「このスペースでは工具が入らない」製造上の問題をバーチャル空間で把握早期に設計変更を行い、計画遅延リスクを低減XRソリューション導入事例
デジタル・モックアップにより効率的な問題抽出・フィードバックが可能に
ダイキン工業株式会社様のケース
ダイキン工業は、完全受注生産であるアプライド製品の設計および製造プロセスの課題解決に取り組みました。キヤノンのMRシステム「MREAL」を活用し、従来は実機を組み立ててから行っていた製造上の問題抽出を効率化。デジタル・モックアップを活用して組み立て前に問題抽出を行い、それを設計にフィードバックしています。実機でつくり直すという大きな手戻りがなくなり、計画遅延リスクを解消しています。

「空調」「化学」「フィルタ」を柱に事業を展開しており、人と空間を健康で快適にするために、国や地域ごとに異なる文化・価値観から生まれるニーズに応え、多彩な製品とサービスをグローバル市場で展開している企業です。
住宅用ルームエアコンや、店舗、ビル、工場などで利用する法人向けエアコンなどを提供しているダイキン工業。空調のグローバルブランドとして、世界170カ国以上でビジネスを展開しています。
お話を伺ったお客さま
淀川製作所 空調生産本部 生産技術部 主任技師
西村 一輝 様

淀川製作所 空調生産本部 生産技術部 リーダー
小林 由和 様

淀川製作所 空調生産本部 淀川製造部 ラインチーフ
山川 燿 様

お客さまが実現できたこと
- 実機を組み立てる前にバーチャル空間で製造上の問題を抽出
- 早い段階で製造上の問題を潰すことができ計画遅延のリスクを低減
- 製造上の問題だけでなく、サービス部門も一緒になりメンテナンス性の向上にも寄与
お客さまのご要望
- 手戻りの影響が大きい製造ラインでの課題抽出を効率化したい
アプライド製品は完全受注生産
お客さまごと、異なるユニット製造に対応
貴社の事業展開について教えてください。
法人向けの事業では、パッケージエアコンだけでなく、大型の商業施設やオフィスビル、空港などで利用する空調設備も提供しています。屋上などに設置するモジュールチラーなどの熱源機器と、施設内の機械室などに置くエアハンドリングユニットなどの空気調和機によってセントラル空調を実現するアプライド製品です。このアプライド製品は完全受注生産となります。
設置スペースの面積や天井高、空調ダクトの構造といった施設固有の環境、そして、求められる省エネ性能などに応じて『一品一様』の製品を製造し、ゼネコンをはじめとするお客様に提供しています。
特に室内機に相当するエアハンドリングユニットは、受注生産の色合いが強くなります。機械室がどうなっているかは施設によって様々です。また、最近増えている複合施設の場合は、同じビルでも上の階はホテル、下の階はオフィスや商業施設とフロアの用途が違うため、階に応じて異なるエアハンドリングユニットが求められます。(西村様)
組み立て段階で直面する製造上の問題をもっと早く気づく方法はないか
今回、MREALを導入前に、どのような課題がありましたか?
このエアハンドリングユニットの製造において同社は課題を抱えていました。部品と部品の形状が似ており、製造工程で間違えて取り付けるリスクがある。このスペースではビスを止めるための工具が入らない。製品を組み立てようとすると、設計段階では気付くのが難しい問題に直面することがあります。
多くの場合、そのような問題はライン上で第一号機を組み上げる途上で気付きます。そこから問題点をまとめて設計者にフィードバックするのですが、設計変更を待っている間、組み立てが止まっている機械でラインを塞ぎ続けるわけにはいきません。機械をクレーンで吊って別の場所に移動させることになります。この一連の工数は製造計画には含まれていない、いわばロスです。遅れを取り戻すために残業が増えるなど、社員の負担を高める原因となっていました。(小林様)
MRシステムを採用するにあたり、どのような点を重視されたでしょうか?
-
1第一号機を組み上げる前にバーチャルな環境でレビューを行える
-
2製造計画に大きな影響を与えることなく製造上の課題を洗い出せる
知ったきっかけは「YouTube動画」
奥行き、幅、距離感を直感的に把握できる
MREALを採用した経緯を教えてください。
課題を解決するために同社が考えたのがXR(Extended Reality)技術の活用です。第一号機を組み上げる前にバーチャルな環境でレビューを行い、製造計画に大きな影響を与えることなく製造上の課題を洗い出せないかと考えたのです。
VR(Virtual Reality/仮想現実)、AR(Augmented Reality/拡張現実)、様々な製品を比較し、最終的に採用したのがMR(Mixed Reality/複合現実)製品であるキヤノンマーケティングジャパンおよびキヤノンITソリューションズが提供する「MREAL」でした。
MREALは、3Dのデジタル・モックアップを現実空間に投影し、そこに自身の手をかざしたりしながら、実際の大きさや距離感などを直感的に確認できる製品です。すべてがバーチャルなVR製品、デバイス越しに3Dモデルを見るAR製品では、そうはいきません。奥行きや幅、距離感などを直感的にとらえられるMREALは、まさに私たちに最適な製品だと感じました(西村様)

