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2024年のテレワーク事情とトレンドコラム

日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説 Vol.2

昨今のテレワーク事情

人事担当者や中間管理職から「経営層は基本的に従業員を出社させたい気持ちがあるが、どう伝えればいいのか」という相談が、2024年になり多く寄せられています。何をすれば喜んで出社してもらえるかを問われる場合もあります。

上記の悩みは海外でも同様です。2024年9月、アメリカのIT大手企業が2025年1月から週5日の出社勤務を要求すると発表しました。しかし、雇われている従業員の9割以上が週5日の出社に不満を抱いているとのことです。「企業文化の再構築とコラボレーションの強化」を理由に雇用者は出社を要求していますが、従業員にはあまり響いていないようです。

一方で、会社からの要請に対して出社はするものの、出社後は短時間だけ滞在して仕事そのものは自宅で行なうといった、"コーヒーバッジング(Coffee Badging)"と呼ばれるテレワークのスタイルも少なくないようです。コーヒーを飲みながらリラックスして同僚と談笑するために出社するのであれば、出社には意味があると言えますが、“週に数日は出社しなければならないと指示されているためそうしている”ところが残念なポイントです。

テレワークはもう不要なのか!?

感染症対策のためのテレワークだったのでもう要らない、またはテレワークはすでに普及しているので取り組む必要はない、という2つの極端な理由から、テレワーク訴求の必要性を問われることがあります。しかし、テレワークは「場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」ですから、感染症が収束したからといって必要なくなるわけではありません。本当に実現できているのかといえばまだまだ道半ばです。
新型コロナウィルス感染症が5類に移行されてからのテレワーク実施率は前年と同程度の水準ですが、正社員と公務員・団体職員においては、その割合が増加しています。この「正社員」のテレワーク実施率の増加は人材確保の意味合いが大きいと考えられます。先述のアメリカのIT大手企業の社員も、週5日の出社勤務に「戻りたくない」と言って転職活動を始めたと報じられています。テレワークは2025年度に向けてさらに見直されると予測している学識者や経営者もいますし、今後も不要になることはないでしょう。

「テレワークができない理由」の下記回答は直近では減少傾向にあります。業務のデジタル化やテレワークの環境整備などにより、これまでできないと考えられていた業務に対応できるようになってきたためと推測されます。

  • 減少傾向のテレワークができない理由
    • テレワークで行える業務ではない
    • テレワークのためのICT環境が整備されていない
    • テレワークを行う場所がない

一方で、下記回答はやや上昇傾向にあり、物理的な問題は解決されたものの、気持ちの問題に関しては引き続き対応が求められることが伺えます。

  • 増加傾向のテレワークができない理由
    • テレワーク制度が整備されていない
    • 会社がテレワークに消極的で実施しにくい

    先日、テレワークのセキュリティに関する相談を受けました。相談者は、VPN経由での外部アクセスや定期的なセキュリティ診断や標的型攻撃メール訓練などを実施している企業で、テレワークをもっと実施したいという要望に応えるために、パソコンの増設を行っています。より多くの社員が外部で業務を行うようになるため、セキュリティに対する心配がありました。確かに、一部の社員だけがテレワークを行っている場合と、多くの社員がテレワークを行う場合では状況が異なります。
    このような場合の課題と対策例を図表4にまとめました。社内で固定されていたものが外部に持ち出されるため、PCの管理方法やネットワークの接続方式などを検討し、適切に対応する必要があります。また、オープンスペースでの作業も考えられるため、PC画面を他人に見られる可能性やPCの置き忘れ、紛失、電源の切り忘れ、個人のアップデートの漏れ、その他想定外の事故発生時の対応などにも注意が必要です。オフィス内では隣の人が気づいて助けてくれることもありましたが、テレワークでは周囲の人が気づきにくくなるため、懸念事項となります。

ITツールに頼ろう!

