まさか!!「ご利用のお知らせ」が適格請求書にならない!? ~NHK、通信会社、電気・ガス・水道などのインボイスはどうやって入手するか~公認会計士 中田清穂のインボイス制度と電子帳簿保存法の解説講座
公開日:2024年1月9日
目次
「ご利用のお知らせ」がインボイスにならないケースがある
10月1日からインボイス制度がスタートしました。
納入業者から入手する請求書や領収書などに、インボイス番号(正確には、適格請求書発行事業者番号)が記載されていないと、適格請求書等(インボイス)としては認められず、消費税の仕入税額控除が認められません。
毎月発生している、電話代などの通信費や水道光熱費関係、さらには、NHKの受信料など、これまで発行されてきた「ご利用のお知らせ」などには、インボイス番号が記載されておらず、インボイスにならないケースがあります。
放っておくと、通信費や水道光熱費について、仕入税額控除が受けられない事態になる可能性があるので、注意が必要です。
NHKのインボイスについて
以下NHKがインボイスの発行について説明しているサイトです。
(https://www.nhk-cs.jp/jushinryo/jigyousho/invoice/)

これを見ると、「ふふ~ん、NHKはちゃんとインボイスを発行しているな。大丈夫だな」と思う方も多いでしょう。
しかし、最初の文章をよく読むと「事業者のみなさまに対して」という表現があります。
つまり、個人で契約している場合は対象にしていないことがわかります。
スタートアップのケースや、従業員が少なく、自宅を会社と兼用しているケースなどでは、個人で放送受信契約を結んで、その領収証などで、会社の経費にしていることもあるかと思います。
そういった場合には、インボイスが発行されない可能性があるということです。
上に示したサイトでは、「住居に接続した店舗を営む個人事業主など」は、NHKに電話するか、所定の申込用紙で、インボイスを発行してもらえるように依頼しなければなりません。
電気代(東京電力の場合)
東京電力のサイトでは、法人も個人事業主も、東京電力の会員サイトでインボイスを発行することが明記されています。
法人は、Web会員サイト「ビジネスTEPCO」あるいは「Web検針票」です。 個人事業主は、Web会員サイト「くらしTEPCO web」あるいは「Web検針票」です。
(https://www.tepco.co.jp/ep/tax/invoice.html)
いずれにしても、サイトからダウンロードするしかないようです。
電子帳簿保存法の「電子取引」に該当しますから、電子帳簿保存法の要件に準拠して、電子的に保存する対応が必要になります。このサイトを見る限り、一部の例外ケースを除き、「紙」でのインボイス発行はされないようです。
ガス代(東京ガスの場合)
東京ガスのサイトでは、以下の方法でインボイスを入手できるようです。
(https://support.tokyo-gas.co.jp/faq/show/12884)
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はがきなどで郵送される「ご使用量のお知らせ(検針票)」を適格請求書として取り扱える。
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家庭・個人事業主は、Web会員サービス「myTOKYOGAS」からインボイスをダウンロードできる。
(現在すでに利用可能:2023年11月よりダウンロード環境を整備完了) -
法人・個人事業主は、Web会員サービス:myTOKYOGASビジネス」からインボイスをダウンロードできる。
(2024年2月以降にダウンロードできるように準備中)
サイトからダウンロードする場合には、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当しますから、電子帳簿保存法の要件に準拠して、電子的に保存する対応が必要になります。
水道代(東京都水道局の場合)
東京都水道局のサイトによると、定期検針時に現地で発行される「お知らせ票(検針票)」について、インボイス対応をしたとのことです。「お知らせ票(検針票)」にインボイス番号を記載することで、法人にも個人事業主にも対応できるので、最も親切な対応と言えるでしょう。
(https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/topic/230831-01.html)

また、上記サイトでは、「PDF及びCSVダウンロードできるようになる予定」との表現があります。サイトからダウンロードする場合には、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当しますから、電子帳簿保存法の要件に準拠して、電子的に保存する対応が必要になります。
なお、一部の情報では、インボイス対応をしていない地方自治体があるという情報があります。
したがって、皆さんの会社の各事業所で利用している水道について、各自治体の水道局がインボイス対応しているかどうか、調査・確認しておくことが望まれます。
電話料金
電話料金については、電気通信事業者ごとに対応が異なるようです。
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NTT
NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ(以下、NTT各社)の利用料金をNTTファイナンスから請求している場合は、NTT各社のインボイス番号を記載したインボイスをNTTファイナンスが代理発行します。
この、NTTファイナンスが提供するインボイスは、毎月の利用料金の請求書とは別に作成し、利用客が自らWebビリングからPDFファイルをダウンロードして入手することになります。
つまり、「毎月の利用料金の請求書はインボイス(適格請求書)ではない」ということですので、要注意です。
(https://www.ntt-finance.co.jp/billing/invoice/)
サイトからダウンロードする場合には、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当しますから、電子帳簿保存法の要件に準拠して、電子的に保存する対応が必要になります。
また、NTTファイナンスから紙で適格請求書を提供することもできます。この場合は電話で該当企業に問い合わせて依頼する必要があります。
(https://www.ntt-finance.co.jp/billing/contact/price.html) -
KDDI
毎月の料金をKDDIから請求している、一般的なサービスについては、「紙請求書」でも「PDF請求書」(WEB de 請求書)でも、インボイスとして利用できます。利用者としては、何の変更もない対応と言えます。
(https://www.kddi.com/corporate/kddi/public/invoice)
なお、「PDF請求書」(WEB de 請求書)をダウンロードする場合には、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当しますから、電子帳簿保存法の要件に準拠して、電子的に保存する対応が必要になります。 -
ソフトバンク
インボイス対応の請求書を発行しています。Webサイトでインボイスを確認・ダウンロードすることもできます。
(https://www.softbank.jp/biz/info/response-invoice)
Webサイトで請求書をダウンロードする場合には、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当しますから、電子帳簿保存法の要件に準拠して、電子的に保存する対応が必要になります。 -
楽天モバイル
楽天モバイルのサイトを見ると、Webサイトで請求書を表示した画面のスクリーンショットを撮るか、PDFファイルをダウンロードする方法しかないようです。
(https://network.mobile.rakuten.co.jp/faq/detail/10000839)
電子帳簿保存法の「電子取引」に該当しますから、電子帳簿保存法の要件に準拠して、電子的に保存する対応が必要になります。
まとめ
電気・ガス・水道、NTT、そして通信事業者など、「大きな組織だから当然インボイス対応をしているだろう」と思い込みがちですが、対応が会社や自治体によって同じではないので、決算処理に入る前に、きちんと調査して、対応を済ませておくことが望まれます。
著者プロフィール
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。