良い共創は、判断の積み重ねから生まれる。
日鉄ケミカル&マテリアルとキヤノンITソリューションズが築いてきた関係性Butterfly Effect Archives 共想共創の歩み
公開日:2026年5月28日

異なる文化・事業を持つ企業が経営統合したとき、業務を支えるシステムはどうあるべきか――。日鉄ケミカル&マテリアルがキヤノンITSと挑んだシステム統合プロジェクトは、単なるツールの統一ではなく、異なるDNAを一つの「仕組み」へ落とし込む、極めて難度の高い対話の連続でした。
現場のこだわりを尊重しつつも、業務の属人化を防ぐために、事業ごとにシステムのカスタマイズを行うだけではなく、「標準化」も提案する。そこには、システムの未来を見すえて最善を尽くす、パートナーとしての誠実な対峙がありました。各社が個別に運用していたシステムやデータをどう整理・統合し、経営判断を加速させる基盤へと変えるのか。理想論だけではない、泥臭い調整と判断の裏側を明かす本対談には、プロジェクトを動かし、真に「より良い共創」を築くためのヒントが凝縮されています。
この記事の目次
暮らしを支える製品の“素材”を生み出す会社
はじめに、日鉄ケミカル&マテリアル様の事業概要を教えてください。
新美:日鉄ケミカル&マテリアル(以下、日鉄ケミマテ)は、2018年に新日鉄住金化学と新日鉄住金マテリアルズが経営統合して発足しました。2024年には連結子会社である日鉄カーボン、日鉄機能材製造、日鉄エポキシ製造を吸収合併し、事業運営のさらなる強化に邁進しています。
「素材を極め、未来を拓く」という基本理念のもと、石炭化学・石油化学事業をはじめ、半導体や電子部品用材料といった高付加価値材料の開発・製造を広く展開しています。日本製鉄グループの中核企業の一社として、“鉄以外のあらゆる素材”を扱っているのが特徴です。
最近では特に、デジタルデバイスの普及に加え、AI需要が急速に高まっていることもあり、半導体分野は現在私たちが最も力を入れている領域ですね。

経営統合や合併の背景には、経営効率化や互いの技術融合による「総合素材メーカーとしての対応力強化」といった狙いもあったのではと推察します。実際に関わってこられたお立場からは、どのように受け止めていらっしゃいましたか。
新美:私の個人的な感想ですが、強く感じていたのは「異なる文化が融合することでの相乗効果」という側面です。新日鉄住金化学は1907年に始まる日本製鉄の製鉄事業とともに歩んできた企業であり、歴史や伝統を重んじる、いわば“農耕型”の文化を育んできたのではないかと感じます。一方、新日鉄住金マテリアルズは、2006年に経営の多角化を掲げて独立し、新領域へ果敢に挑む、どちらかというと“狩猟型”の文化を持っていたと思います。そこに、成長市場に対して高い提案力を持つ子会社も加わることで、異なるDNAを持つ各社が一つになり、新たな文化を生み出していく。そうした変化を通じて、市場での存在感をさらに高めていくための、大きな転換点になったのではないでしょうか。

未来を拓くパートナーにキヤノンITSが選ばれている理由
基幹システムの企画・運用・管理などを担われているIT企画推進部では、どのような対応が必要になりましたか?
新美:統合によって複数の事業が集まりましたが、それぞれ製造プロセスも顧客も業界も大きく異なり、共通項を見出すのは非常に難しい状況でした。しかし会社としては、システムも統合し、全体を一元管理できる体制を築きたいという狙いがありました。統合のベースとなったのは、新日鉄住金化学で利用してきた「MCFrame(エムシーフレーム)」という、生産管理・販売物流・原価管理を担う基幹システムです。2013年の導入当時から、キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)さんにご支援いただいていたと聞いています。

