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社会や企業の未来に想いをはせ、先進技術を駆使してビジネスの価値を高めるR&D News+Reports 研究開発

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公開日:2025年4月3日

キヤノンITソリューションズ株式会社
執行役員 R&D本部 本部長
今井 太一

先進技術を駆使しながら、社会課題の解決に向けて挑戦する

私たちキヤノンITソリューションズ(以下キヤノンITS)のR&D本部は、50人規模の体制で日々研究開発を重ねています。長年蓄積してきた数理技術、ソフトウェア技術、言語処理技術、映像解析技術の研究成果を、キヤノンITSのソリューションやサービスへの適用と、お客さま向けの個別案件に応用しています。近年めざましい進展をみせている深層学習をはじめとするAI(人工知能)技術についても、早い段階から動画/静止画の解析、文字認識、需要予測、言語解析などさまざまな分野へ積極的に応用しています。

写真:執行役員 R&D本部 本部長 今井 太一

R&D本部では、独自にテーマ設定を行う「シーズ型研究」と、事業部門と連携して行う「ニーズ型研究」の2種類を設けています。
まず「シーズ型研究」は、技術の成熟度や社会への適用度を示すガートナー社のハイプサイクルなどを調査/分析しながら、定期的に研究開発計画を策定しています。世界におけるトレンドと日本における動向は若干異なりますが、近年のIT活用においては、AIおよび生成AI、クラウドコンピューティングやブロックチェーン、量子コンピューター、サイバーセキュリティなどの領域が安定したトレンドだと感じております。
ただし、IT業界の動きは速く、たとえば、大規模言語モデル(Large Language Models:以下LLM)の根幹技術であるTransformerについては、世に出てきた頃から注目していましたが、商用アプリケーションのChatGPTが2022年11月に公開されてから今日まで、これほど大きなトレンドになるとは予測できませんでした。技術トレンドを確実に見極め、当社の次の核となる技術の目利きの役割をしっかり果たしていきたいと思っています。

また、AIの研究開発においては、世の中の環境変化にも注目しています。今やAI戦略が国の成長を左右する、と表現しても過言ではない状況で、欧州ではAIの信頼性や倫理的な問題を危惧して厳しい制限が設けられる傾向にあります。一方、米国ではトランプ政権の誕生により、生産性や利便性を優先し一定の制限のみで利活用が可能な方向に進みそうな状況です。日本は欧州/米国どちらの方向を向いて進むのか、国の方針により私たちの研究開発の方向性にも影響する可能性がありますので、今後の動向に引き続き注目します。

一方で「ニーズ型研究」は、事業部門のお客さまが抱える企業課題、ひいては社会課題にも目を向けてテーマ設定を行っています。
例えば、日本の社会課題に目を向けますと、日本は1990年代から人口オーナス期(少子高齢化が進み、生産年齢人口の割合が低下する時期)に入り、労働者不足の問題に対応するため、企業の生産性向上に向けて待ったなしの状況だと認識しています。そのような中、IT技術を活用して人の作業を代替する仕組みはここ数年のAIの進歩により格段に向上しており、私たちもさまざまなユースケースに取り組んでいます。
たとえば、災害監視の現場では、ネットワークカメラとAIによる異常検知の組み合わせにより、人による監視業務の負荷軽減と異常検知のスピードアップに貢献しています。
また、物流問題やフードロスの削減などの社会課題に対しては、お客さまのサプライチェーンの効率化や需要予測/需給計画業務の高度化に長年取り組んでいます。

積み重ねてきた経験を活かし、ビジネスの価値を高める

写真:執行役員 R&D本部 本部長 今井 太一

R&D本部でもっとも古くから活動している数理技術の領域は、1960年代に、企業が保有する人や設備を効率よく運用する手法であるオペレーションズ・リサーチ(以下OR)の手法に着目し、基礎研究および鉄鋼生産現場への実践適用からスタートしました。
1980年代は企業でのコンピューター/ソフトウェア/ハードウェアの活用が進み始めた事で、各領域での基礎的な研究開発が進み、1990年代には、高度な言語処理技術による文書検索/分析やセキュリティ分野への適用など応用研究も積極的に展開しました。言語処理の技術は、現在の生成AI活用の研究開発に脈々と受け継がれています。2020年代からは、キヤノンの技術と連動しながら映像解析技術にも注力しています。画像/映像機器のデータを活用するキヤノンらしいソリューションの創出を技術面で支援するため、画像/映像処理のAI開発に取り組んでいます。
このように、私たちの研究開発は長年の歴史があり、蓄積された経験とノウハウがありますが、現在の活動の大半は技術の基礎研究ではなくビジネス価値を高めるための応用研究です。競争力の源泉となりえるトレンド技術を見極めながら、その技術を活用した新たなソリューションやサービスの創出支援や、お客さまのビジネスや開発案件に適用していく活動に注力しています。また、キヤノンITSの開発技術力や生産性の向上のための技術調査や開発フレームワークの構築にも精力的に取り組んでいます。
社会課題やお客さまの経営課題に、じかに接する事業部門との密な連携のもと、お客さまや事業部門のニーズに寄り添いながら、長年培ってきた技術力でビジネスに貢献すること、これがR&D本部の存在意義であり、強みであり、キヤノンITSが掲げる「共想共創カンパニー」を体現する取り組みの一つとなります。

写真:R&D部門のメンバー

今後についてお話ししますと、まずは、映像および画像とAIを連携させ、映像のキヤノンのグループ企業としての魅力をさらに高める取り組みを継続してまいります。
生成AIは、現在は大手企業が開発したLLMのサービスを活用していますが、近い将来、私たちもお客さまに向けた固有のLLMを作り上げることができる可能性が高いため、キヤノンITSらしい独自性を追求できるように取り組みを進めます。
また長年取り組んでいるORの活用では、製造業、流通業向けに、需要予測/需給計画ソリューションやサプライチェーン計画ソリューションの提供を通じて多くのお客さまの課題解決に貢献してまいりましたが、今後は新たな活用領域として、製品やサービスの価格を状況に応じて変更するレベニューマネジメント(収益管理)や、教育分野での人と人、人とモノ/サービスを最適に組み合わせるマッチング理論の応用など、さまざまな可能性を探りながら取り組んでまいります。
対外的な活動については、産学連携や他社さまとの共同研究、スタートアップ企業さまとのコラボレーションにも積極的に取り組み、ビジネスの提供価値を高めてまいります。

この「共想共創ステーション」を通じて、私たちR&D本部による研究開発の取り組みを随時ご紹介しますので、どうぞご期待ください。

研究開発・先進技術への取り組み

私たちのR&D部門は、1960年代に、キヤノンITソリューションズ株式会社の前身である住友金属工業(現日本製鉄)の頃より、研究開発に携わっています。会社の統合/合併を経ながら研究開発領域を広げ、世の中の社会課題への貢献と、多種多様な業界およびお客さま固有の課題解決に向けて、50人規模の体制で日々研究を重ねています。

キービジュアル

長年蓄積してきたソフトウェア技術、数理技術、言語処理技術、映像解析技術の研究成果をベースに、お客さまに新たな価値を提供する独自のソリューションの開発、サービスの実現に努めています。近年めざましい進展をみせている深層学習をはじめとするAI(人工知能)技術についても、早い段階から動画像解析、文字認識、需要予測、自然言語解析などさまざまな分野への積極的な応用を推進しています。またお客さま案件や製品開発などへのAI技術の活用を加速させるために、キヤノンITソリューションズ独自のAI開発プラットフォームの研究開発・整備にも注力しています。