ポスト「2025年の崖」とその対策~DXのカギを握るマイグレーション~キヤノンITソリューションズ 共想共創フォーラム2025イベントレポート
経済産業省が提唱した「2025年の崖」の目安の年となりました。既存システム・構造の刷新がユーザー各社に求められていますが、対応できているのは一部に留まり、今後さまざまな影響を引き起こすと考えられます。「2025年の崖」の先にあるレガシーシステムが抱える問題点と、当社の将来を見越した取り組みについてお伝えします。
キヤノンITソリューションズ株式会社
ビジネスソリューション営業本部 事業企画部
林 駿輔
セミナー動画(視聴時間:47分29秒)
DX推進の前に立ちふさがるレガシーシステム
「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で提起された概念であり、企業のITシステムが老朽化・複雑化し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が困難になることで、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告されたものです。現在、多くの企業がこの課題に直面していますが、メインフレームをはじめとする旧来の基幹システムの刷新は思うように進んでいません。
ポスト「2025年の崖」で顕在化するリスク
2025年を迎えた今、以下のような複合的かつ深刻なリスクが現実のものとなりつつあります。
IT人材の不足と高齢化
IT人材の供給は年々減少しており、2030年には最大約79万人が不足すると予測されています。特にDXを推進する人材の確保は困難で、企業の約8割が「不足している」と回答しています。レガシーシステムの維持には多くの人手が必要であり、平均26名、場合によっては50名以上が関与している企業もあります。
レガシーシステムの維持困難化
あるメインフレーム主要メーカーが事業からの撤退を発表し、2030年までに販売終了、2035年までに保守終了となることが明らかになりました。これにより、メインフレームの調達や維持が困難になることが予想されます。
維持コストの高騰
メインフレームの維持には莫大なコストがかかります。調査によると、ハードウェアの月額費用は平均3800万円、ソフトウェアライセンスは平均2800万円で、合計すると月額6600万円、年間で約8億円に達します。大企業では年間20億円以上のコストがかかるケースもあり、今後さらに高騰の可能性もあります。
解決に向けたアプローチ
企業は早急な対応を迫られていますが、技術的な難易度や互換性の問題などがあり、一足飛びに解決しDXを実現しようとすると、リスクを伴う高いハードルが待ち構えています。既存のアプリケーション資産を最大限に活用しながら、新しいIT基盤へと移行する段階的な”マイグレーション”によって「DX-Ready」状態を実現することが、その第一歩となります。
- レガシーシステムの維持に必要な技術者不足やコストの問題を解消
- 浮いたリソース(人材・費用)を次なる変革に活用
- 温存すべきシステムと変革すべきシステムの見極めが可能
マイグレーションの代表的な三つの手法
マイグレーションの代表的な手法は以下の3つがあります。(下表では、星の数が多いほど、相対的に優位であることを示しています)
- リホスト
- 現行機能を維持したまま、同じ言語で新しいIT基盤へ移行する手法
- リライト
- 現行機能を維持しつつ、異なる言語へ書き換えて移行する手法
- リビルド
- 業務プロセスの見直しを含め、システムをゼロから再構築する手法
手法 | 説明 | 移行コスト | 期間 | リスク/難易度 | 業務拡張/改善/変革 | 適しているパターン |
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リホスト | 現行機能のまま、同じ言語で移植(Cobol to オープンCobol) | ★★★ | ★★★ | ★★★ | ☆ |
|
リライト | 現行機能のまま、異なる言語へ書き換え(Cobol to Java) | ☆☆ | ☆☆ | ☆☆ | ☆☆ |
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リビルド | 業務プロセス見直しを含めた、再構築(Cobol to ピュアJava、他) | ☆ | ☆ | ☆ | ☆☆☆ |
