2024年1月改正の電子帳簿保存法のスキャナ保存要件とメリットを解説トレンド情報
公開日:2023年12月29日
2024年1月に改正される電子帳簿保存法では、スキャナ保存の要件が緩和される予定です。スキャナ保存とは、紙の領収書や請求書などの帳簿書類をスキャナで読み取り、電子データとして保存することができるという法律です。
スキャナ保存には、紙の書類の保管スペースや管理コストを削減できることや、電子データとして保存することで、検索や分析が容易になり、経営効率の向上につながるといったメリットがあります。
しかし、スキャナ保存には、データの保存方法や期間などの保存要件があるため、注意が必要です。
そこで今回は、2024年1月改正の電子帳簿保存法のスキャナ保存要件とメリットを詳しく解説します。企業の会計や経理業務に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
電子帳簿保存法のスキャナ保存とは?
電子帳簿保存法のスキャナ保存とは、国税関係書類を紙で保存する代わりに、スキャナで読み取って電磁的記録により保存する制度です。
スキャナ保存の対象となる書類は、消費税法や所得税法などの国税法に基づいて作成又は受領した書類で、帳簿や証憑として必要なものです。
スキャナ保存を行う場合には、スキャナの種類や性能に関する要件を満たす必要があります。
具体的な要件は、以下のようなものです。
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✔スキャナは、国税関係書類の受領をする者が使用するものであること。
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✔スキャナは、国税関係書類の大きさに応じた読み取りができるものであること。
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✔スキャナは、国税関係書類の読み取り時の解像度が25.4ミリメートル当たり200ドット以上であること。
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✔スキャナは、国税関係書類の色や文字の濃淡を正確に再現できるものであること。
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✔スキャナは、国税関係書類の読み取り後に、その書類の大きさや読み取り日時などの情報を付加できるものであること。
スキャナ保存の制度や要件についての詳しい内容は国税庁のホームページやパンフレットをご参照ください。
電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の改正点
電子帳簿保存法は、2024年1月1日に改正され、利用しやすくなります。
今回の改正の主なポイントは、以下のとおりです。
税務署長の事前承認制度の廃止
2024年1月1日の改正では、税務署長の事前承認制度が廃止されます。
これまでは、スキャナ保存を利用するために、3か月前までに申請書類を提出して承認を受ける必要がありました。しかし、今回の法改正により、この承認を受ける必要がなくなります。
スキャナ保存の要件緩和
2024年1月1日の改正では、スキャナ保存のための要件が緩和されます。
具体的な緩和要件は、タイムスタンプ要件の緩和です。これまでは、書類の受領者が受領後3営業日以内にスキャナで読み取り、タイムスタンプを付与する必要がありました。しかし、今回の改正後は、受領後最長2か月+7営業日以内にスキャナで読み取り、タイムスタンプを付与すれば良いことになります。
検索要件の緩和
2024年1月1日の改正では、検索要件が緩和されます。
検索用の記録項目として、取引年月日、取引金額、取引先のほか、勘定科目など書類の種類に応じた主要項目を設定する必要がありました。しかし、今回の改正後は、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定されます。
データの解像度・階調・大きさに関する情報の保存が不要に
2024年1月1日の改正では、これまで必要とされていた、国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度・階調・大きさに関する情報の保存要件が廃止されます。
なお、改正の適用時期は、2024年1月1日以降にスキャナ保存が行われる国税関係書類について適用されます。もし、改正前の要件に従ってスキャナ保存を行っている場合は、そのまま継続して利用することが可能です。
2024年1月1日のスキャナ保存制度の改正により、スキャナ保存の手続きや管理が簡素化され、経理の効率化やコスト削減につながると考えられます。一方で、スキャナ保存の対象となる書類は、決算関係書類を除く国税関係書類に限られているため、電子帳簿等保存や電子取引との整合性や一元管理にも注意が必要です。
スキャナ保存制度を導入する際には、自社の経理業務やシステムに合わせて、適切な方法を選択することが重要です。
電子帳簿保存法のスキャナ保存のメリットと具体事例
紙の書類の保管や管理の手間やコストを削減できる
スキャナ保存を利用することで、紙の書類の保管スペースや保管期間、保管方法などに関する制約がなくなります。また、紙の書類の紛失や破損のリスクも低減できるでしょう。
例えば、ある企業では、スキャナ保存を導入することで、紙の書類の保管にかかっていた年間約30万円のコストを削減できたという事例があります。
電子データとして保存することで検索や分析が容易になり、経営効率の向上につながる
スキャナ保存を利用することで、国税関係書類を電子データとして一元的に管理できます。これにより、必要な書類を素早く検索したり、書類の内容を分析したりすることが可能です。
例えば、ある建設会社では、スキャナ保存を導入することで、書類の検索時間を約90%短縮できたという事例があります。また、書類の内容を分析することで、収支や財務状況などの経営情報を把握しやすくなり、経営判断の精度やスピードを向上させることも可能です。
電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件
届出について
スキャナ保存を行う場合には、原則として税務署長への届出は不要です。
ただし、過去分の重要書類をスキャナ保存する場合には、税務署長への届出が必要です。この場合の届出書の様式は、国税庁のホームページで確認できます。
入力方式について
スキャナ保存を行う場合には、国税関係書類の入力方式として、以下の3種類のいずれかを選択する必要があります。
速やかに入力する方式
国税関係書類の受領等後、速やかにスキャナで読み取り、タイムスタンプを付与します。速やかにとは、おおむね7営業日以内とされています。
業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力する方式
国税関係書類の受領等後、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかにスキャナで読み取り、タイムスタンプを付与します。
通常の期間とは、例えば月次決算の場合は翌月末までとされています。
適時入力する方式
国税関係書類の受領等後、適時スキャナで読み取り、タイムスタンプを付与します。
適時とは、例えば日次処理の場合は当日中とされています。
保存媒体について
スキャナ保存を行う場合には、電磁的記録の保存媒体として、以下のいずれかを使用する必要があります。
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✔ハードディスクや光ディスクなどの内部記憶媒体
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✔USBメモリやSDカードなどの外部記憶媒体
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✔クラウドサービスなどのネットワーク上の記憶媒体
保存媒体には、以下の要件を満たすものを使用する必要があります。
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✔電磁的記録の書面への出力が可能なもの
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✔電磁的記録の検索機能が備わっているもの
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✔電磁的記録の訂正や削除の履歴が確保できるもの
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✔電磁的記録の入力を行う者やその者を直接監督する者の情報を確認できるもの