MR検討会で課題を抽出。従来の10倍に。
製造や設計の期間を1か月程度、短縮できた。
現場から見た、MREAL導入後の成果は、いかがでしょうか?
現在、ダイキン工業は、製造、生産技術、品質管理など、複数の担当者が10人程度集まり、設計を終えた製品のデジタル・モックアップをMREALで投影しながら「MR検討会」を開催。第一号機を組み立てる前の段階で製造上の問題を洗い出しています。メンバーの1人がヘッドマウントディスプレイを装着し、ほかのメンバーは大型のディスプレイを通じて同じ映像を共有。ヘッドマウントディスプレイを装着したメンバーがデジタル・モックアップに手や工具をかざし、それを全員で見ながら「その幅で工具が入るか確かめよう」「その高さは手が届くか」などと議論しています。
設計者から受け取った3Dモデルを投入するだけでデジタル・モックアップが自動的に作成されます。ヘッドマウントディスプレイのボタンを押すと、簡単にキャプチャが取れ、設計者へのフィードバックも行いやすい。もっと難しいかと思っていましたが、本当に簡単に扱えます。MR検討会を行うようになって以前のような大きな手戻りがなくなり、アプライド製品の製造期間は1カ月程度短縮できました(山川様)
またMREALは、アプライド製品のもう1つのコンポーネントであるモジュールチラーの設計にも大いに貢献しました。これまで設計時の検討会は、ディスプレイ上の3Dモデルを見ながら行っていました。それをMREALで行った結果、150件もの課題を抽出できました。これは従来の10倍にあたる数字。新型機開発だったにもかかわらず、設計期間を短期化できた上、機能はもちろん、製造のしやすさ、メンテナンスのしやすさも向上した新モデルを開発することができました。(西村様)
成果を評価され社長賞を受賞、ほかの製品にも展開を計画
今後の展望について、お聞かせください
アプライド製品におけるMREALの活用は同社内で高く評価されており、社長賞を受賞しました。その成果を受けて同社は、ルームエアコンやパッケージエアコンなど、ほかの製品でもMREALを活用すべく準備を進めています。海外の製造拠点に導入し、私たちと海外拠点のメンバーがMREALでデジタル・モックアップを共有しながら、製造上のポイントを共有するなど、様々な使い方が考えられます(山川様)
キヤノンITソリューションズ 担当者より
エンジニアリング第二技術本部 XR技術部
平山 大

MREALを活用して製造プロセスの業務を改善する。ボトムアップで始まったダイキン工業様の取り組みは大きな成果につながっており、私たちも非常にうれしく思っています。しかも、その成果を社内外に向けて広く発信していただいており、実際、ダイキン工業様のほかの部署にて利用を検討いただいています。その期待を裏切らないよう、これからも製品の信頼性や機能、提供するサービスの向上に取り組んでいきます。
お客さま プロフィール

- 会社名
- ダイキン工業株式会社
- 所在地
- 大阪市北区梅田 1-13-1 大阪梅田ツインタワーズ・サウス
- 事業内容
- 「空調」「化学」「フィルタ」を柱に事業を展開しており、人と空間を健康で快適にするために、国や地域ごとに異なる文化・価値観から生まれるニーズに応え、多彩な製品とサービスをグローバル市場で展開している。
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※
本記事は、取材時点のものです。
お客さまにご採用頂いたソリューション・製品
- XRソリューション(VR・AR・MR)
- 近年進歩の著しいXR(VR・AR・MR)技術。
「今までできなかったことができる」有望な技術として期待を集めています。
XRを単なる映像装置ではなく、業務に定着させて効果をあげ、業務革新を実現するためのソリューションとして提供します。 - MRソリューション
- 現実空間に、開発中の新型車や建設予定の建物が、実際に目の前にあるかのように現れます。
キヤノンが開発したMRシステム「MREAL」は、現実映像とCGを違和感なく融合し、自由な視点から体験できる映像技術です。
光学技術と映像技術を結集した「MREAL」により、幅広い分野にソリューションを提供しています。
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キヤノンITソリューションズ株式会社 (製造・流通ソリューション事業部門) 製造ソリューション事業部 製造ソリューション事業企画本部