製造業におけるデジタルトランスフォーメーション:エンジニアリングDXとはコラム
公開日:2021年3月11日

PLMソリューションのコンサルタントがお送りする「PLM連載コラム」です。第1回は、キヤノンITソリューションズが提唱する製造業のデジタルトランスフォーメーション「エンジニアリングDX」のご紹介です。
多くの企業が市場競争を勝ち抜くためデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の取り組みを活発化しています。製造業におけるDXは、デジタル技術により、ものづくりのプロセスそのものを変革することに他なりません。本コラムでは、PLMをプラットフォームとし、IoT、xRでデジタルデータ活用を加速するキヤノンITソリューションズの「エンジニアリングDX」をご紹介します。
エンジニアリングDXのコンセプト
DXの定義

DXは、「データとデジタル技術を活用して、業務やビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。単純なデジタル化、IT化により特定業務の効率化をめざす、「デジタイゼーション」ではなく、デジタル化によって業務プロセスやビジネスモデルを変革する「デジタライゼーション」の延長線上にある、と捉えることができます。長期的かつ戦略的にデジタル技術の活用を進め、持続的に成長し続ける企業体質に革新していくDXは、あらゆる産業において必須の取り組みとなりつつあります。
キヤノンITSが提唱する「エンジニアリングDX」とは

製造業におけるICTの活用は、大きく分けて「サプライチェーン」と「エンジニアリングチェーン」の領域が対象になります。
サプライチェーンの領域では、ERPで企業体力を強化することにより、最適かつスピーディーな供給連鎖を目指します。エンジニアリングチェーンの領域では、PLMで企業価値の向上を図り、市場が求める製品を設計・開発する仕組みを作ります。
キヤノンITソリューションズが提唱する「エンジニアリングDX」はこれらの領域を基盤としており、ERP側の実績データとPLM側のマスタデータをIoTでつなげxRで可視化することで、イノベーションが生まれる土壌を作り、新たな収益モデルの創出を目指します。
エンジニアリングDXにおけるデジタルデータ活用
エンジニアリングDXでのデジタルデータの活用はエンジニアリングチェーン全体に広がります。

エンジニアリングチェーンの上流では、CADで製品データを「作」りPLMにマスタデータとして「貯」めていきます。PLM側のマスタデータは、ERPの実績データやIoTで収集されるセンサー情報と「繋」がります。コンテンツとして存在していた個々のデジタルデータが関連づき、利用者の役割や状態に応じた形、つまりコンテキストとして情報が提供されます。ARやVR、MRで可視化し、エンジニアリングチェーン全域で「使」うことで、業務プロセスは変革します。
エンジニアリングDXがもたらす業務変革
製造業のよくある課題

お客さまの現場でよく耳にする課題をいくつかピックアップしています。
マーケティング・製品企画では市場調査のスピードアップ、設計開発現場では解析スキルの向上、生産現場ではトラブル予測・予防や技術者のノウハウ継承問題、営業現場では旧来の営業スタイルからの脱却など、皆さまがそれぞれの立場で課題とされているものもあるのではないでしょうか。
エンジニアリングDXがもたらす業務変革

エンジニアリングDXは、これらの課題を持つ業務を一変します。
3Dモデルから作成したARデータを活用し、新たなマーケティング手法を確立する。IoTを介しセンサーから得た実績値を用いてリアルタイム解析、デジタルツインで評価するなど、試作や解析のプロセスを変革する。センサーから得たアラートでトラブルを回避、ARを利用した作業指示で危険な作業を防止する。トレーニングにMRやARを活用、言葉や時間の壁を越えたノウハウの継承を実現する。販売、保守サービスなど、対面、現物を前提としていた業務も、IoTやxRの活用によりそのスタイルは変貌します。
エンジニアリングDX推進のポイント
はじめの一歩はPLMから
IoTやxRなどの最新のデジタル化技術で業務は大きく変革しますが、IoT導入だ、xR導入だと短絡的に進めると、その多くは良い結果を生んでいないようです。PoC(概念実証)は成功するかもしれませんが運用定着には至りません。いざ運用となった途端、「製品マスタデータが正確に管理されていない」あるいは「実績データにアクセスできない」という問題に直面します。
製造業におけるDX、エンジニアリングDXのはじめの一歩はPLMシステムによるマスタデータ管理です。製品のマスタデータ管理が”ずさん”であれば、xR空間上には正しくない製品形状が表示されます。せっかく取得したセンサー情報も正しくない部品構造にフィードバックしては品質は一向に上がりません。
製品ライフサイクル全域にわたるデジタルデータを一元管理するPLMシステムはエンジニアリング領域におけるプラットフォームとなり、エンジニアリングDXの根幹です。「PLMに正確かつ一元化された情報を管理できた」ということは、すなわち「エンジニアリングDXの準備が完了した」という状態に他なりません。
DXはスモールスタートが原則
PLMで足元が固まれば、いよいよIoT、xRの活用に目を向けます。
DXがなかなか進まない最も大きな理由は、投資対効果が算定しにくく投資の妥当性を判断しづらいことです。「効果が出るまでに時間がかかる」「何がメリットか深く考えられていない」「自社の構想やベンダーからの提案が大がかり過ぎて費用や期間が受け入れられない」など、皆さまの頭を悩ませているものもあるのではないでしょうか。
エンジニアリングDXの推進は、目的や対象業務を絞ったスモールスタートが原則です。
DXは組織横断的な活動であるためトップダウンで進めますが、業務プロセスを変革する取り組みには必ず無意識の抵抗勢力が存在します。スモールスタートで小さな成果を素早く出す「quick win」の思考が必要です。投資規模を抑え、小さな成果を提示する、早期に課題の改善を繰り返しつつ、対象業務や対象部門・拠点を増やし、改革の領域を拡大していく方法をとることが、エンジニアリングDX成功の秘訣です。
最後に
エンジニアリングDXの推進は喫緊の課題です。
まずはデジタルデータを一元管理するPLMシステムの構築が最優先です。エンジニアリングチェーンマネジメントのプラットフォームを確立することがはじめの一歩です。
IoT、xRの活用はスモールスタートで進めます。成果を素早く提示し、段階的に改革の範囲を広げていく、まさに”Think big, Start small, fail quickly and scale fast”の実践です。
私どもキヤノンITソリューションズは皆さまのDXの推進を全力でサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
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