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✔適正な実施を確保するために必要な体制や手続に関する規程が備え付けられているもの
保存期間について
スキャナ保存を行う場合には、電磁的記録の保存期間として、以下のいずれかを選択する必要があります。
7年間保存する方式
国税関係書類の受領等後、7年間電磁的記録を保存すること。この場合、紙の書類はスキャナで読み取った後、即時に破棄してもよいことになっています。
1年間保存する方式
国税関係書類の受領等後、1年間電磁的記録を保存すること。この場合、紙の書類はスキャナで読み取った後、1年間保管する必要があります。
訂正削除履歴の確保について
スキャナ保存を行う場合には、電磁的記録の訂正や削除の履歴を確保する必要があります。これは、電磁的記録の信頼性や正確性を担保するためです。
また、訂正や削除の履歴を確保する方法としては、以下のようなものがあります。
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✔バージョン管理ソフトなどの市販ソフトを使用する方法
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✔自社開発システムなどで訂正や削除の履歴を記録する方法
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✔訂正や削除ができないシステムを使用する方法
電子帳簿保存法のスキャナ保存の注意点
電子帳簿保存法のスキャナ保存とは、紙の書類をスキャナで読み取って電子データとして保存することですが、下記で解説する一定の要件を満たさなければなりません。
そこで、スキャナ保存に関する注意点を解説します。
消費税の仕入税額控除の条件や方法
スキャナ保存を行う場合でも、消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として紙の請求書や領収書を受領する必要があります。
ただし、電子的に発行された請求書や領収書(電子請求書)を受領した場合には、一定の要件を満たせば、スキャナ保存した電子請求書を仕入帳に代えて保存することが可能です。
電子請求書の要件としては、以下のようなものがあります。
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✔発行者の署名や押印があること
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✔発行日や発行番号が明記されていること
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✔売上の内容や金額、消費税額が記載されていること
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✔電子的に発行されたことが確認できること
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✔電子的に発行された後に改ざんされていないことが確認できること
電子請求書をスキャナ保存する場合には、以下のような方法があります。
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✔電子請求書を印刷してスキャナで読み取る方法
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✔電子請求書をPDFや画像ファイルなどに変換して保存する方法
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✔電子請求書をそのまま保存する方法
いずれの方法を選択する場合でも、電子請求書の真実性や可視性を担保するために、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。
スキャナ保存の対象外となる書類やデータ
スキャナ保存の対象となるのは、国税関係書類のうち、決算関係書類を除くものです。
決算関係書類とは、以下のようなものです。
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✔貸借対照表や損益計算書などの決算書類
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✔棚卸表や減価償却資産台帳などの税務関連帳簿
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✔税務申告書や納税証明書などの税務関連書類
これらの書類やデータは、紙のまま保存するか、電子帳簿保存等の方法で保存する必要があります。
スキャナ保存の際に発生するリスクや対策
スキャナ保存には、以下のようなリスクがあります。
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✔スキャナで読み取ったデータが不鮮明や欠損などで見えにくい場合があること
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✔スキャナで読み取ったデータが誤って訂正や削除されたり、紛失や破損したりする場合があること
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✔スキャナで読み取ったデータが不正に改ざんされたり、漏洩したりする場合があること
これらのリスクを防ぐためには、以下のような対策が必要です。
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✔スキャナで読み取る際には、解像度やカラー画像などの設定を適切に行い、読み取り後にデータの確認を行うこと
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✔スキャナで読み取ったデータは、バックアップや暗号化などの方法で安全に保存し、アクセス権限やログ管理などの方法で適切に管理すること
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✔スキャナで読み取ったデータには、タイムスタンプやバージョン管理などの方法で改ざんの防止や検知を行うこと
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✔スキャナで読み取ったデータに関する規程や手順を作成し、従業員に周知徹底すること
電子帳簿保存法のスキャナ保存を効率化するおすすめのクラウド会計システム
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このオプションを利用することで、以下のメリットがあります。
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✔スキャナ保存に必要な「画像データの作成」や「画像データの管理」を簡単に行うことができる
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✔スキャナ保存に必要な「画像データの品質」や「画像データの整合性」を確保することができる
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✔スキャナ保存に必要な「画像データの検索」や「画像データの閲覧」を効率的に行うことができる
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✔スキャナ保存に必要な「画像データのバックアップ」や「画像データの復元」を安全に行うことができる
以上のことから、スーパーストリームのクラウド会計システムで、2024年1月1日改正の電子帳簿保存法のスキャナ保存を行うことで、以下の効果が期待できます。
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✔紙の帳簿書類の保管や管理にかかるコストや手間を削減することが可能となる
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✔紙の帳簿書類の破損や紛失のリスクを低減することが可能となる
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✔紙の帳簿書類の検索や閲覧の時間を短縮することが可能となる
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✔紙の帳簿書類の税務調査や監査への対応をスムーズに行うことが可能となる
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