お客さまの削減目標に応じて環境価値を市場から調達し、IT機器の電力使用に伴う環境負荷を補完する仕組みで、企業のESG対応にも貢献します。
また、日々の省エネルギー活動の成果として、西東京データセンターは2025年に東京都の「特定地球温暖化対策事業所」のトップレベル認定を取得。この認定は都内約1,200事業所のうち、わずか5.6%にしか与えられておらず、データセンターとしては全国でも数少ない事例です。認定にあたっては、コンサルに頼らず自社でノウハウを蓄積し、要員育成を行った点が高く評価されました。
さらに、設備の安定稼働を支える技術として、AIを活用した故障予兆検知の実証実験も進行中です。センサーで取得した振動データをAIが学習し、異常の兆候を早期に検知することで、予防保守の精度向上を目指しています。これらの取り組みは、環境対応だけでなく、運用品質の向上にもつながるものであり、今後のデータセンターの在り方を示す先進的なモデルとなっています。






- 非化石証書を活用したCO₂削減支援サービスを提供。
- 東京都の「特定地球温暖化対策事業所」に認定。
- AIを活用した故障予兆検知技術の実証実験も進行中。
キヤノンITソリューションズは、液冷方式による冷却サービスを通じて、AI時代に求められる高負荷サーバーの安定運用と環境負荷の低減を両立するソリューションを提供しています。西東京データセンターでは、他社に先駆けて液冷方式を導入し、設計・施工・運用に至るまでのノウハウを蓄積。安全性・信頼性・省エネ性を兼ね備えたインフラを構築し、実績を重ねています。
また、設備運用の品質向上にも力を入れており、専門分野のスペシャリストによる障害対応訓練や、AIを活用した故障予兆検知技術の研究開発など、先進的な取り組みを継続しています。これらの活動は、単なる技術提供にとどまらず、お客さまのITインフラに対する安心・安全・持続可能性を支えるものです。
私たちは、お客さまに寄り添いながら、共に価値を創出していけるパートナーでありたいと考えています。今後も、データセンターをはじめとするITインフラサービスを通じて、社会と企業の発展に貢献してまいります。まずはお気軽にご相談ください。
高性能なGPUサーバにも対応した液冷方式によるハウジングサービスを提供
液冷サーバーのハウジングサービスなら西東京データセンター

自然災害の影響を受けにくい武蔵野台地に立地した西東京データセンターは「ティア4レベルの高性能ファシリティ」、「世界基準の運営品質を証明する認証取得」、「充実したSEサービス」が評価され、金融業、製造業、クラウド事業者など数多くの企業にご利用頂いております。高性能なGPUサーバにも対応した液冷方式によるハウジングサービスも提供しております。
液冷サーバ導入の課題に対するソリューションとして、液冷サーバ対応のハウジングサービスを西東京データセンターにて提供しています。短納期でGPUサーバ・HPCサーバに適したITインフラ環境を提供します。詳しくは西東京データセンター特設サイトでご覧ください。
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