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「ネットワークカメラの選定」[2023.10.13]
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シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第40回)
「ネットワークカメラの選定」[2023.10.13]

ネットワークカメラ

昨今、ネットワークカメラ専用の画像処理ツール(キヤノン製品では、Vision Edition)の登場により、ネットワークを利用した巡視点検や安全確認、物流支援、目視点検の自動化など、簡易に導入できることもあり、新規設置に関するお問い合わせが多数寄せられるようになってきました。特に、ネットワークカメラは、産業用カメラと異なり、レンズ機能と駆動部を含むため、仕様の見方に関するものが多く、今回は、ネットワークカメラの仕様の見方、選定方法についてご紹介します。

ネットワークカメラとは

ネットワークカメラとは、IPカメラと呼ばれ、1台に1つのIPアドレスを設定でき、簡単にインターネット接続、複数台でのネットワーク通信が行えるカメラです。産業用カメラ(固定焦点で駆動部を持たないカメラ)と異なり、パン、チルト、ズーム、オートフォーカスにより、広域な視野と視野制御による高解像度撮影が特徴です。双方向ネットワーク通信により、カメラの撮像制御(パン、チルト、ズーム、フォーカス、露光制御、撮像、停止など)と映像データの送信制御が行え、ネットワークカメラに対応した画像処理ツールを利用することで、簡易にシステム化可能となっています。 監視や見守りなどセキュリティ関連から、物流支援、ロボット制御、巡視点検の自動化など活用の幅を広げています。ネットワークカメラと画像処理を組み合わせたシステム事例については、コラム第34回の「ネットワークカメラソリューション」で紹介していますので、ご参考ください

ネットワークカメラの選定方法(仕様書の見方)

ネットワークカメラの選定方法

画角に対する視野の計算方法

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ネットワークカメラに関する質問では、「視野」、「解像度」、「耐環境」の質問が多く寄せられます。まず、「視野」については、パン、チルト、ズームにより、自由に視野を変えられるため、1回の撮像で撮像できる視野についての質問が多いです。仕様では、水平画角と垂直画角で表されます。

例えば、水平画角(W-T)62.4°-3.3°、垂直画角(W-T)36.3°-1.9°などと表記されています。W-Tは、ズームレンズの広角か望遠のことで、それぞれの状態で、画角が変わるため、最大広角と最大望遠の際の画角を示しています。ちなみに、Wは、wide-angle lens(ワイドアングルレンズ )で広角、 Tは telephoto lens(テレフォートレンズ)で 望遠を指します。

「視野」は、カメラから被写体までの距離に比例し広くなります。図1の通り、直角三角形の底辺と高さの関係が、距離と視野の半分に相当しますので、tanΘx距離の2倍が、その距離での視野となります。カメラの仕様にある水平画角と垂直画角は、直角三角形での2倍角となるため、角度を1/2にし計算します。画角に対しては、事前に角度の1/2のtanを求め、その2倍を計算しておくと、あとは、被写体までの距離の何倍に相当するかがわかります。カメラと被写体までの距離に対して、画角30°は約0.5倍、画角60°は約1倍、画角90°は約2倍、画角120°は約3.5倍が目安となります。

「解像度」は、視野に対してのカメラ画素数で決まりますが、通常の監視用途や見守り用途で記録用として録画する場合であれば、目視確認できればよいことになりますが、画像処理を実施する場合は、用途に応じ、被写体に対する分解能が必要となります。例えば、食品ラベルや物流で利用されるJANコードやQRコードをカメラで撮像し、自動認識させる場合、ラインの隔が3画素以上必要となり、白黒が交互の場合、黒ラインの間隔が6画素となるため、20x6画素で120画素必要となります。そのため、コード認識をする場合は、ワイドのままの画角で分解能が満たない場合は、ズームをして、視野を狭め分解能を高めて画像処理する必要があります。

「耐環境」については、屋外対応(雨天対応含む)か否か、夜間対応か否かがあります。
屋外対応では、親水シールドやウェザーシールドのあるもの、夜間対応では、最低被写体照度を確認ください。親水シールドやウェザーシールドでは、雨水の他、汚れや、ホコリにも有効です。照度については、コラム第27回「産業用照明について その1」で紹介していますので、ご参考ください。

ネットワークカメラのラインナップ

参考までに、キヤノンとAXISのネットワークカメラリストをご紹介します(PDF資料1: network_camera_canon.pdf 、PDF資料2: network_camera_axis.pdf )。
どちらのラインアップも同じ項目で、型式、解像度、画角、最低被写体照度、屋外屋内対応、ズーム機能有無、フレームレート、外形寸法を記載しました。選定としては、屋外対応か否か、夜間など最低照度が小さいものを選定するか、また、水平、垂直画角、画像処理に必要な解像度を有しているか、または、ズーム機能で視野を制御し分解能を補えるかを確認します。

今回のまとめ

今回は、ネットワークカメラの選定方法、視野、解像度、耐環境など仕様の見方についてご紹介しました。弊社では、お客様の用途に合わせた最適な構成をご提供しています。ネットワークカメラを用いたシステム構成をご検討の際は、是非ご連絡ください。

  • ネットワークカメラソリューションについては、第34回第38回コラムも、ご参考ください。

 

筆者紹介

シニアアプリケーションスペシャリスト 稲山

稲山 一幸(いねやま かずゆき)

エンジニアリング事業 シニアアプリケーションスペシャリスト

1992年住金制御エンジニアリング入社、Matrox社製品の国内総代理店立ち上げに参画、以降25年マシンビジョン業界に携わる。
2013年~2016年、キヤノン株式会社にてマシンビジョン関連の新製品開発のソフトウェアリーダとして従事。現在は、エバンジェリストとして活躍中。

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