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お客さまの課題解決につなげる生成AIの活用
実務に適用できる応用研究に取り組む
R&D News+Reports 研究開発

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公開日:2025年6月10日

キヤノンITソリューションズ株式会社
R&D本部 言語処理技術部
蔵満 琢麻

人と生成AIの融合による業務プロセス改革に挑む

写真:蔵満 琢麻

言語処理技術部では、生成AIをいかに実業務へ適用するか、キヤノンITソリューションズ(以下キヤノンITS)として、どの領域に取り入れていくかの研究開発を進めており、大きく3つのテーマを持ちながら取り組んでいます。
1つ目は、大規模言語モデル(Large Language Models、以下LLM)のチューニングなどを行いながら生成AIのノウハウを蓄積し、活用の効果をより高めていくための基礎研究。2つ目は、生成AIが導き出す結果の精度を高めるための基となるデータの整理に関する基礎研究。3つ目は、実際に業務に適用するためのアプリケーション開発や、実証実験(以下PoC)で検証を進めながらどのような効果が得られるのかなどをテーマにした応用研究を進めています。
私は主に3つ目の応用研究に注力しており、直接お客さまと会話しながら業務課題に対して生成AIをどう適用したら改善につながるか、そのための設計や実際にアプリケーションを開発することもあります。生成AIを実務に適用するにはどうすればよいか、お客さまの課題解決に向けて日々チャレンジしています。

お客さまから多くいただくご相談は、社内に蓄積されたデータを活用できていないため、生成AIを活用して業務に活かしたいという内容です。社内の文書検索をイメージされるとわかりやすいのではないでしょうか。探している文書が見つからない、類似する情報を探すのが困難、このような状況を改善します。
例えば製造業や建築業ですと、日々の作業にともなう報告書や、危険を伴うリスク報告などが蓄積されており、生成AIを活用しながら過去の作業内容を抽出することで、次に作業する際どのようなところに注意したらよいか、リスクが潜んでいる作業をあらかじめ確認しておく、などの対応が可能になります。情報の蓄積や新たな情報の追加は人の力によるところが重要となりますが、生成AIを活用し、欲しい情報を素早く抽出することや、レポート作成を行う仕組みなどを通じて、お客さまの業務効率化や品質向上につなげていくための仕組み作りを進めています。

生成AIの活用には業務プロセスの理解と情報の整理が重要

生成AIの活用における具体例として、コンタクトセンターでの取り組みをご紹介します。

写真:蔵満 琢麻

まず、お客さまからのお問い合わせに対して、蓄積されている過去のお問い合わせ内容やFAQを参照し、生成AIが回答案をつくるPoCを進めています。お問い合わせ内容に対する回答を見つけ出す、関連する文書を抽出するところにおいて成果が出ており、お客さまへ回答するまでの時間短縮に貢献しています。一方で生成AIに任せておけば正確な回答を導き出せる、というわけではありません。製品やサービスにかかわるお客さまからの問い合わせには、正確な情報でお答えしなくてはなりませんので、生成AIによる回答案のチェックは人が行う必要があります。
また、お客さまからのご意見(Voice of Customer、以下VOC)の分析でも生成AIを活用し、製品の改善や新製品の開発に役立てています。コンタクトセンターに集まる膨大な情報を、人手をかけて分析しレポート化するには相当な労力と時間を要しますが、生成AIの活用で大きく時間短縮することが可能です。お客さまとオペレーターとの会話音声をテキスト化したデータをもとに生成AIがその内容を要約し、さらにデータ分析、レポート化まで行います。生成AIがレポート化した内容を人が確認し修正することで、製品の改善や新製品の開発につなげていくことになります。
このように、一連の業務プロセスにおいて、生成AIを活用する場面と人が介入して業務を行う場面を見極め、生成AIが有効となる箇所に適切に組み込んでいくことが、効果を得る重要なポイントとなります。

この他にも自社に導入した、生成AIと情報検索技術を組み合わせた手法(検索拡張生成、以下RAG)を用いて社内文書検索の効率化に取り組んだ事例があり、キヤノンITSのコーポレートサイトにテクニカルレポートとして掲載しています。
生成AIはさまざまなビジネスの分野で活用できる可能性を秘めており、今後さらに普及が進むと考えられます。しかし、生成AIの導入はひと筋縄ではいかないことも多く、失敗を経験しながら学んでいくことも生成AIを導入するうえで非常に重要です。RAGの仕組みとメリットの解説や、導入における課題と試験運用の結果、そこから得た知見などについてまとめていますので、ぜひご覧ください。

社内文書検索用に導入したRAGのシステム構成
図:社内文書検索用に導入したRAGのシステム構成

キヤノンITSは多種多様な業種のお客さまのITパートナーとして、お客さまの業務を深く理解し、最適なソリューションを提供しています。生成AIの活用でもお客さまの業務プロセスを理解したうえで、生成AIをはじめとする先進技術をどこに適用していくか、どのように活用すればお客さまの課題を解決できるか、日々研究を進めています。
近年、労働人口の減少にともない、社員の高齢化や若手の育成に課題を抱える企業も多いと認識しています。社内でのナレッジ共有や技術/ノウハウの伝承ができていない、文章化されていないことが多いのではないでしょうか。このようなお悩みをお持ちでしたらぜひご相談いただくとともに、キヤノンITSの取り組みにご期待ください。

関連リンク

業務の効率化や生産性の向上、新しいアイデアの創出などに向けて導入が進む生成AI。お客さまの実務への適用や課題解決に向けて生成AIの研究開発を進めているキヤノンITSのR&D本部。言語処理技術部に所属する蔵満 琢麻が、生成AIの活用における取り組み事例や効果を高めるためのポイントについてご説明します。