シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第5回)産業用カメラのデジタルインターフェースコラム
公開日:2019年2月27日
シニアアプリケーションスペシャリスト
筆者 稲山 一幸

前回のコラムでは、産業用カメラの構造についてふれましたが、今回は、その産業用カメラをパソコンなどに接続する際に必要となるデジタルインターフェース(以降DIF)についてお話しさせていただきます。特にDIFの選定においては、高速撮像したいといったシステムの目的や用途の他に、カメラとパソコンとの距離が離れているや、駆動頻度の高いロボットに装着するなど、設置環境や運用状態によっても異なりますので特性や制約を理解の上、適したDIFを選定することになります。
デジタルインターフェースの種類

産業用カメラで用いられる主なDIFには、産業用カメラの専用規格として誕生したもの(「CameraLink」と「CoaXPress」)と、別の汎用IFとして登場したのちに映像信号を伝送できるほどの高速化が図られたのちに規格化されたもの(「GigEVision規格」と「USB3Vision規格」)があります。図1)
「CameraLink」は、最も古く産業用カメラのアナログからデジタル化への移行に拍車をかけた代表的な規格で、現在も多くの産業用カメラで採用されています。当時より高速伝送な規格で、最大転送速度は6.8Gpbs(約850MB/sec)、フルハイビジョンのカラー映像が1秒間に約140枚転送できるものです。
「CoaXPress」は、伝送速度を4倍、CameraLinkの弱点となっていたケーブル長10mを100mに、ケーブル構造もパラレル構造から1本の同軸へと単純化され屈曲耐久性の高いケーブル加工なものとなっています。共にパソコン標準搭載の汎用IFではないため、別途画像入力ボード(フレームグラバボード)を装着する必要があり、構成面やコスト面でのデメリットはありますが、外部トリガー制御や、カメラと照明との連動制御等、マシンビジョンでよく使われる制御機能を利用でき、実績も多く安定したシステム構築が可能です。
後者の「GigEVision」や「USB3Vision」は、昨今のパソコンに標準搭載されている汎用IFを活用するもので、映像伝送に耐えうるほどの高速化が図られたのちに規格化されたもので、特に汎用IFによるコストメリットや複数接続対応(ハブ接続)などの利点も多く、現在、数多くのメーカで製品化されています。前者か後者かの違いは、フレームグラバーを使用するかしないかの差異となるため、外部信号制御など複雑な撮像制御を要するシステムでは前者を、カメラ側で制御可能なものでは後者を採用する傾向があります。
デジタルインターフェースの選定
速度とケーブル長(図2)

カメラとパソコン間距離が離れている構成の場合は、100m対応可能な「CoaXPress」か「GigEVision」。ロボットに搭載し屈曲性が気になる場合は、各規格対応のロボット対応ケーブル、中でも「CoaXPress」の同軸ケーブルは耐久性が高いと評価されています。
高速性は、フレームグラバーを使用する「CoaXPress」「CameraLink」が中心となりますが、「GigEVision」や「USB3Vision」も、同レベルに迫ってきており、コスト面と合わせると「USB3Vision」、ケーブル長重視の場合は、「GigEVision」を選択することも多く、大量のカメラを扱う場合も、ネットワークハブ構成の取れる汎用IFのものが採用されています。複数カメラの同期撮像であれば、フレームグラバーを使用するものの方が制御しやすく、特にラインセンサシステムでは、「CameraLink」「CoaXPress」が中心となっています。昨今の技術では、部品点数を減らす試みとして、各規格ともカメラへの電源供給をカメラケーブル内でまかなえる構造や、汎用IFでもトリガー入力制御が行える構造「GigEVision」のToE(TriggerOverEthernet)が登場しています。図2)
今回のまとめ
DIFの選定は、システムの目的や用途に加え、設置環境や運用状態に応じて検討する必要があり、その上で、選定したDIF対応の中でカメラ選定に進めることも重要です。産業用カメラは、誕生時はVGAサイズ(約1M)が主流でしたが、現在は、素子メーカも5Mを基準とするところが増えてきており、処理エンジン側もGPUなど高速化が進み、今後の高解像度カメラの複数台制御などを考えると、DIFに対しても、ボトルネックとならぬよう進化に期待するところといえます。
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