舞呉コボ郎のマイグレーション放浪記 第2回 メインフレーム to UNIX 編 / COBOL MOVEの深掘り 【前半】コラム
公開日:2024年7月1日
こんにちは。舞呉コボ郎です。
今回は、果敢にメインフレーム to UNIX に挑戦したお話です。
マイグレ編 ~メインフレーム to UNIX~
2000年代。日経平均株価がバブル崩壊後の最安値を記録したり、イラク戦争が始まったり。暗いことの多い時代でした。その頃には、「レガシーマイグレーション」という言葉がメジャーになりつつありました。 メインフレームtoメインフレームのような異機種間マイグレーションの仕事は適度にあって、大規模な案件もやらせていただきましたが、需要は下火になりつつありました。マイグレーションを発展させるためには、早くメインフレームtoオープンシステムへ、一歩を踏み出すことが求められていたのです。
その時期にちょうど(何と?)マッチする案件があって、メインフレーム to UNIXのマイグレーションを提案することになりました。
ご経験のある読者の方もいらっしゃると思いますが、新しい領域のビジネスを受注するのって、すごく難しいですよね。どんなに良い提案をもってきていても、「で、実績はあるの?」って、絶対に聞かれますから。
幸いにも当時は、日本国内でのマイグレーションの事例自体がとても少なかったので、実績がなくても門前払いを受けることはありませんでした。ですが、慢心はできません。
何がなんでも受注しなくてはならないというプレッシャーの中、ただ移行元のメインフレームの技術力をアピールするだけでは足りないように感じられました。なので、特別なサプライズを用意することにしたのです。
その作戦は「プレゼンの日にオンラインプログラムを実際に動かして見せる」というものだ。これならマイグレーションの技術力もアピールし、受注を大きく手繰り寄せることができる。
作戦の主担当はコボ次郎。デモシステムの構築は若手にしてエースのコボ次郎に委ねられた。コボ次郎とコボ郎をはじめとするプロジェクトメンバーは、インターネットや書籍などあらゆる文献を読み漁り、作戦に向け準備を進めていた。
提案資料も並行して作成しており、その作業は昼夜を問うことはなかった。
作戦には大きな課題があった。
オンラインプログラムは画面編集のためにアセンブラを大量に使用している。移行難易度は極めて高いというのが、コンペチタを含めたプロジェクトに関わる人たち全員の認識だった。
大量のアセンブラをどう対応するか。そしてそれをどのように動かして見せるか。
特定のシナリオだけに対応した単なる"紙芝居デモ"であれば話は簡単だ。でも、それだけではお客様の琴線に触れることはできないだろう。
本格的に動かして、色変更など画面コントロールもできるようにしたらどうか。それならば強烈なインパクトを与えられる。だが、大量のアセンブラは、ざっと読むだけでも相当な時間がかかる。
まともにやっていてはプレゼン当日に間に合わない。説得力に欠けるが、紙芝居デモで妥協するしかないのか。
誰もが諦めかけていたその時だった。「あれが使えるぞ!!」。コボ次郎は叫んだ。
過去にメインフレームtoメインフレームのマイグレーションで、アセンブラ代替の画面編集機能を開発したことがあった。これを使えばCOBOLプログラムのインターフェースを、ほぼ現行のまま移行できる。
コボ次郎の気付きが、本格的なデモンストレーションに向けた大きな一歩を踏み出させた。
しかし、解決しなければならない課題は山積していた。時間が経つのを忘れるほど集中して、幾多の試行錯誤を繰り返した。そして、プレゼンテーション当日までに、なんとかデモシステムの構築が間に合った。
そして迎えたプレゼンテーション当日。デモシステムを動かしながら要点を説明すると、関係者からは驚きと期待の声が上がった。
これが決め手となり、案件の受注を勝ち得ることができた。
コボ郎とコボ次郎はハグこそしなかったものの、言葉にできない喜びと感動を覚えたのだった。
メインフレームで稼働しているアプリケーションを本当にUNIXに移行することができるのか。プロジェクト開始時点ではゴールまでの道筋は完全には見通せてはいなかったのですが、新しいことにチャレンジする喜びと、失敗は許されない使命感と責任感が私たちを後押しし、突っ走ることができました。
開発途中では幾多の難関がありましたが、お客さまの絶大な協力と、お客さまと当社のチームワークで乗り越え、計画通りにカットオーバーできました。
チームワークにも関係するのですが、お客さまとマイグレーションベンダーとの役割分担はとても大切で、「餅は餅屋」でやるというのが鉄則です。現行システムについてはお客さまが圧倒的に詳しく、移行の仕組みや移行先システムで新たに構築する機能は、マイグレベンダーが詳しいのです。想定していなかった作業が発生した場合も、得意な方がやる。お客さまとそう決めてスタートし、終始その方針で進め、想定外作業が発生しても遅滞することなく乗り越えることができました。
この「餅は餅屋」がプロジェクト全体のコストや品質に効くのです。
品質面にも問題はなく、カットオーバー後に軽微な障害が数件発生した程度でした。
「変換ツールによる機械的な変換を徹底して手修正を撤廃する」方針を掲げ、それを遵守することでプロジェクト全体の生産性を高めるとともに品質を担保することができました。
不具合を発見したら、必ず変換ツールを修正して全資産を再変換し、差分がでた資産をすべてリリースする。こうすることによって、不具合元となった資産と同じ不具合を持つ資産の対応ができるので、「芋づる式」に品質が向上していきます。
この「芋づる式」も、提案時からプロジェクト完了まで徹底しました。
当社が受注できて、プロジェクトを成功させることができた要因を整理すると次のとおりです。
- 移行元メインフレームの技術に精通していたこと
- メインフレームtoメインフレームで開発したツールが有効活用できたこと
- 徹底したツール化による手修正の撤廃で品質を確保する方針がお客さまと合致したこと
- お客さまとのチームワーク
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