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~サプライチェーンにおける排出量削減の取り組み~[2023.12.14]
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コラム|カーボンニュートラルとSCM
~サプライチェーンにおける排出量削減の取り組み~[2023.12.14]

カーボンニュートラルとSCM

昨今、経済・社会環境は急激に変化し続けています。それによっておこる社会課題やトレンドに対し、需要予測・需給計画は柔軟に対応していく必要があります。

そこで本コラムでは、需要予測・需給業務の担当者や最新のトレンドを学びたい方向けに、今後必要とされる需要予測・需給計画の取り組みやポイントについて、弊社コンサルタント独自の視点で解説します。

カーボンニュートラルとSCM

日本は2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。
これにより国だけではなく、企業や個人もカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めることが求められています。
既に実現に向けた取り組みをしている企業も多いと思いますが、今回はSCMの観点からカーボンニュートラルへの取り組みを考えてみます。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという概念です。ポイントは「全体としてゼロにする」ということで、排出量から吸収・除去量を差し引いた合計をゼロにすることを意味しています。吸収・除去可能な量まで温室効果ガスの総排出量を削減しつつ、吸収・除去する技術を取り入れていくことが必要になります。
カーボンニュートラルを実現するために以下のような技術の研究・普及活動が行われています。

  • 太陽光、風力など自然エネルギーを活用した「再生可能エネルギー」
  • 自動車や産業機械などの動力源を、化石燃料から電気や水素にシフトする「電動化/水素化」
  • 工場や発電所等から排出されたCO2を回収し、貯留または有効利用する「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」

これらはほんの一例ですが、各企業は、このような技術も活用し、今後どのようにカーボンニュートラルを実現していくか、実行に移すことが求められています。
企業全体で取り組む必要があるため、例えばカーボンニュートラル推進の専門部隊を設立し、部門横断的な活動ができるような体制作りなども考えていく必要があるかもしれません。

サプライチェーン排出量

SCMの観点で注目されているのがサプライチェーン排出量です。サプライチェーン排出量とは原材料調達・製造・物流・販売・廃棄などの一連の流れ全体から発生する温室効果ガス排出量のことです。サプライチェーン排出量はScope1、Scope2、Scope3の3つに分類されます。Scope3はさらに15のカテゴリに分類されます。(図1)

  • Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
  • Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  • Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

このサプライチェーン排出量を算定・可視化することが非常に重要で、サプライチェーン排出量を可視化することで優先的に削減すべき対象選定、目標設定ができます。
また、サプライチェーン排出量を開示することでESG評価を高めることもできます。昨今は自社の排出であるScope1,2だけでなく、他事業者との連携が必要なScope3の排出量が特に注目されています。他事業者と連携することでサプライチェーン排出量削減施策の選択肢が増え、双方でサプライチェーン排出量削減を実現することも可能です。
ではサプライチェーン排出量を削減する取り組みにはどのようなものがあるでしょうか。

図1 サプライチェーン排出量におけるScope1、Scope2及びScope3のイメージ

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図1 サプライチェーン排出量におけるScope1、Scope2及びScope3のイメージ
(「サプライチェーン排出量算定の考え方」(環境省)(https://www.env.go.jp/)を元にキヤノンITSにて加工)

グリーンSCM

サプライチェーン排出量を削減する取り組みの1つとしてグリーンSCMがあります。経済効率と環境負荷軽減の両立を目指す取り組みで、具体的には以下のような取り組みがあります。

◆グリーン調達

調達領域において、環境負荷の高い原材料や部品使用量を減らすことでサプライチェーン排出量を削減する取り組みです。
例えば、環境基準を満たすサプライヤーを優先的に選択したり、サプライヤーに環境改善を促したりするなどの取り組みがあります。

◆工場におけるゼロエミッション活動

製造領域において、工場内で出る廃棄物を再利用したり外部に出さないようにしたりすることで、資源の有効活用と廃棄物の削減を目指す取り組みです。
例えば、再生可能エネルギー設備の設置、製造過程で出る食品廃棄物を飼料や肥料に再利用するなどです。

◆スマートロジスティクス

物流領域において、物流センターや配送車両にAIやIoTなどのデジタル技術を導入することで、物流の効率化と省エネ化を図る取り組みです。
例えば、物流センターでの作業の自動化、配送ルートの最適化、電気自動車や水素自動車の導入などです。

上記は取り組みの一例で、他にも各企業で様々な取り組みが行われています。

おわりに

今回はカーボンニュートラルに対する取り組みについてご紹介しました。企業全体のカーボンニュートラルを達成するための具体的な方法やシナリオ策定は、どの企業でも苦労されていると思います。具体的に何をして良いかわからない、という方も少なくないかもしれません。まずはスモールスタートで1つの商品やカテゴリに絞ってカーボンニュートラルを実践してみる、というのも1つの手段として有効であると考えます。そこから知見を得て、徐々に対象範囲を広げていくことで企業全体のカーボンニュートラル実現の足掛かりとなります。
そのためにも「サプライチェーン排出量の算定・見える化」をすることが重要です。「サプライチェーン排出量の算定・見える化→削減対象選定・目標設定→削減計画策定→削減計画実行→対象範囲の拡大・さらなる効率化」というプロセスでカーボンニュートラルの実現を目指しましょう。

筆者紹介

五島 悠輝

五島 悠輝(ごしま ゆうき)

キヤノンITソリューションズ株式会社 R&D本部 数理技術部 アプリケーションスペシャリスト。

需要予測・需給計画ソリューション FOREMAST(フォーマスト)のシステム導入プロジェクトに従事。

関連書籍など

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どのような需要予測システムを導入すればよいかお悩みの方のために、実務に精通したコンサルタントが基本知識からシステム導入時に考慮すべきポイントまでをやさしく解説しています。

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キヤノンシステムソリューションズ株式会社数理技術部[編]
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■出版社:東洋経済新報社
■発売日:2004年12月22日
■ISBN:4492531874
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