このページの本文へ

ケーススタディー:メーカー販売会社の例データマネジメントサービス

業務で蓄積されたデータ活用の成功例をご紹介いたします。散らばった業務情報を有効に活用するためのヒントとして、ご参照ください。

市場競争が激しくなる中での、生き残りをかけた戦い

背景・経緯

これまで多数の商品を製造・販売し、成功を収めてきたメーカー販売会社のA社ですが、最近では事業存続への危機感を抱いていました。不確実な世の中において事業の維持・成長に悩んでいたA社が、どのようにして解決の糸口を掴んでいったのか、まずはその背景からご覧ください。

見えてきた問題点は、情報の分散

個人向け商品を製造・販売しているA社。近年の人口減少や市場飽和などの外部環境の変化から、このままの販売スタイルでは事業が立ち行かなくなるという強い危機感を抱き始めていました。実際、社会活動の変化やニーズの多様化により、新規顧客の獲得は難易度を増す一方です。他社の参入も進んでおり、市場の競争は激化するばかりでした。そこで、自社の現状整理から始めることにしました。

A社では、量販店を通じた商品販売のほか、オンラインサイトを通じたダイレクトな商品販売も自ら手掛けています。これまで運営してきたウェブサイトの種類としては、商品紹介サイトやECサイト、会員向けのコミュニティサイトがあります。バラバラに散らばる各種ウェブサイト。それぞれが、A社の担当部門ごとに別々で運営されていました。サイト会員にとって不便だったのは、サイト別にログインIDを使い分ける必要があることでした。また、各サイトのデザインも統一されておらず、顧客から見れば同じ企業なのに、ブランドの一貫性が無い印象を与えている状態も問題でした。

対顧客だけではなく、社内業務においても懸念点がありました。顧客の購買履歴やサイト利用状況などの情報が分散しており、商品ごとでも情報が独立しているため、一貫した分析や部門間の連携が行えない状態でした。せっかく多く情報を保有しているのに、これでは顧客のニーズに適する施策を打ち出すことができません。

現状を整理すると、顧客が利用する各種ウェブサイトが複雑に入り乱れていること、販売にかかわる情報※が分散し、適切な連携・分析が行えないことの2点が、おもな問題事象であることがわかりました。

  • 販売にかかわる情報 ・・例えば顧客情報管理システム、受注管理システム、マーケティングツール等で管理される情報

提供するサービス・施策の重複

イメージ画像:As Is(施策の重複)

A社のマーケティング施策から、具体的なシーンをひとつご紹介します。
A社では、自社商品を購入されたお客さまが、お誕生日を迎えるタイミングで、お祝いメールを送付していました。

A社の担当者さま(イメージ画像)

当社では、お客さまの誕生月にメールでプレゼントキャンペーンをご案内していたのですが、商品Xの担当者と商品Yの担当者が、同時に似たようなメールを同じお客さまへ送信してしまうというケースがありました。
お客さまからすると、複数のメールが、同じ会社から届く煩わしさがあります。それに、「A社が、横の連携をとれていないのではないか?」というネガティブな印象を受けることで、ブランド力の低下を招きかねません。

一方で、A社の商品に特に高い関心を持ってくださるお客さまに対しては、より特別なサービスを提供したいとも考えていました。これまで得てきた情報は、蓄積されているものの、それらをどのように活用して、高関与のお客さまを見分ければよいのかがわからず、具体的な手段が見えないことが悩みの種でした。

抱えていた問題事象 

  • 社会環境の変化やニーズの多様化による市場競争の激化
  • 自社が提供するウェブサイト間の分断・情報の分散
  • 部門間の連携が取れず、提供サービスの一貫性が欠如
  • 高関与層の離脱を食い止めたいが、顧客との関係構築を適切に強める術がわからない

顧客理解を深め、想いに響く価値を届けたい

導入前の要望(目指す姿)

顧客のロイヤルカスタマー化

前述のように、将来の事業に対する危機感を感じていたA社。事業存続のためには、今つながっている顧客との絆をより深め、自社の商品を使い続けてもらうことが重要だと考えました。

イメージ画像:To Be(統一性のあるサービスの提供)

洗い出した現状から浮き彫りになったのは、サービス・情報の分散がもたらす顧客の利便性低下と、関係構築力(ブランド力)の低下でした。ウェブサイトを統合することで、顧客の不便を解消すること。集まったデータを効果的に活用することで、より広い視点から顧客理解を深め、適切なサービスを適切なタイミングで届けること。そして、A社の商品に高い関心を寄せる顧客をデータから見分け、より特別な体験を届けること。これこそが、A社の目指したい姿であるということが見えてきました。

