ビジネスイノベーション成功の鍵を探るキヤノンITソリューションズ 共想共創フォーラム2025イベントレポート
市場環境が激しく変化する中で、各企業は競争力強化を念頭にDXに取り組み、各種ソリューションの導入やデータ活用基盤の整備などのデジタル化とともに、ビジネスの変革へと進もうとしています。一方、国際情勢の変化や人件費の高騰などが企業活動に及ぼす影響は未だ測りきれず、企業にとってはイノベーションの必要性が一層高まることに疑いの余地はありません。
本講演では、DXに関する当社の独自調査結果も踏まえ、マイナビTECH+編集長 小林行雄氏とともに、これからのビジネスイノベーション実現に向けたポイントを探っていきます。
株式会社マイナビ TECH+ 編集長
小林 行雄 様
キヤノンITソリューションズ株式会社 代表取締役社長
金澤 明
セミナー動画(視聴時間:47分29秒)
DAY1-1ビジネスイノベーション成功の鍵を探る
“DX”は本来、競争優位のためのビジネス変革を目的とする。
本セッションでは、企業が真に変革を起こすための「ビジネスイノベーション」の本質に迫りました。
戦略、組織、技術。この3つのケイパビリティが、ビジネスイノベーションを実現へと導く鍵。
さらに、DX進度を可視化するフレームワークや、成功企業の共創事例も紹介。
- 戦略的ケイパビリティ:デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革する力
- 組織的ケイパビリティ:DXを実現するための組織体制や企業文化
- 技術的ケイパビリティ:企業がデジタル技術を活用できる能力
はじめに
「共想共創フォーラム2025」の基調講演では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質と、その先にあるビジネスイノベーションの実現について、マイナビTECH+編集長 小林行雄氏とキヤノンITソリューションズ金澤社長による対談形式で深く掘り下げられました。
「DX」という言葉のとらえ方が多岐に渡り、かつ多くの企業が変革に向けた次のアクションを考えているなかで、解像度を上げてやるべきことを明確にするために、DXの進度を可視化する「DXマトリクス」や、企業のタイプに応じた4つのDX推進モデル(武装型・先行型・変革型・直行型)が紹介されました。
セッション後半では、さまざまなビジネスモデル(プラットフォーム型、サブスクリプション型、フリーミアム型など)と、それぞれの収益構造や顧客価値の考え方が紹介され、DXによる新たな価値創出のヒントが提供されました。
また、日本企業のデジタル競争力が低下している現状を踏まえ、DXによる再構築の必要性が強く訴えられました。キヤノンITソリューションズが支援した大手企業の成功事例も紹介され、経営層の明確なビジョンと社内外の連携による「共想共創」が、DX成功の鍵であることが示されました。
DXの現状

DXに取り組むことが、組織活動においてなくてはならないことになっている現状において、DXという単語の意味がより多様化して世の中に定着してきたと言える。「DX」という言葉のとらえ方が多岐に渡るなか、キヤノンITSではDXを現状どの意味で実践しているか把握しやすくするため、データとデジタル技術の活用度合いを「D(Digital)軸」、変革の進展度合いを「X(Transformation)軸」とする「DX進度マトリクス」を提唱し、DXの取り組み進度を4象限に分けている。
2024年から独自に実施しているDXへの取り組みに関する調査をもとに、国内企業の状況を確認している。DX取り組み当初から業務効率化や生産性の向上を目指してデジタル化に取り組んだ企業の多くが、すでに一定の成果を得られたという回答。ただし、業種によってDXの進行度合いに違いがあり、消費者に近い業種の方がX(トランスフォーメーション)に臨む余地がより広くありそうだ。
DXの現状 ポイント
- 「DX」という言葉のとらえ方が多様になっている
- デジタル化はある程度達成し、「業務効率化」から「ビジネスモデル変革」へと進んできている
- 業種によってDXの進行度合いに違いがある。消費者に近い業種の方がX(トランスフォーメーション)に臨む余地がより広くありそうだ。
ビジネスイノベーションと進行パターン

