安全なAWSの活用を実現する
クラウドセキュリティ研究開発の最前線R&D News+Reports 研究開発
公開日:2026年8月31日
キヤノンITソリューションズ株式会社
R&D本部 DI部
熊 イニ
安全で最適なクラウド活用を支える研究開発
私はR&D本部 DI(デベロップメントイノベーション)部に所属し、パブリッククラウドを活用したシステム設計手法の研究開発に取り組んでいます。入社以来20年以上にわたり、SI開発を支える立場でさまざまな技術と向き合ってきました。約10年前からは、企業システムにおけるパブリッククラウドの活用が急速に広がったことを受け、その価値を最大限に引き出すための研究に注力しています。現在はAmazon Web Services(以下、AWS)やMicrosoft Azureをはじめとするパブリッククラウドを対象に、開発現場のニーズに応じたサービスの調査や検証を行い、その結果をアーキテクチャーや設計ガイドとして整備しています。
現在、当部では「クラウドスマート」の考え方を重視しています。クラウド導入そのものを目的とせず、システムの特性や目的に応じて最適なクラウドを選び、品質とセキュリティを担保する。この考え方が、お客さまにとって本当に価値あるクラウド活用につながると考えています。
クラウドセキュリティで重要性が高まる利用者側の対策
近年、企業のデジタル化の進展に伴い、クラウドの利用はますます拡大しています。クラウドは、システム構築や運用の柔軟性に優れ、コストや導入期間の削減につながるなど多くのメリットがある一方で、インターネットを経由することから、設定を誤ると外部からの不正アクセスや情報漏えいのリスクが高まります。また、容易に設定変更できる利便性は大きな魅力ですが、その反面、わずかな設定ミスが重大なセキュリティ事故につながる可能性もあります。
クラウドセキュリティで特に重要なのは、クラウド事業者だけでなく、利用者側にもセキュリティ対策を担う役割があることです。アクセス権限、ネットワークの公開範囲、データ保護などは、設計段階から丁寧に確認する必要があります。そのため、利用者の思い込みや過去の経験だけに頼って設定すると、想定外のインシデントを招くおそれがあります。実際に、クラウドセキュリティ分野の国際団体であるCloud Security Alliance(CSA)が公開した「Top Threats to Cloud Computing 2024」では、クラウド利用者に起因するリスクが増加傾向にあることが指摘されています。特に、「設定ミスと不十分な変更管理」が最も大きな脅威として挙げられており、利用者側の適切な管理の重要性が高まっています。
さらに、クラウドサービスは変化が非常に速く、特にAWSはアップデートの頻度が高いことが特長です。新しい機能を採用すべきか、既存システムへの影響はないか、品質を担保できるかなどを判断するには、継続的な情報収集と検証が欠かせません。DXが進展し、AI活用が当たり前になりつつある今、クラウド上のデータ活用はさらに拡大しています。だからこそ、多層防御の考え方を基礎に、技術/設計/運用の各面から備えることが求められます。
実践的かつ体系化された「AWSセキュア設計ガイド」を整備
このような状況の中、現場の開発者は日々の業務に多くの時間を割かれ、新たな知識や技術を学びたいという意欲があっても、学習へ取り組む時間を確保することが難しいのが現状です。そこで、当部ではクラウドセキュリティ向上に向けて「AWSセキュア設計ガイド」の整備を進めています。
本ガイドは、AWSを活用したシステム開発において、安全な設計を行うための考え方や確認ポイントを、現場で活用しやすい形に整理することを目的としています。世の中には多くのクラウドセキュリティガイドラインがありますが、クラウドサービスの仕様や設定項目を十分に理解していることを前提としているものも少なくありません。
そこでキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)では、こうした課題に対応するため、業界のベストプラクティスに加え、社内のAWS認定エキスパートの知見や実プロジェクトで培ったノウハウを取り入れ、要件定義の段階から活用できる、実践的かつ体系化されたガイドを整備しています。本ガイドがあることで、開発現場では「なぜ今回のケースでこのAWSサービスの利用が最適なのか」「なぜこの設計や対策が必要なのか」を共有しやすくなり、セキュリティ品質のばらつきを抑えられます。
また、お客さまとの会話でも、本ガイドはクラウドを安全に活用するための観点を整理し、要件を明確にしながらプロジェクトを進めていくための土台になります。お客さまが安心してクラウドを導入/運用できるよう、継続的な改善サイクルを回しながら、本ガイドの充実に取り組んでいます。
AWSセキュア設計ガイドの詳しい取り組みは、キヤノンITSのコーポレートサイトで掲載しているテクニカルレポートのコラムでご紹介しています。クラウドセキュリティ対策を検討中の方、AWSを活用したシステム開発/運用に関わる方は、ぜひご覧ください。
クラウドセキュリティは、一度対策すれば終わりというものではありません。クラウドサービスの進化、現場のニーズ、脅威の変化に合わせて、学び続け、改善し続けることが重要です。当部では、主要なクラウドサービスのアップデートを確認し、これまでの開発案件やお客さまのセキュリティ案件と照らし合わせながら、現場で活用できる情報として整理しています。
今後も、現場から寄せられる「この要望を実現できないか」「より安全に使う方法はないか」といった声に応えながら、クラウドスマートを支える研究開発やガイドライン整備を進めます。そして、研究開発部門と事業部門が一体となり、お客さまの課題解決と価値創出に向けて、安全で高品質なクラウド活用を伴走支援します。
関連リンク
クラウド利用拡大に伴うセキュリティ課題に対応するため、キヤノンITSが策定した「AWSセキュア設計ガイド」の取り組みを紹介します。