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それぞれにメリット・デメリットがありますが、ポスト「2025年の崖」のリスクに対応するには、比較的短期間で実施でき、リスクの低い「リホスト」が適しています。
なぜ「リホスト」が適しているのか
短期間での移行が可能
現行資産を活かしながら、迅速に新しいIT基盤へ移行できるため、スピード感が求められる状況に適しています。
低コスト・低リスク
他の手法と比べて移行コストが低く、プロジェクトの難易度も抑えられます。既存の業務ロジックや資産をそのまま活用できるため、再設計や再開発に伴うリスクを最小限に抑えることができます。
技術者の確保がしやすい
レガシー技術者の高齢化・不足が進む中、リホストによってオープン系技術者への移行が可能となり、保守・運用体制の安定化につながります。
キヤノンITソリューションズのマイグレーションサービスの強み
キヤノンITソリューションズは30年以上に渡り120件以上の大規模なマイグレーション案件に対応した豊富な実績があります。その経験や技術力を活かし、安心・安全・確実なマイグレーションを実現する3つの強みがあります。
独自のツールによる高品質な変換
キヤノンITソリューションズでは、独自開発の変換ツールを活用し、100%の機械変換を追求しています。これにより、手修正の工程を排除し、変換の品質を均一化。テスト工数の大幅削減や、資産凍結期間の最小化を実現しています。
- 単体テストを限定できるため、開発効率が向上
- システムテスト期間中でも再変換が可能なため、柔軟な対応が可能
-
レガシー言語に対応した変換ツールを保有
専門性の高い人材による支援体制
マイグレーションは新規開発とは異なる特有の進め方が求められます。キヤノンITソリューションズでは、以下のような専門人材がプロジェクトを支援します。
- ITコンサルタント
- 現行資産の棚卸しからアセスメント、計画立案までを支援
- プロジェクトマネージャ
- マイグレーション特有のリスクを回避し、安定推進を実現
- エンジニア
- レガシーとオープン両方の技術に精通し、変換設計・ツール開発・テストを推進
これらのスペシャリストが、計画立案から保守運用まで一貫して伴走することで、プロジェクトの成功率を高めます。
豊富な実績
1992年にマイグレーション事業を開始して以来、業種・業態を問わず多様なシステムに対応してきました。From(移行元)・To(移行先)ともに多くの種類を経験しており、顧客の要望に柔軟に応える提案力があります。
- メインフレームからUNIX、Windows、クラウド環境への移行実績
- 製造業、金融業、公共分野など幅広い業界に対応
お客さまのリホストマイグレーションをワンストップでサポートする新サービス
マイグレーションの計画から保守・運用までをワンストップで支援するため、新サービス「PREMIDIX」の提供を2025年6月より開始しました。マイグレーションの計画から保守/運用までワンストップで伴走し、お客さまのDX推進に向けた資産活用を最大限サポートいたします。
今後も、COBOL技術者不足や移行後の運用負担といった課題にも対応し、お客さまがより安心してマイグレーションを進められる環境を整えてまいります。
マイグレーションサービス・PREMIDIXについて

マイグレーションサービス・PREMIDIXは「PREcious assets MIgration for DIgital Transformation(DXに向けたお客さまの大切な資産のマイグレーション)」からの造語です。
キヤノンITソリューションズでは、レガシーシステムに蓄積されたアプリケーション資産は、お客さまにとって長年積み重ねてきた貴重なものと考え、お客さまの資産や想いを大切にしながら、新たな環境でも資産を活かすことができるマイグレーションを提供する決意を、このブランド名に込めています。
移行性診断サービス(無償)
移行の可能性やリスク、必要な作業などを事前に評価・分析の上、ご提案いたします
基幹システムの刷新方法や工期にお困りのお客さまは、お気軽にご相談ください。マイグレーションをご検討中のお客さまに、「移行性診断サービス」を無償でご提供しています。ヒアリングシートをもとに、インフラ環境の提案を含めたマイグレーションの適合性について診断します。これにより、移行に向けた初期検討をスムーズに進めていただけます。
検討を進めているお客さまは、ぜひ一度ご相談ください。
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