多くの企業がデジタル化から変革に向けた次のアクションを考えているなかで、解像度を上げてやるべきことを明確にするために4象限の右上のDX実践企業を2つに分けた。既存のビジネスモデルをベースに業務プロセスの改善により顧客への提供価値を変革した状態を「DX実践企業」、ビジネスモデルの創造や変革により、競争優位を築くような革新的な事業やサービスを創出した状態を「ビジネスイノベーション実践企業」としている。ビジネスイノベーションは、DXの本来の定義の意味に加え、それをよりダイナミックに実現すること。
「DX進度マトリクス」では、右上に向かって進んでいくことになるが、ゴールは左上でもよいという場合もある。完成品製造業のような特定の顧客に部品を供給する企業などがそれにあたり、デジタル化を実践することがゴールとなるケース。このほか、右上のDXをめざす航路の3パターンがあり、オーソドックスなのが、デジタル化による生産性向上を実現した後、それによって生まれた余力を活かしてビジネスモデルを変革する航路。
AI・生成AIの活用
DXが進展していくにあたって、AIの活用が進みつつあることも注目ポイント。人手不足や業務効率化の解決策として検討されている。キヤノンITSの独自調査でも、生成AIや機械学習などのAI導入が、D軸/X軸どちらの進展にも効果が期待されていることが読み取れる。ただ、現状は実際の効果としてはまだD軸方向にとどまっているようだ。
また、活用がまだ限定的である大きな理由は、AIの活用ルールやデータガバナンスが整備されていないことと、社内にAIを活用・運用できるスキルや専門人材が不足していること。技術活用そのものよりも「組織としての受け入れ体制」が課題となっている。
キヤノンITSでは、生成AIの専門組織が独自のガイドラインを示し、教育コンテンツを準備するとともに、生成AIツールの導入を全社的に行っている。自社サービスのローコード開発プラットフォーム「WebPerformer-NX」に生成AIを活用してプログラミングをサポートするコード提案機能などを搭載しており、今後も引き続き、開発プロセスの効率化や製品/サービスへの組み込みによる付加価値向上、生成AIを活用した新規サービスやビジネス共創コンサルティングを創出し、お客さまのビジネスイノベーションに貢献していく。
ビジネスイノベーション実現に向けて
デジタル化により業務効率向上をいちはやく実現し、経営資源を他に振り向けることでコストパフォーマンスを挙げたり品質の向上を図ることができる。それらを顧客への価値として提供し、ビジネス領域の拡大やシェアアップにつなげることができれば、企業として強くなれる。
X軸を右に行く変革推進プロセスは、顧客への価値提供の仕方と利益方程式を変革することで、従来とは異なる価値を創出することにつなげられる。

キヤノンITSでは、ビジネスイノベーション実現に向けて「DX進度マトリクス」の活用と、企業活動を4 つの要素-「提供価値」「利益方程式」「業務プロセス」「経営資源」に分けて検討することを提唱している。4つの 要素と、「DX 進度マトリクス」との対比を考えると、マトリクス上D 軸方向の進展(デジタル化)は、主に「業務プロセス」「経営資源」に注力して取り組んでいくことに対応し、一方、X 軸方向の進展、つまりビジネスイノベーションは、「提供価値」「利益方程式」に注力して変革を進めていくことに対応する。当社は、提供価値ごとに利益方程式を示したビジネスモデル一覧に基づき、お客さまのビジネスモデルを変革し、革新的な事業やサービスを創出し、従来とは異なったマネタイズを実現させるパートナーとなる。
ビジネスイノベーション実現に必要な3つのケイパビリティ
変革を支える能力として、戦略、組織、技術の3つのケイパビリティが必要だと考える。

戦略的ケイパビリティは、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革する力とも言え、DXに必要な要素であるビジョンを明確に描くこと、経営層が変革の先導役として覚悟を持ってリーダーシップを発揮すること、外部の力を取り込んでパートナーシップを形成するといったこと。
組織的ケイパビリティは、ビジネスイノベーションの最大の課題でもある人材の問題も含めての観点で、ビジネスイノベーションを実現するための組織体制や企業文化のことを指す。人材面は、独自調査で一番必要とされている要素となっており、変革を推進する人材の確保と育成。経営層によるリーダーシップに加えて、変革実行部隊でリーダーを担う人がいかんなく能力を発揮できている環境をつくること。
技術的ケイパビリティは、企業がデジタル技術を活用できる能力と言える。まず自社のデータの整備と、データ活用の基盤が整っているかを確認したい。先進技術を活用するには、データが整っていることが前提となる。またデータの取り扱いについてのルールが必要で、保存環境のセキュリティにも注意が必要だ。
まとめ
本セッションでは、DXの本質が単なる業務効率化ではなく、企業の競争力を高めるビジネスイノベーションであることが語られました。
キヤノンITソリューションズは、戦略・組織・技術の3つのケイパビリティを軸に、企業の変革を支援し、顧客と共に新たな価値を創出する姿勢を示しています。特に生成AIの活用においては、社内ルールの整備や教育体制の構築を進め、業務効率化だけでなく、非定型領域での活用にも挑戦。今後は、AIをはじめとする先進技術を活かしながら、企業のビジョン実現に向けた支援をさらに強化していくとのことです。変化の激しい時代において、こうした取り組みが企業の持続的成長と競争力強化につながることが期待されます。
「ビジネスデザイン × ビジネスサイエンス」のアプローチ
DXコンサルティング

お客さまのビジョンや経営への「想い」を深く理解し、デジタルトランスフォーメーションに向けたDXビジョンの立案をご支援します。
デジタルトランスフォーメーションを加速するビジネスデザイン×ビジネスサイエンスのアプローチで、データ起点で意志決定する「DX実践企業」への変革を目指し、DXを体質化することで、新たな事業価値創造をサポートします。
DXコンサルティングに関するご相談・お問い合わせ
キヤノンITソリューションズ株式会社 ビジネスイノベーション推進センター
Webサイトからのお問い合わせ
デジタルトランスフォーメーションのご利用に関するご相談、お問い合わせを承ります。
受付時間:平日 9時00分~17時30分
※土日祝日・当社休業日は休ませていただきます。