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6月の人事労務お役立ち情報|『 テレワーク時の交通費および在宅勤務手当の取扱い』人事労務お役立ち情報

公開日:2021年6月9日


目次

人事労務のお役立ち情報

テレワーク時の交通費および在宅勤務手当の取扱い

コロナ禍でテレワークが急速に拡大しつつある中、これまでの通勤手当を見直したり、新しく「在宅勤務手当」を支給する企業が増えてきています。

そのような状況の中、厚生労働省年金局事業管理課長から日本年金機構事業管理部門担当理事宛に「「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」」の一部改正について」という事務連絡が発出されました。

この事例集には、テレワークにおける交通費および在宅勤務手当の社会保険上の取り扱いが示されています。変更点の概要は以下のとおりです。

  • 在宅勤務・テレワークを導入し、一時的に出社する際の交通費を事業主が負担する場合、その交通費が「報酬等」に含まれるどうかは当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅か事業所かで異なる。
    • (1)
      労務提供地が自宅の場合:

      業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、「報酬等」には含まれない。

    • (2)
      労務提供地が事業所の場合:

      自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、当該費用は原則として通勤手当として「報酬等」に含まれる。

  • 在宅勤務・テレワークに際し、在宅勤務手当が支給される場合「報酬等」に含まれるかは以下の基本的な考え方にのっとり、支給要件や支給実態をふまえ個別に判断される。
    • (1)
      労働の対償として支払われる場合(実費弁償にあたらない):

      在宅勤務手当が、在宅勤務に通常必要な費用として使用されなかった場合でも、その差額を事業主に返還する必要がないものであれば「報酬等」に含まれる。

      • (例)
        毎月5,000円を渡し切りで支給する。
    • (2)
      実費弁償にあたる場合:

      通信に要する費用など、その手当が業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、当該手当は実費弁償にあたるものとして「報酬等」に含まれない。

      • (例)
        労働者が業務のために使用した通信費等を立替払いにより負担した後、その明細書を企業に提出して精算する。
        一括で請求される費用のうち、業務のために使用した部分を合理的に計算し、当該部分を実費弁償分とする。
  • 在宅勤務・テレワークの導入に伴い、新たに実費弁償にあたらない在宅勤務手当が支払われることとなった場合は、
    固定的賃金の変動に該当し随時改定(いわゆる月変)の対象となる。
    • (1)
      同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合:

      それらの影響によって固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定のいずれの対象となるかを判断する。

    • (2)
      新たに変動的な在宅勤務手当の創設と、変動的な手当の廃止が同時に発生した場合:

      創設・廃止される手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できない場合は、3か月の平均報酬月額が増額した場合、減額した場合のどちらも随時改定の対象となる。

    • (3)
      一つの手当において、実費弁償分であることが明確にされている部分とそれ以外の部分がある場合:

      当該実費弁償分は「報酬等」に含める必要はなく、それ以外の部分は「報酬等」に含まれる。
      この場合、月々の実費弁償分の算定に伴い実費弁償分以外の部分の金額に変動があった場合でも固定的賃金の変動に該当しないことから、随時改定の対象とはならない。

新しい働き方の普及に伴い、それに則した社会保険上の取扱いが示された形となります。
一度現在の運用を確認しておくとよいでしょう。

今月の人事労務相談室

通勤手当を定期代から日額に変更した場合の注意点ワーキングホリデー利用者を雇用する時の注意点

【相談内容】

テレワークにより出社回数が少なくなったため、通勤手当をこれまでの定期代支給から日額実費支給に変更しました。
通勤経路は変わりませんが、標準報酬月額の随時改定の対象となりますか?

【社労士のアドバイス】

テレワークで出社の頻度が減れば、ご質問のようにこれまでの定期代支給から出社した分のみ日額で支給する方法に変更することもでてくるでしょう。
通勤経路に変更がなくても、定期代から日額に変更した場合は賃金体系の変更に該当し、随時改定の契機となり得ます。

では、増額改定と減額改定、どちらの対象となるのでしょうか。
定期代は1か月あたり固定された額ですが、日額支給の場合は出社日数に応じて支給額が増減します。
ご相談のケースであれば、総額は従前より下がることが多いかと思われますが、明確には増減比較ができません。

この場合、通勤手当の支給方法が変更されたという賃金体系の変更を契機とし、増額した場合・減額した場合のどちらも随時改定の対象となります。
変更後の賃金体系における初回の支払月を起算月とし、以後継続した3か月間の平均報酬月額が従前に比べ2等級以上の上下の差が生じれば、随時改定を行うこととなります。
(日本年金機構 令和3年4月1日発出事務連絡、および疑義照会より)

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著者プロフィール

アクタス社会保険労務士法人

スタッフ約200名、東京と大阪に計4拠点をもつアクタスグループの一員。 アクタス税理士法人、アクタスHRコンサルティング、アクタスITソリューションズと連携し、 中小ベンチャー企業から上場企業まで、顧客のニーズに合わせて、人事労務、税務会計、システム導入支援の各サービスを提供しています。