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映像解析技術とAI技術による健康管理とヘルスケア顔映像からストレス状態を数値化R&D News+Reports 研究開発

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公開日:2025年4月30日

キヤノンITソリューションズ株式会社
R&D本部 先進技術開発部
中山 正明

企業の健康経営に注目し映像解析とAIによるストレス状態の推定にチャレンジ

先進技術開発部では、キヤノンらしいIT技術の開発を目指し、映像解析技術やAI技術の研究開発に取り組んでいます。例えば製造業では、工場の製造ラインを撮影し製品の異常検知や外観検知を行い検査の省力化に貢献しています。防災対策では、ネットワークカメラを活用し、火災の煙の検知や河川の水位を検知する仕組みを提供しています。農業では農作物の生育状況を計測しながら適切な収穫時期の判断に役立てています。このように映像解析技術とAI技術の活用により、多くの領域において社会や企業のお困りごとの解決に貢献しています。

写真:中山 正明

私はその中でも、企業の健康経営トレンドなどもあり社員の健康管理やストレスケアなどのヘルスケア領域に注目しています。実際に、輸配送業務に携わる運転手や工事現場で働く作業員の健康管理など、IT技術を利活用した社員の健康管理の需要が高まっていることを実感しています。企業において社員の健康管理は大きな経営テーマとなりますので、IT技術を駆使して働く人たちの健康管理やストレスケアに貢献したいと考えています。

具体的には、映像解析技術とAI技術を活用し、スマートフォンやPCなどのカメラで対象者の顔を撮影した映像から対象者のストレス状態を推定する技術について研究開発を進めています。

AIを活用して顔映像からストレス状態を数値化

顔映像からどのようにストレス状態を推定し数値化するのかを簡単にお話しします。スマートフォンやPCなどのカメラ映像を通じて、ストレス状態から影響を受けやすい生体情報に注目し、顔色の変化から、心臓の動きや血流、交感神経と副交感神経の変化など、人目では判断しにくいところを映像で判断しています。

写真:中山正明

ストレス状態の推定は二段階で行われており、顔映像解析AIを用いて生体情報を抽出するフェーズと、AIの機械学習モデルを用いて生体情報からストレススコアを算出するフェーズがあります。生体情報を抽出するフェーズでは、撮影された顔映像から心拍数や心拍変動、まばたき回数や表情などといった生体情報が抽出されます。この生体情報をもとにストレスの度合いを数値化したストレススコアを算出するフェーズに続くのですが、その際に使われるのがAIの機械学習モデルです。入力されたデータに対して評価や判断を行い、結果を出力する仕組みで、データから傾向や特徴を抽出するアルゴリズムを用いて学習したAIモデルとなります。

ストレス状態推定の流れ
図:ストレス状態推定の流れ(顔映像~生体情報~ストレススコア)

このようにふたつのフェーズを通じて、スマートフォンやPCなどのカメラで対象者の顔を撮影した映像から対象者のストレス状態を推定しています。一方で、人の内面であるストレスをIT技術で数値化する仕組みとなるため、実際に対象者がどのように感じているのかを判断することが難しく、産業医の方などとも共同研究を進めており、IT技術と医学・心理学とのコラボレーションにも力を入れています。

ここまで顔映像解析によるストレス状態推定技術の概要について説明しましたが、詳しい内容はキヤノンITソリューションズのコーポレートサイトにテクニカルレポートを掲載しています。どのようにAIを活用して顔映像からストレス状態を数値化しているか、生体情報のひとつである心拍変動からストレス状態がわかるのはなぜか、顔映像から心臓の動きを読み取り拍動の変化を推定していることなどを具体的に解説していますので、映像解析技術とAI技術によるヘルスケアにご興味をお持ちいただけましたら、ぜひご覧ください。

関連リンク

スマホやパソコンのロック解除といった、みなさんにとってもなじみが深い顔認証システムや監視カメラなど、映像を用いた情報解析の技術は主にセキュリティ方面での利用イメージが強い一方、キヤノンITSの先進技術開発部では健康領域での活用にも注目し、開発を行ってきました。そのなかのひとつに、顔映像をもとにして人のストレス状態を推定するというものがあります。
映像解析技術の中でもスマートフォンやPCなどのカメラで顔を撮影した映像からそのヒトのストレス状態を推定する技術について紹介します。