大橋:弊社の組織の中には日鉄ケミマテ様の専属チームがあり、常時20名前後で対応させていただいております。システムの統合や運用、保守と一口に言っても、お客さまごとにご要望や環境、使われている技術は異なります。システムを安全に適切に稼働させるためには、サポートする我々のほうもしっかりと体制を整え、チーム内で日鉄ケミマテ様のご事情や技術を伝承しながら、腰を据えて向き合っていく必要があると考えています。

ものづくりに深く寄り添うパートナーとしての価値
新美様は他社のITベンダーと比較して、どのような部分にキヤノンITSの価値を感じていますか?
新美:日本製鉄グループ以外の会社で、専属チームを結成し、ここまでの時間と人員を割いていただけるパートナー企業はなかなかありません。また、キヤノンITSさん自体がもともとは鉄鋼メーカーにルーツがあるため、ものづくりへの理解度が非常に高い。特に、販売生産や原価管理といった業務については熟知されているITベンダーさんだと思います。
私自身、平素よりキヤノンITSさんとのコミュニケーションを通じて、弊社の業務の特性をよく理解されていることを感じますね。ときには弊社の社員以上に高い解像度で、「こうあるべきではないか」と有意義なご提案をいただけています。ものづくりに寄り添うパートナーとしては、他社を凌駕しているのではないでしょうか。
藤井:ありがとうございます。我々のほうこそ、新美様にはいつも助けていただいています。こちらからの依頼にも迅速にご対応いただけますし、コミュニケーションの機会も十分にいただけるのがありがたいです。それも営業だけでなく、開発含め積極的に対話してくださることで、開発の精度向上やプロジェクトのスピード感につながっています。
尾崎:対話という点でいうと、統合のプロジェクトでは貴社の本社や各工場で実際に現場の業務に携わられるご担当者の方々と、私たち開発メンバーが直接コミュニケーションする機会を与えていただきました。MCFrameの使い勝手や改善点を含め、リアルな声をお聞きすることで、より良いご提案ができたのではないかと思います。
新美:ものづくりにおける原体験のないベンダーさんの場合、そもそも現場とコミュニケーションを取ること自体、ハードルが高いと思います。製造現場の意見や要望の真意を汲み取り、それをシステムに変換するというのはある意味、特殊能力ですから。通常はそこを私たちIT部門の担当が“通訳”する必要があるのですが、人的リソースも限られているため、なかなか時間を割けないこともある。キヤノンITSさんのように製造現場や本社に足を運んでいただき、彼らの仕事を理解したうえでシステムに落とし込んでいただけるのは、我々としても大助かりなんです。


経営判断を加速させるシステム統合に込められた狙い
システム統合にあたっての課題や、留意したポイントを教えてください。
横田:各社の規模感や文化、データの管理方法は大きく異なっていました。そのため、各社それぞれに対してMCFrameの適用・運用方法をご説明し、ご理解・納得いただくことが重要であると感じたので、丁寧なコミュニケーションを意識的に行ってきました。
具体的に、どのようにアプローチしたのでしょうか?
横田:新美様からの受け売りですが、「システムを一元化することでデータの可視化や活用促進につながり、製造現場もよりスピーディーに次のアクションを起こしやすくなる」といった意義やメリットについて、我々からも社員の方々に繰り返しお伝えしました。ただ、そうはいっても製造形態や在庫の管理方法は異なるわけですから、統合の本体が利用するMCFrameが完全にマッチするとは限りません。そのため、現場キーマンや担当者の方からものづくり視点のご意見を頂戴し、落としどころを探りながら進めていきました。

