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マシンビジョンの認識精度 [2019.11.28]
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シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第14回)
マシンビジョンの認識精度 [2019.11.28]

シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」

前回に続いて今回は、マシンビジョンで最も活用される「認識」機能についてお話しさせていただきます。

認識について

マシンビジョンの機能は、大別すると「検出(最小画素単位で対象を抽出する機能)」、「計測(形状をもつ対象に対し測定する機能)」、「認識(形状や模様をもつ対象を識別する機能)」の3つとなります。今回ご紹介する「認識」は、ほとんどのマシンビジョンの導入目的として挙げられる機能で、種類として「モデル認識」、「文字認識」、「粒子解析」等があります。また、それぞれ「スカラー処理」をベースとしたものと、「ベクトル処理」をベースとしたものがあり、「スカラー処理」では、画像の明るさ(輝度値)を使用し、「ベクトル処理」では、画像の明るさ(輝度値)の変化と方向の2つを使用して処理を行います。性能面としては、「スカラー処理」は、一定精度で高速、「ベクトル処理」は、高精度だが低速となるため、マシンビジョンシステムの目的や条件に合わせ選択します(図1)。

図1 認識について

図1 認識について

モデル認識について

「モデル認識」は、画像内から特定の形状や柄をもつモデルを探索する機能で、モデルの位置や一致度を抽出することができます。事前に探索したいモデル(位置補正で使用されるレジマークや特徴的な柄など)を基準画像内の一部(または、画像全体)をモデルとして登録し、新たな画像からそのモデルに合致(または、近似)する領域を抽出します。スカラー処理とベクトル処理の違いは、スカラー処理が、画像の輝度情報をそのまま活用するのに対して、ベクトル処理では、モデルの輪郭を処理するイメージとなります。スカラー処理では、サイズも姿勢も同一のものについては、非常に高速に探索ができますが、サイズ違い、回転など姿勢違いがあると検出困難となります。一方、ベクトル処理では、スカラー処理より低速ですが、サイズ違い、姿勢違い、また、欠けていても一部が合致する場合なども探索できます(図2)。

図2 モデル認識について

図2 モデル認識について

文字認識について

「文字認識」は、モデル認識の一つとも言えますが、文字、数字、記号などを読み取り、それぞれ、「A」は「A」、「1」は「1」として認識する技術で、OCR(未知の文字列の認識)やOCV(既知の文字列との比較判定)として活用されます。モデル認識と同様にスカラー処理では、文字ごとの画像モデルをもとに認識していく機能で、ベクトル処理では、輪郭形状をもとに認識します。スカラー処理では、撮像された文字画像を一つ一つを登録して認識しますので、撮像条件に変動の少ない特定環境であれば、高精度且つ高速に検出できます。ベクトル処理では、輪郭をモデルとして処理するため、シェーディングや濃淡が反転する場合などでも有効で、また、文字自体の回転やサイズ違いにも対応できます(図3)。

図3 粒子解析について

図3 粒子解析について

粒子解析について

「粒子解析」は、画像内にあるオブジェクトごとに、その形状や状態を示す特徴量を抽出する機能になります。スカラー処理では、処理の前に2値化処理を行う必要がありますが、ノイズに強く、一定の粒子形状(面積や周囲長や重心など)を高速に抽出できます。ベクトル処理では、スカラー処理より、輝度の変化に左右されることのない、高精度により多くの情報量を抽出できます。しかし、スカラー処理よりも、処理時間がかかります。特に画像内にノイズがあるとそれらのエッジ情報を処理することになるため、事前にフィルタ処理などを活用し、ノイズを低減させてから処理することになります(図4)。

図4 粒子解析について

図4 粒子解析について

今回のまとめ

今回の「認識」では、「スカラー処理」と「ベクトル処理」と2つのアプローチがあること、また、それぞれの特性に合わせ選択利用されていることをご紹介しました。また、「認識」は、目視検査においてもその可否は、個体差や条件差が大きく影響するファジーな領域の一つであることから、AI技術が有効な領域として活用が進められています。次回は、画像AI技術について、従来型ルールベースとの違いと共にご紹介したいと思います。

 

筆者紹介

シニアアプリケーションスペシャリスト 稲山

稲山 一幸(いねやま かずゆき)

エンジニアリング事業 シニアアプリケーションスペシャリスト

1992年住金制御エンジニアリング入社、Matrox社製品の国内総代理店立ち上げに参画、以降25年マシンビジョン業界に携わる。
2013年~2016年、キヤノン株式会社にてマシンビジョン関連の新製品開発のソフトウェアリーダとして従事。現在は、エバンジェリストとして活躍中。

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