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【第2回】テレワークの導入事例[2022.6.22]
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コラム|日本テレワーク協会によるテレワークトレンド解説
【第2回】テレワークの導入事例[2022.6.22]

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第二回テレワークの導入事例

テレワークを取り巻く状況をまとめてみました。アフターコロナと言えそうな雰囲気が醸し出されている昨今、様々な傾向が見えてきています。

現在の状況

テレワークの現在の状況

1.テレワークが前提の働き方

テレワークが標準的な働き方となったところでは、「明日テレワークをします」と申請する代わりに、「明日は〇〇の理由で出勤します」という連絡を入れるようになっています。フリーアドレスという固定席のないスタイルが定着し、もし全社員が一度に出社すると、仕事をするスペースが確保できません。一方、コミュニケーション対策として、部署ごとに一斉出勤の日を設けることで、顔合わせの機会を創出したり、カフェスタイルのスペースを設けて、ディスカッションや対話のしやすい環境を提供し、出社することに意味を持たせるケースも増えています。
UターンやIターンをした就業者のお話も伺っています。テレワーク勤務が当たり前になったので、小田原にUターンしたエンジニアの方は、地元で「小田原もくもく会・ワーケーション会」をたちあげて、業種の枠を超えた社会貢献活動を始めました。企業内では得られない情報やノウハウ、人脈も形成でき、本業の幅も広がったといいます。

テレワークでUターン

テレワークでUターン


ランドマークタワーのふもとから富士山を間近に望む場所へ移住した企画・営業コンサルタントもいます。大手町に2時間以内に行けるところ、という条件のもと、あちこちのコワーキングスペースで仕事をしてみて決めたそうです。横浜のワンルームから三島に移り、仕事部屋が確保できたうえ、必要な時は新幹線で座って通勤できます。仕事の内容は変わりませんが、健康でゆとりある生活ができるようになったと聞いています。
企業側の動きとしては、テレワークを人事制度の見直しや採用の幅を広げるのみでなく、女性活躍や副業・兼業、男性の育児休職取得などの推進に繋げているところも少なくありません。「テレワークで移住して副業・兼業とは、本業が疎かになるのでは・・」と思われるかもしれませんが、視野が広がり一人一人がより高いパフォーマンスを発揮できます。良い気付きの機会にもなるようです。

2.中小企業は二極化傾向

単なるテレワークに留まらず、場所や時間にとらわれない働き方を幅広く活用している中小企業があります。kintoneサービス開発を行っている、株式会社ジョイゾー※1では、アルバイトを含む全従業員の全ての業務においてテレワークが前提となっています。2021年10月に本社オフィスを移転し、広くなったオフィスにコミュニケーションスペースを設けました。社内外を問わず、有効に機能しています。また、同社ではワーケーション手当を支給しています。支給の条件は、(旅先で)1時間は仕事をすること?!これも驚きです。取締役COOの四宮琴絵さんによると、「経営者として会社のためになるから実施している」とのことですが、入社したくなる、頑張って働きたくなる会社であることは間違いないと思います。

ワーケーション手当を支給

ワーケーション手当を支給


石川県にある北陸人材ネット※2の山本均社長のモットーは「ねばねばではなく、わくわくで働こう」です。ご自分はスキーの名手で冬はゲレンデで仕事をすることが多く、社員の方々も社長を見習って時間や場所にとらわれない働き方を実践しています。「ウチの会社だと、明るい時間に気兼ねなく子供とキャッチボールができる」と誇らしげです。わくわくがやる気に繋がっていることは間違いありません。
一方、経営者の意向で、コロナ禍が収まってきたことからテレワークを廃止したところも出ています。ある社長は20年前に起業し、堅実に会社を大きくしてきた努力家で優秀な方です。2020年4月から緊急事態宣言に伴いテレワークを導入しましたが、やがて従来の出社スタイルに切り戻していました。そんな中、約1/3の従業員が一度に退社しました。従業員からは「何度言っても解ってもらえなかった」という声があったようですが、社長ご自身はそう何度も言われた記憶はないそうですから、コミュニケーションギャップがあったのでしょう。テレワークに関しては、従業員にとっては働き方の一つとなっていたようですが、長年出社を前提として働いてこられた社長にとってはコロナ対策でしかなく、はじめから一過性のものと認識されていたようです。


テレワークをやめたら社員が辞めました

テレワークをやめたら社員が辞めました

3.会社経営の側面から見たテレワーク

テレワークは、単なる働き方の選択肢の一つです。実施するには業務のデジタル化が必須であるといえます。また、会社としての制度も必要ですので、特に中小企業においては社長の意向が色濃く反映されます。

企業・就業者の声

企業・就業者の声


テレワーク協会には、制度があるのに上司がテレワークをさせてくれない、以前テレワークをしていた時も業務効率は下がっていないのに廃止になった、といった相談が寄せられます。テレワークをさせてもらえない理由が解らない、というご相談に対応することは大変心苦しいところです。
その一方、テレワークを積極的に活用している経営者のお話を伺うと、今のところすべての企業において業績が向上しています。従業員の働き方に柔軟に対応している企業は、その他の経営改善にも積極的にチャレンジされているようです。テレワークの導入に必要な業務分析やデジタル化はもちろん、取引先との関係構築や広報宣伝などありとあらゆる面で新しいことを取り込みチャレンジすることが業績に反映される時代になっているということが伺えます。


 

筆者紹介

一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長 村田瑞枝

村田 瑞枝(むらた みずえ)

一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長

1991年日本電信電話株式会社入社。人事部人材開発室を経て、マルチメディアビジネス開発部に所属。以降、25年間WEB戦略策定及び実施サポート、システム構築、デジタルマーケティングなどインターネット関連業務に携わる。中小企業診断士。1級ファイナンシャルプランニング技能士。ファイナンシャルプランナー(CFP)、WEB解析士、ロングステイアドバイザー。2020年4月より現職。

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