図表4の右側は、懸念事項に対する対策です。具体的に言うと、こうして記載してみると、のぞき見プロテクターやテレワークサポーターは、その場でののぞき見対策に留まらず、万が一PCが他人の手に渡ってしまった時も、情報が見られることを防ぐのに役立つことが解ります。セキュリティ対策はこれだけやっておけば100%大丈夫、というものはありませんから、万が一の時、認証機能が破られてパソコンが起動しても、のぞき見プロテクターやテレワークサポーターが次の壁になることで、安心感はもちろんのこと、安全性も上がります。

クラウド型のソフトウェアを使うことで、万が一の場合は即座にパスワードを変更すればログインされるリスクはぐっと低くなります。クライアントパソコンにデータがすべて残っていた時代は、PCの物理管理が大変でしたが、そこから考えるとなんて便利で安心な環境になったことかと筆者の世代としては感動すら覚えます。

現在は、せっかくこのような便利なツールがあるわけですから、安心して業務ができる環境を活用しましょう。ちなみに、のぞき見プロテクターやテレワークサポーターは年間数千円から数万円程度で利用が可能です。あらゆる企業の方々に自信をもってお勧めしています。また、筆者自身はテレワークに特化したパソコンである「DRAGONFLY」を使用しています。顔認証が速く、他の人では認証されない仕組みや、ウィルス対策ソフトが最初から搭載されているため、自分で考える必要が少ない点も気に入っています。セキュリティに詳しくない方やITが苦手な方ほど、最新のツールに頼ることが最も効果的です。

育児・介護休業法の改正に向けて

直近の日本の動向として、テレワークの実施率が回復しており、ICT環境が整備されていないためにテレワークができないというケースも減少しています。場所や時間にとらわれない働きやすい働き方を実現することが、働きやすさ・働きがいを通じて、企業や組織の効率化や業績にもつながるという認識が自然と広まったといえます。
また、図表5によると、育児・介護休業法の改正に伴い、来年4月1日からは、「3歳になるまでの子を養育する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)」の内容にテレワークが追加されました。努力義務ではありますが、対応しない・対応できない場合には、対応している事業者さんに人材が流れることを止めることはできないでしょう。
さらに、来年10月からは「3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に対し、始業時刻などの変更、テレワーク、短時間勤務、新たな休暇の付与、その他働きながら子を養育するための措置のうち2つを選択(2つ以上でももちろんよい)、して利用できるようにすること。」が事業主の義務となります。

そしてこれらは、育児や介護をしながら働いている対象者に個別の周知、意向確認を行うことがセットです。個別の周知・意向確認とは、社内掲示板への表記や一斉メールで配信するだけではなく、個々人の事情を考慮して意向確認をする必要があります。「個別周知・意向確認の方法は、今後、省令により、面談や書面交付等とされる予定」となっていますが、知らなかったので利用できなかった、知っていても利用しにくいといったことにならないよう、対象者に限らず組織全体での理解を深めるため、早めに準備を進めていただくことをおすすめします。

育児に限らず、年間10万人が介護離職しています。労働力人口が減少する中、今回の育児・介護休業法の改正は「フルタイムでの柔軟な働き方」を支援することが目的とされているように見えます。テレワークはその実現のための有効な手段の一つです。テレワークを活用したことで、ライフイベントによる離職がゼロになったという話は枚挙にいとまがないと申し上げてよいくらいお聞きします。本当にありがたいことです。そして、これらの企業の共通点として従業員を大事にされているということを多くの側面で感じます。従業員がご家族の都合で遠隔地に行くことになり、何らかの形で雇用を継続できないか考えたところテレワークの導入にいきついた、という例もあります。
人を大事にしたいからテレワーク、テレワークをするならできるだけ安心して利用するためにツールを活用しよう、のぞき見プロテクターやテレワークサポーターはもちろん、安価で便利なツールがたくさんあります。育児・介護休業法は、働きやすさ・働きがいのある企業であるための示唆であるともいえます。筆者は昨年、家族の都合でしばらく実家でテレワークをしましたが、働きだして30数年、もっとも「働けることのありがたさ」を感じました。テレワークが無かったら離職も考えたでしょう。雇用者に感謝の気持ちをもって働けることは雇用者にとっても幸せなことです。

お客さまの「多様な働き方の実現」をテレワークソリューションでご支援します。

キヤノンITソリューションズでは、自社でのテレワーク業務にテレワークソリューションを導入しています。
これまで蓄積してきた知識・ノウハウを活かし、お客さまのテレワーク導入をご支援します。

テレワークで新しい働き方を実現

筆者紹介

一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長 村田瑞枝

村田 瑞枝(むらた みずえ) 一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長

1991年日本電信電話株式会社入社。人事部人材開発室を経て、マルチメディアビジネス開発部に所属。以降、25年間WEB戦略策定及び実施サポート、システム構築、デジタルマーケティングなどインターネット関連業務に携わる。中小企業診断士。1級ファイナンシャルプランニング技能士。ファイナンシャルプランナー(CFP)、WEB解析士、ロングステイアドバイザー。2020年4月より現職。

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