これらの目指したい姿を実現するために、「データマネジメント」サービスを利用して、データ活用の基礎づくりから検討を始めることにしました。

データの利活用に向けた取り組み

乱立したウェブサイトを統合、必要な情報を同じ場所に集約

データ活用の基礎を固めるにあたり、各ウェブサイトが持つ情報を、ひとつの基盤(プラットフォーム)上に集約しました(=データ統合)。その統合の過程で、目的別に情報をまとめ、データ形式を標準化していきました。こうすることで、蓄積データを素早く活用できる状態になります。同じプラットフォーム上にデータが集約されたことで、これまで独立していた各サイトのデザイン統一が可能となり、ログインIDの分散も解消できました。また、新規のサイト会員に対しては、会員登録の際にサイト上でアンケート回答を促します。商品への興味関心等に関する情報を自社のデータベースに蓄積することで、会員のニーズや商品への関心度合い等の把握が、容易になりました。

顧客データの名寄せ作業

一筋縄ではいかない、“名寄せ“の壁

統合すると口で言うのは簡単ですが、サイトごとにデータの特性や役割が異なるため、実は、さまざまな注意点があります。気を付けるべきことの一つとして、例えば「氏名」や「住所」などの項目が挙げられます。個人情報の観点から管理に細心の注意を払う必要があることはもちろんですが、統合の過程で、データの重複や矛盾が起きないように、という観点でも注意が必要です。各サイトによって、ログインIDや名前・住所情報等の入力方式が異なるため、単純に統合すると不整合が生じやすいのです。そのようなデータに対して適切に処理し、整合性をとる作業を”名寄せ”といいます。ここで予想外のトラブルが起きないようにケアすることが重要です。

この名寄せについて、もう少し詳しくご説明します。例えばA社の顧客である”太郎さん”(仮名)が、A社の商品ECサイトとコミュニティサイトでそれぞれ会員登録をしていたとします。太郎さんは、2つのサイトで異なるログインIDを持っています。A社の分析担当者がこれだけを見た場合、ECサイトの太郎さんと、コミュニティサイトの太郎さんが、同一人物であると捉えることは、難しいでしょう。ログインIDを見て“2名の顧客がいる”と考えてしまうかもしれません。これでは、正確な分析ができているとは言えないでしょう。

分散した情報・システムを統合した後に、集めたデータをできる限り正しく分析できる状態になっていることが重要です。そこでポイントになるのが名寄せなのです。(最近よく耳にする”データドリブンな営業・企画・マーケティング”の観点においても、名寄せは欠かせない概念です。)

名寄せとは?

画像:名寄せのイメージ

複数のデータベースに分散して登録されている顧客情報の中から、情報の重複や矛盾を洗い出し、同一人物、同一法人のデータとして、ひとつのまとまり(レコード)に統合していきます。名寄せを行うことで、より実態に近い状態で情報が統合されるため、マーケティングや営業活動の高度化を図る上で、不可欠な作業として位置づけられます。

  • 社内に散在している顧客データの状態を確認する。
  • 顧客を特定するために必要な情報・重複するレコードを洗い出す。(顧客を識別する名前、メールアドレス、住所、電話番号、会員IDなど、個人の属性が一致する情報を精査する)
  • 表記ゆれや、データの不整合を修正・削除する。(データクレンジング)
  • 同一の情報を特定し、データを統合する。(データマッチング)

“データ”を“マネジメント”できる状態へ

データマネジメントの取り組みによって、下記のようなことが実現できました。

画像:戦略の策定→データ統合→データ分析→データ活用 “データ”を“マネジメント”できる状態へ
データ統合~乱立したウェブサイトの集約で、お客さまの利便性を向上
A社の会員は一つのログインIDを持つだけで、さまざまなコンテンツを利用することが可能となり、煩わしさが解消されました。また、サイトのデザインが統一されたことで利便性が増すとともに、企業のブランドイメージに一貫性が生まれました。
データ活用~顧客の多様なニーズを理解し、関係構築を強化
データの収集・活用の基礎が整ったことで、ユーザーの商品利用状況や、特に高い関心を持つ顧客の分析が進めやすくなりました。社内の部門間の断絶も少なくなり、顧客のニーズに見合ったサービスを全体最適で提案できるようになりました。

データ活用で得られた効果と、今後の展望

不確実な世の中でも、確かな価値を”個客”に届ける

市場競争やニーズ変化が加速するなかで、常にお客さまに気に入っていただける商品・サービスを提供し続けていくことは、非常に難しい課題です。A社は以前より多くの顧客を抱えていますが、その数が増えるにつれ、個々のお客さま(”個客”)との距離は遠くなりがちです。今回データマネジメントサービスを導入したことで、”個客”の想いを感じとりやすくなったとのことです。今後もデータ活用の幅を広げることで、特別なお客さまに対して、より一層のスペシャルな体験を届け、愛される商品を提供し続けることを目指しています。