事業を「三つの間取り」へと落とし込む、最適解の模索
開発チームは、どのような考え方で進められたのでしょうか?
尾崎:もともと、新日鉄住金化学のMCFrameは、主だった3事業の特性に応じた「三つの間取り」が完成していました。多様な事業がそこに加わるにあたり、まず重視したのは「どの間取りに住むのが無理なく馴染めて、将来にわたって使い続けられるか」という点です。
当然、現場からは「これまでのやり方でできないか」という要望もいただきます。それに対応すれば部分的には最適に感じられるかもしれません。しかし、すでに独自進化を遂げたモデルに対して改造を重ねてしまうと、従来間取りの構成や制約により、かえって業務が複雑・煩雑になり、将来的に“住みづらい・触れない間取り”になってしまいます。
言われたとおりにつくる方が簡単かもしれません。しかし私たちは、そのとき直面する都合だけでなく、中長期の運用や保守性を見すえた上で、業務の改善検討、既存モデル活用をご提案することもありました。コストや工期、そして使いやすい業務システムのバランスを共に考え、納得解を見出していくプロセスは、プロジェクト全員にとっても非常にタフな挑戦でした。
新美:会社統合に伴うMCFrameの「三つの間取り」への対応に目途がついたため、2023年からはMCFrameの稼働基盤をAWS※へ移行するプロジェクトを開始しました。そのプロジェクトでは、稼働基盤の移行に合わせて、MCFrameのシステム構造の見直しも同時に進めることとしたため、キヤノンITSさんにはよりご苦労をおかけしていたのではないかと思います。システム基盤の移行は他ITベンダーにお願いしていましたが、稼働基盤を移すとなると、その上で稼働するMCFrameも無関係ではいられません。開発・保守を行っているキヤノンITSさん側でも、いろいろな調整が必要になります。
キヤノンITSさんには、システム基盤移行に携わった複数のITベンダーさんとも主体的かつ密にコミュニケーションを取っていただき、我々が懸念するリスクについても事前に潰していただきました。結果、トラブルなく無事に移行が完了し、心から感謝しております。本当に大変なプロジェクトだったと思いますが、キヤノンITSさんの最後までやり切る胆力を、あらためて感じましたね。
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尾崎:確かに、単独プロジェクトと比べると難易度は高くなります。想定外の何かが起きたときに原因究明がしづらくなるなどのリスクを丁寧に洗い出し、細かく対応できるように備えていきました。ただ、我々のチームには2013年のMCFrame導入に携わった技術者も所属し、これまで長くご支援を継続してきた中で蓄積してきた知見が役立ちました。仮にトラブルが起きたとしても適切に対処できるのも、専属チームの強みです。

並走のなかで起きた変化と、新たに見えてきた課題
システム統合を進められてきて現在、どのような変化を感じていますか?
新美:経営判断に必要なデータが一つのシステムに集約されたことは大きなメリットです。例えば、原価計算でMCFrameから取り出したデータを分析ツールに入れて詳細な分析ができる環境が整備されました。経営管理の面では、システムから判断材料の出力が可能となり、意思決定の精度向上につながりました。一部の事業では人手に頼らざるを得なかった現状把握についても、MCFrameによってデータが可視化・共有化されるようになっています。
また、現場の業務環境も改善されました。例えば営業の受注状況などを各自がExcelで管理し、それを突き合わせて共有するような場面もありましたが、いまはシステム上でリアルタイムに情報を共有しながら仕事を進められる場面も増えています。業務が「見える化」されたことで、周囲の状況把握が容易になり、結果として組織全体で仕事がしやすくなってきているのではないかと思います。
実際に運用する中で感じる課題はありますか?
新美:そうですね。これまで既存のMCFrameをベースに「三つの間取り」に当てはめていくような統合を進めてきて、その効果を最大化すべく、さらなる機能改善も同時に進めてきました。しかし、やはりすべての事業の特性を完全にはカバーしきれない部分があるのも事実です。経営に求められる原価分析結果に時間を要する場面や、Excelで業務運用をカバーする場面も増えてきています。今後は各事業の特性によりマッチしたブラッシュアップが必要だと考えています。
また、将来を見すえると次世代の基幹システムについても検討すべきタイミングに来ています。MCFrameは長年の改修を経てシステムが複雑化・巨大化している側面もあり、IoTをはじめとする最新の技術進歩に柔軟に対応していくためには、現在のアーキテクチャでは限界が生じる懸念もあります。
もちろん、バージョンアップにはコストや工数、技術的な難易度も伴いますが、単なる統合の維持にとどまらず、より効率的で時代に即した形を模索していかなければなりません。特に、カーボンライトな製品づくりや新事業にチャレンジするとなったら、それを支えるシステムはどうあるべきか。各事業の収益性などとのバランスも見極めないといけないですよね。AI活用によってその工期やコスト削減効果が見込めるようになれば、より実現に近づけるのだろうと考えています。パートナーであるキヤノンITSさんと、そうした将来像を共創していくことを期待しています。
尾崎:将来の基幹システムについては、新美様と定期的に議論の場を持たせていただいています。カスタマイズを重ねてきたことで巨大化したシステムをどう整理していくか。原価の可視化における現在の課題も踏まえつつ、将来を見すえて段階的に手を打っていく必要があります。投資対効果の大きい部分や、業務の標準化が可能な領域を慎重に見極めながら、MCFrameの枠にとらわれない選択肢も含め、より良い次世代システムのあり方を追求していきたいですね。

