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~インフルエンサーが与える、需給業務への影響とは~[2021.03.04]
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コラム|SNSと需給
~インフルエンサーが与える、需給業務への影響とは~[2021.03.04]

SNSと需給

昨今、経済・社会環境は急激に変化し続けています。それによっておこる社会課題やトレンドに対し、需要予測・需給計画は柔軟に対応していく必要があります。

そこで本コラムでは、需要予測・需給業務の担当者や最新のトレンドを学びたい方向けに、今後必要とされる需要予測・需給計画の取り組みやポイントについて、弊社コンサルタント独自の視点で解説します。

SNSと需給

私がまだ学生の頃(もう20年近く前になりますが笑)、電車に乗ると音楽を聴いたり、新聞や雑誌、書籍などを読んだりしている人がちらほらいる感じでしたが、今は周りを見ると、ほとんどの人がスマートフォンを使用していますよね。
MMD研究所が2020年2月に配信した『2019年版:スマートフォン利用者実態調査』(※)によると、スマートフォン所有者に最も良く利用するアプリを上位3種聞いたところ、SNSが28.7%と最も多くなっています。SNSは、スマートフォンの普及によって、瞬く間に利用者が増えてきました。

本コラムでは、こういった『スマフォファースト』と呼ばれる現代での、SNSと需給の関係について考えていきたいと思います。

需給の仕組み

『需給』とは、需要と供給のことです。将来に売れる量を計画し、現在の在庫状況や商品の調達リードタイムなどを考えながら、欠品しないように工場へ生産依頼したり、サプライヤーへ発注したりします。ここでは、製造メーカーを例に挙げて、一般的な需給の仕組みについて確認していきます。

消費者は、商品を提供する店舗で料金を支払うことで、商品を購入することができます。そうすると、店舗の在庫が減り、品薄になるとメーカーへ発注し、メーカーは店舗に対して商品を出荷します。

この時、メーカーの在庫がまだたくさんあれば問題ないですが、なければ工場に対し生産依頼を行います。このように、需給の仕組みにおいて、出荷は重要な情報であることがわかります。

需給の仕組みの説明図

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では、SNSはこのような需給に対し、どういった影響を与えるのでしょうか。

SNSが与える需給への影響

SNSには多くのユーザーにフォローされている『インフルエンサー』が存在します。このインフルエンサーが、このメーカーの商品について良い内容を投稿すると、フォローしている大勢のユーザーに対し、一斉に強い購買意欲を与えるため、一気に店頭在庫がなくなり、メーカーへの発注が集中してメーカー在庫で欠品が発生してしまいます。メーカーはこれを回避するために、工場に対し緊急生産依頼を行いますが、工場にしてみると、急な生産計画の変更や残業対応、また資材の調達などに悩むことになります。また、緊急生産できたとしても、生産が終わってメーカー在庫が増えたころには、すでに消費者の購買意欲が薄まっていて、結局在庫過多となる場合もあります。また、店舗とメーカー間に卸が入るような販売形態の場合、流通在庫や卸の在庫も関連してくるため、さらに問題が複雑になってきます。

SNSが与える需給への影響の説明図

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このように、SNSは需給に対し、大きな影響を与えることが分かったかと思います。では、どうすればこういった問題を解決できるのか、考えてみたいと思います。

SNSを活用した需給

先ほどの例の問題点を整理してみると、以下の2つが考えられると思います。
①複数のインフルエンサーが存在するが、不特定である
②メーカーが知らない間に、短期間で爆発的に話題が広がる(バズる)


つまり、これを解決するためには、インフルエンサーを特定し、メーカーが投稿をチェックができれば、今までより早く対応できるようになり、工場へも余裕を持った生産依頼が可能になる、ということが分かります。

では、どうやってインフルエンサーを見つけるのか。その方法の一つが、VOC(Voice of Customer)分析ツールの活用です。SNSなどから顧客の声である投稿を収集し、有益な情報を抽出して、業務改善に役立てることができます。例えば自社の商品を登録しておき、その商品に関する投稿を収集すれば、その投稿に登場するユーザー名やフォロワー数が把握でき、インフルエンサーの発見が効率的に行えるようになるかもしれません。

SNSを活用した需給の説明図(VOC分析ツールの活用の場合)

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また、SNSを活用することが難しい場合でも、ほかのデータを使うことで今までより早く対応できる方法もあります。それは、店舗のレジで商品が販売されたときに記録されるPOSデータです。POSデータを監視することで、急激な需要変動をキャッチすることができ、今までより早く対応することが可能です。

SNSを活用した需給の説明図(POSデータを監視の場合)

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これまでのように、自社の出荷(=在庫状況)を確認して対応していたのでは、どうしても後手に回ってしまいます。ITの普及とともに、SNSデータやPOSデータなどを大量に、早く、簡単に取り扱うことができるようになってきましたので、適切に活用して、先手の需給を実現していきましょう。

筆者紹介

大下 吾朗

大下 吾朗(おおした ごろう)

R&D本部 数理技術部 シニアコンサルティングスペシャリスト

米国PMI認定プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル。
需要予測・需給計画ソリューション FOREMAST(フォーマスト)の開発およびシステム導入プロジェクトに従事。
主に在庫補充量計算に関する機能設計・開発を担当。

関連書籍など

在庫管理のための需要予測入門

FOREMAST担当コンサルタントが執筆した需要予測入門書です。
どのような需要予測システムを導入すればよいかお悩みの方のために、実務に精通したコンサルタントが基本知識からシステム導入時に考慮すべきポイントまでをやさしく解説しています。

在庫管理のための需要予測入門

キヤノンシステムソリューションズ株式会社数理技術部[編]
淺田 克暢+岩崎 哲也+青山 行宏[著]
■出版社:東洋経済新報社
■発売日:2004年12月22日
■ISBN:4492531874
■価格(税込):1,980円

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