また、その後の将来においては、数年先のニーズを予測することで、他社に先駆けた商品・サービスの提案実現も期待できます。自社独自に蓄積してきたデータの有効活用は、単なる業務効率化にとどまらず、業務の在り方を変えるDX(業務変革)に繋がる可能性さえあるのです。

得られた効果
  • 不確実な世の中においても、個々のお客さまのニーズ(想い)を理解し、良好な関係を維持すること
  • 一人一人の顧客の心に響く特別な体験を提供すること (パーソナライズ、1to1マーケティング)
今後の展望
  • 顧客の体験価値を高め、さらに深い関係構築を実現したい (顧客ロイヤリティの強化) 
  • 未来のニーズを予測し、他社に先駆けて、顧客が求める商品・サービスを提供したい

「データマネジメントサービス」採用の決め手・理由

A社の担当者さま(イメージ画像)

当初、事業の将来性への危機感があったものの、具体的にどのように解決すればよいか漠然としていました。サイト統合やデータ活用といった解決手段が、初めから見えていたわけではありません。もやもやした状態から脱する道筋を模索するなかで徐々に、目指すべき形へとつながっていきました。

キヤノンITソリューションズに相談しようと考えたのは、広い視野で共に解決策を考えてくれそうだと感じたからです。実際、いきなりITツールの導入提案から入るのではなく、こちら側の業務の現状や将来の展望を汲み取った上で、長期視点の戦略策定から支援していただきました。単にツールを売って終わりではなく、導入前後のケアや、部門横断のDXを見据えた提案をしていただいたことが、データマネジメントサービスの導入に繋がりました。

データマネジメントサービスについて

時代の流れと共にデジタル化し、データの蓄積が進む現代ですが、いまだ多くの企業が、それらのデータを上手に活用しきれずに悩んでいます。蓄えてきたデータの有効活用は、この先の事業存続の重要な鍵になり得るでしょう。今回はデータ活用を中心に取り上げましたが、弊社では、データを「あつめる・ためる・活かす」という一連の流れをITでサポートすることも可能です。お客さまの事業におけるお悩みや想いに寄り添い、解決に導いてきた実体験から、個々のお客さまに適する解決策を共に検討いたします。

DXグランドデザインの策定(お客さまの想いを形にするビジネスデザイン)と、データ活用基盤の構築(競争優位性を実現するデータマネジメント)

デジタル化やDXという言葉は世の中にあふれていますが、ITは、魔法の杖ではありません。単に、ITツールを導入しただけで何かが綺麗に解決することの方が少ないでしょう。これまでお客さまの現場で培われてきた業務遂行力と、ITの利便性が組み合わさって、
初めて次のステップへの扉が開かれるのです。
従来の慣れた業務において、どこを活かし、どこを変えてゆけば、この先の時代を生き抜いていけるのか。その想いを私たちが受け取り、共に考え、ITの力で継続的にご支援いたします。

お客さまに適する解決手段のご提案から、データの収集・統合・活用の土台構築まで。
”データのマネジメント”でお悩みの皆さま、漠然としたお悩みでも大丈夫です。まずはご相談ください。


オンラインセミナーのご案内

企業のDXを加速するCX戦略~LTV最大化の成功事例~

多くの企業が、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、自社の経営課題を解決したいと考えています。今や、企業としての理想像に近づくために「DX実現」は欠かせないものとなっています。
さらに、CX(顧客体験価値)をキーワードに、お客様との関係を見直し、自社のビジネスモデルを変革し、新たな価値を創出しようとする企業も増えています。ロイヤルカスタマーの育成方法を確立し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指すことは、企業にとって大きなプラスとなります。育成戦略としては、データを基に顧客インサイトを得て、消費者ニーズに柔軟に対応し、CXの向上を目指すことが有効です。
DXを推進する上でも「CX」は重要なポイントです。そこで、本セミナーでは、前半でDX実現と課題解決のためのステップを押さえ、後半では実際のCX基盤構築事例を紹介し、そのポイントを解説します。

  • 主催:キヤノンITソリューションズ株式会社
  • 形式:オンライン
  • 参加費:無料
  • 2025年3月まで開催していた「LTVの最大化をめざすCX事例 」をリニューアルした
    セミナーとなります。一部内容に重複があること、あらかじめご了承ください。
  • 配信内容の録画、録音、撮影についてはお断りさせていただきます。
  • 個人及び、同業他社様からのお申し込みは、お断りさせていただく場合がございます
  • 内容等は、都合により予告無く変更する場合がございます