お互いのDNAを掛け合わせ、二重螺旋のように共創する関係でありたい
新美様にあらためてお伺いします。こうしたシステム基盤の最適化は、日鉄ケミマテ様の事業においてどのような意義があるとお考えでしょうか。
新美:弊社は2026年度からの中期経営計画で4つの主要テーマを掲げています。その一つが「成長を支える基盤整備」であり、第一の柱が「DX施策の推進」です。
MCFrameの導入やシステム統合経て、業務のデジタル化はある程度の地点まで到達しました。今後の喫緊の課題は「データ活用」にあります。システムに蓄積された情報をいかに迅速に経営判断へ活かしていくか、その真価が問われているのです。
キヤノンITSさんには、システムのブラッシュアップに留まらず、データ活用の領域でも良き相談相手であってほしいと願っています。鉄鋼メーカーをルーツに持つキヤノンITSさんは、製造現場の勘所を熟知しており、「ものづくりとしてあるべき経営管理やシステムとは何か」という本質からアイデアを提供してくださる。これからも互いのDNAを掛け合わせ、二重螺旋のように強く結びつきながら、新たなシナジーを生み出していけたらと思っています。
弊社のIT部門は、大きなミッションを担う一方で、リソースを無制限に投入できるという環境にあるわけではないため、工夫を重ねながら会社への貢献に尽力しています。だからこそ、キヤノンITSさんの先進技術に対する「挑戦魂」に期待しています。私たちの期待を超える提案で、業務の高度化を牽引していただく。未来を切り拓いていけるパートナーとして、今後とも末永いお付き合いをよろしくお願いします。
新美様の並々ならぬ期待と信頼の言葉、キヤノンITSのお二人はどう受け止めていますか?
大橋:素材の力で社会貢献を果たす、そうしたものづくりを支えるシステムの重要性を、私たちは非常に重く受け止めています。次世代システムの構築にも「共想共創」という形で挑んでいきたい。これから先、何十年と寄り添い、対話をさせていただけるパートナーであり続けたいと思っています。
新美様をはじめ皆さまから忌憚のないご意見をいただきながら、御社の期待を超えるようなシステムをお届けすることで、さらなる貢献をしていきたいと考えています。
増田:先ほど新美様から「AI活用」や「チャレンジ」という力強いキーワードをいただきました。当社でもAIに対する取り組みはすでに始まっておりますが、基幹システムへの実用化という点では、まだ道半ばであるのが現状です。
しかし、社内での研究開発は着実に進めております。今後の将来構想の中では、AIの活用も含めた新たな価値を提供できるよう尽力してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
本日はありがとうございました。

お客さまプロフィール
- 会社名
- 日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
- 所在地
- 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 日鉄日本橋ビル
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